設立から数年、利益が出始めた会社に必ず訪れるのが「中間申告(中間納付)」です。期の途中なのに税務署から納付書が届き、「まだ決算もしていないのに税金?」と驚く経営者は少なくありません。
結論から整理すると、①前期の法人税額が20万円を超えると、当期の途中で前期実績の約半分を前払いする義務が生じます。②金額は自動的に決まり(予定申告)、申告書を出さなくても納付義務は発生します。③業績が前期より大きく悪化しているなら、仮決算による中間申告で納付額を実績ベースに減らせます。本記事ではこの3点を軸に、スケジュール・資金繰り・実務の判断基準を解説します。
中間申告の対象になる会社
前事業年度の法人税額(年税額)が20万円を超える法人は、当期に中間申告・納付の義務があります。
- 目安として、軽減税率15%で逆算すると前期の所得が約134万円(20万円÷15%)を超えれば20万円ラインに達します。つまり、利益が少しでも安定して出始めた会社は、ほぼ全社が対象になる水準です(税額控除等により会社ごとに変動します)
- 設立1期目は前期がないため中間申告はありません(合併による設立等を除く)
- 前期が20万円以下なら当期の中間申告は不要です
「去年より儲かっていないのに」という感覚とは無関係に、前期の実績だけで機械的に決まるのがこの制度の特徴です。
いつ・いくら払うのか
期限
事業年度開始の日以後6か月を経過した日から2か月以内に申告・納付します。3月決算なら、中間期間は4〜9月、申告・納付期限は11月30日です。
金額(予定申告の場合)
中間納付額 = 前期の法人税額 × 6 ÷ 前期の月数(通常は前期の約半分)
地方法人税・法人住民税・法人事業税も同様に中間納付があり、税務署・都道府県・市町村からそれぞれ納付書が届きます。「法人税だけ払えば終わり」ではない点にご注意ください。
申告書を出し忘れたら?
法人税の予定申告は、期限までに申告書を提出しなくても提出があったものとみなされます(みなし申告)。つまり「申告漏れ」にはなりませんが、納付をしなければ延滞税がかかります。実務上は、送られてきた納付書(または電子納付)で期限内に納付することがすべてです。
業績悪化時の選択肢:仮決算による中間申告
前期は好調だったが当期は明らかに悪い——この場合、中間期間(最初の6か月)を一つの事業年度とみなして仮決算を行い、その実績に基づく税額で申告できます。
| 項目 | 予定申告 | 仮決算による中間申告 |
|---|---|---|
| 納付額 | 前期実績の約1/2(自動) | 中間6か月の実績ベース |
| 手間 | ほぼゼロ | 決算・申告書一式の作成が必要 |
| 使いどころ | 業績が前期並み以上 | 業績が大幅悪化し、資金繰りを守りたいとき |
仮決算の注意点
- 仮決算の税額が予定申告額を上回る場合は、仮決算による申告はできません(高いほうを選ばされることはありません)
- 中間で赤字でも、還付は受けられません(納付額がゼロになるだけです)
- 申告書一式(決算・別表)を作る工数がかかるため、「予定納付額と仮決算納付額の差」が作成コストを上回るかで判断します。差が数十万円以上見込めるなら検討に値します
- 提出期限は予定申告と同じです。期限を過ぎると仮決算は選べず、みなし申告(前期基準)が確定します。業績悪化の兆候があるなら、中間期末(第6月)の翌月には判断を始めてください
中間納付は「前払い」:確定申告で精算される
中間納付した税額は、確定申告で年間の税額から差し引かれます。年間の確定税額より中間納付が多ければ、差額は還付されます(還付加算金という利息相当が付くこともあります)。
つまり中間申告は損得の問題ではなく、資金繰りのタイミングの問題です。とはいえ、このタイミング問題が中小企業には重くのしかかります。
税理士からのひとこと(監査目線):資金繰り表に「納税の山」をあらかじめ描いておくこと——これが中間申告対策のすべてです。3月決算の会社なら、5月末(前期確定分)と11月末(中間分)の年2回、法人税等のまとまった支出が来ます。さらに消費税の中間納付(前期の消費税額によって年1回・3回・11回)が重なる会社では、納税月が年4回以上になることもあります。私たちは決算時に「向こう1年の納税カレンダー」を作り、毎月の納税積立額(月商の◯%)を決めて別口座に積む運用をおすすめしています。中間納付で慌てる会社と慌てない会社の違いは、利益率ではなく、このカレンダーの有無です。
