法人が他の会社の株式から受け取った配当は、一定割合が「益金不算入」となり、法人税がかかりません。
これは、配当の元になった利益にはすでに法人税が課されており、それを受け取った会社で再び全額課税すると二重・三重に課税されてしまうのを防ぐための仕組みです。本記事では、受取配当等の益金不算入の趣旨・区分・割合・実務の注意点を解説します。
なぜ配当は全額課税されないのか
配当は、その会社が法人税を払った後の利益から支払われます。これを受け取った株主の会社で全額益金として再課税すると、同じ利益に二重に法人税がかかります。さらにグループ会社で配当が連鎖すれば三重・四重になりかねません。
この二重課税を排除するため、受け取った配当の一定割合を**益金に算入しない(課税対象から除く)**のが、受取配当等の益金不算入です。
株式の区分による益金不算入の割合
益金不算入の割合は、株式の保有割合によって変わります。保有割合が高い(=グループ性が強い)ほど、二重課税排除の必要性が高く、不算入割合も大きくなります。
| 区分 | 保有割合の目安 | 益金不算入の割合 |
|---|---|---|
| 完全子法人株式等 | 100% | 全額(100%)不算入 |
| 関連法人株式等 | 3分の1超 | 全額不算入(ただし負債利子を控除) |
| その他の株式等 | 5%超〜3分の1以下 | 50%不算入 |
| 非支配目的株式等 | 5%以下 | 20%不算入 |
つまり、完全子会社からの配当は全額が課税されない一方、わずかに保有する上場株式の配当は20%だけが益金不算入(80%は課税)です。保有関係が濃いほど、二重課税排除が手厚くなります。
関連法人株式等の「負債利子控除」
関連法人株式等(3分の1超保有)の配当は全額益金不算入ですが、その株式を取得するための借入金の利子に対応する部分は控除されます。借入で株を買って配当を非課税で受け取り、かつ利子も損金にする——という二重の利得を防ぐためです。控除額は一定の計算式(または簡便法)で求めます。
数値例:区分による課税額の違い
配当を100万円受け取った場合、株式の区分で課税される金額がどう変わるかを見ます(法人実効税率を約30%と仮定)。
| 区分(保有割合) | 益金不算入額 | 課税対象 | 法人税等の概算 |
|---|---|---|---|
| 完全子法人株式等(100%) | 100万円 | 0円 | 0円 |
| 関連法人株式等(3分の1超) | 100万円(負債利子控除前) | 0円前後 | ほぼ0円 |
| その他の株式等(5%超〜3分の1) | 50万円 | 50万円 | 約15万円 |
| 非支配目的株式等(5%以下) | 20万円 | 80万円 | 約24万円 |
同じ100万円の配当でも、保有割合によって法人税の負担が0円〜24万円まで変わります。さらに、上場株式等の配当からは所得税が源泉徴収されており、これは別途、法人税額から控除(または還付)できます。「配当を受け取ったら、まず株式の区分を確認する」——これが取りこぼしを防ぐ第一歩です。
実務での扱い:別表八(一)で計算
受取配当等の益金不算入は、法人税申告書の**別表八(一)**で計算し、別表四で減算します。
- 配当を受け取ったら、株式の区分(保有割合)を確認
- 区分ごとの不算入割合を適用
- 関連法人株式等は負債利子控除を計算
- 別表八(一)で集計し、別表四で益金から減算
会計上は受取配当金を収益に計上しますが、税務上はその一定割合を所得から除く——という会計と税務のズレ(申告調整)の典型例です。
源泉徴収された所得税の扱い
上場株式等の配当を受け取る際、所得税が源泉徴収されています。法人の場合、この源泉所得税は法人税額から控除できます(所得税額控除、別表六(一))。
- 配当は益金不算入で法人税がかからない部分があるが、源泉された所得税は別途控除・還付の対象
- ただし、益金不算入とされる配当に対応する源泉税額は、保有期間に応じた調整が必要な場合がある
「配当の益金不算入」と「源泉所得税の控除」は別の手続きで、両方を申告で処理します。
税理士からのひとこと(監査目線):受取配当等の益金不算入は、持株会社・グループ経営をする会社で特に重要になります。事業会社の利益を持株会社に配当で吸い上げる際、完全子会社(100%)なら全額益金不算入で、二重課税なくグループ内に資金を移せます。これは「持株会社の活用」が事業承継・グループ再編で使われる理由のひとつです。一方、実務でのミスは、①株式の区分(保有割合)の判定誤り、②関連法人株式等の負債利子控除の失念、③源泉所得税の控除の取りこぼし——です。特に上場株式を少額保有しているだけの会社でも、配当があれば20%は益金不算入にでき、源泉された所得税も控除できます。「配当は雑収入として全額課税」と処理してしまうと、本来受けられる益金不算入と源泉税控除を取りこぼします。配当を受け取ったら、必ず申告で適切に処理してください。
持株会社スキームでの活用
受取配当等の益金不算入が経営に大きく効くのが、**持株会社(ホールディングス)**を使ったグループ経営・事業承継です。
- 事業会社の上に持株会社を置き、事業会社を100%子会社にする
- 事業会社の利益を配当で持株会社に集約しても、完全子法人株式等として全額益金不算入——二重課税なくグループ内に資金を移せる
- 持株会社に集めた資金で、新規事業への投資・M&A・グループ全体の財務管理ができる
- 事業承継では、オーナーが持株会社の株を持つことで、複数の事業会社の株を一括して承継・管理できる
「100%子会社からの配当は全額非課税」という仕組みがあるからこそ、持株会社スキームが成立します。グループ化・事業承継を検討する規模になったら、この益金不算入が設計の土台になることを知っておいてください(「事業承継の基礎」も参照)。
よくある質問(FAQ)
Q. 上場株式を少しだけ持っています。配当は全額課税ですか? A. いいえ。5%以下の保有(非支配目的株式等)でも20%は益金不算入です。さらに源泉徴収された所得税は法人税から控除できます。全額課税して源泉税も無視すると取りこぼしになります。
Q. 100%子会社からの配当はどうなりますか? A. 完全子法人株式等として全額益金不算入です(負債利子控除もなし)。グループ内で二重課税なく資金を移動できます。
Q. 益金不算入とされても、会計上は収益に計上しますか? A. はい。会計上は受取配当金として収益計上し、税務上は別表で一定割合を減算します。会計と税務のズレ(申告調整)として処理します。
Q. 外国法人からの配当も益金不算入ですか? A. 一定の外国子会社(保有割合・期間の要件を満たすもの)からの配当には、外国子会社配当益金不算入という別の制度があります(一定割合が不算入)。国内株式とは別の取り扱いです。
Q. 自分の会社が配当を出す側の場合の損金は? A. 配当は利益の分配であり、支払う側の会社では損金になりません(税引後利益からの分配)。受け取る側で益金不算入になるのは、この「支払側で損金にならない(課税済み利益から出ている)」ことの裏返しです。
まとめ
- 受取配当等の益金不算入は、配当への二重課税を防ぐ仕組み。受け取った配当の一定割合に法人税がかからない
- 不算入割合は保有割合で変わる:完全子会社100%・関連法人(3分の1超)全額(負債利子控除)・その他50%・非支配目的(5%以下)20%
- 計算は**別表八(一)**で行い別表四で減算。会計と税務のズレ(申告調整)の典型
- 源泉徴収された所得税は別途、法人税から控除できる(取りこぼし注意)
- 持株会社・グループ経営では、完全子会社からの全額不算入が資金移動の要になる
配当・グループ税務は Iroae税理士事務所へ
Iroae税理士事務所では、受取配当の益金不算入の正確な計算(株式区分・負債利子控除)、源泉所得税の控除、持株会社を使ったグループ再編・事業承継の設計までご支援しています。「子会社からの配当」「保有株式の配当」の処理に不安があれば、申告の前にご相談ください。
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※本記事は2026年時点の制度をもとに、税理士の監修のもと作成しています。区分・割合・要件は税制改正により変わる場合があります。処理にあたっては、必ず国税庁の最新情報をご確認いただくか、税理士にご相談ください。