モデルケース:3月決算・前期法人税200万円の会社の1年
前期(2025年4月〜2026年3月)の法人税が200万円だった会社の、当期の納税スケジュールです。
| 時期 | 納付の内容 | 概算額 |
|---|---|---|
| 2026年5月末 | 前期確定分の法人税等の納付 | 前期税額の残り(中間控除後) |
| 2026年11月末 | 当期の中間納付(法人税) | 約100万円(200万円×1/2) |
| 同上 | 中間納付(地方法人税・住民税・事業税) | 法人税に連動した各税額 |
| 2027年5月末 | 当期確定分の納付(中間納付額を控除) | 確定税額−中間納付額 |
当期の業績が前期並みなら、中間で約半分を前払いしているため、翌5月の確定納付は残り半分で済みます。「11月と5月に山が来る」——このリズムを資金繰り表に固定で書き込んでおくことが、いちばん簡単で効果的な対策です。
納付の方法:納付書がなくても払える
中間納付は次のいずれの方法でも行えます。
- ダイレクト納付(e-Tax): 事前届出した口座から指定日に引き落とし。日付指定ができ、実務で最も使いやすい方法です
- 振替納税: 法人税では利用不可(個人の制度)のため、混同に注意
- インターネットバンキング(ペイジー)・クレジットカード納付・スマホアプリ納付: それぞれ手数料・上限の条件があります
- 窓口納付: 送付された納付書で金融機関・税務署窓口から
電子申告をしている会社なら、ダイレクト納付の届出を一度しておくと、中間・確定・消費税のすべての納付が「納付書を待たずに」完結します。納付書の未着・紛失が期限遅れの原因になるのを構造的に防げます。
経理処理:中間納付は「仮払い」で受けて精算
中間納付額は、支払時に「仮払法人税等」(または法人税等の前払い)として処理し、決算で年間の法人税等と精算します。決算書上は、確定税額から中間納付額を引いた残りが「未払法人税等」として負債に立ちます。中間納付を費用として落としっぱなしにすると、決算時の税金計算と二重・不整合になるため、**「中間は仮払い、決算で精算」**のルールを経理担当者と共有しておいてください。
消費税の中間申告も忘れずに(基準が別)
法人税と混同されやすいのが消費税の中間申告です。基準も回数も異なります。
| 前期の消費税額(国税分の年税額) | 中間申告の回数 |
|---|---|
| 48万円以下 | 不要(任意の中間申告制度あり) |
| 48万円超〜400万円以下 | 年1回(前期の1/2) |
| 400万円超〜4,800万円以下 | 年3回(前期の1/4ずつ) |
| 4,800万円超 | 年11回(毎月) |
売上が伸びて消費税額が400万円を超えると、納税が年3回に増えて資金繰りのリズムが変わります。法人税とは別建てで管理してください。消費税にも仮決算方式があります。
よくある質問(FAQ)
Q. 中間納付の納付書をなくしました。どうすればよいですか? A. 税務署に再発行を依頼するか、e-Taxのダイレクト納付・インターネットバンキング等の電子納付を利用してください。納付書がなくても期限は変わりません。
Q. 資金がなくて中間納付ができません。 A. まず仮決算方式で納付額を実績まで下げられないか検討します。それでも難しい場合は、放置せず税務署へ納税の猶予等の相談をしてください。放置すると延滞税(および督促)が積み上がります。
Q. 中間納付した後、確定申告で赤字になったら? A. 中間納付額は確定申告で精算され、確定税額を超えた部分は還付されます。さらに青色申告法人なら、当期の欠損金を前期の所得に繰り戻して前期分の法人税の還付を受ける欠損金の繰戻し還付も選択肢になります。
Q. 中間申告にも申告期限の延長は使えますか? A. 確定申告の申告期限延長の特例は、中間申告には適用されません。中間は「6か月経過後2か月以内」が動かない期限とお考えください。
Q. 設立2期目ですが、1期目が黒字でした。中間申告はありますか? A. 1期目の法人税額が20万円を超えていれば、2期目に中間申告義務が生じます。なお1期目が12か月未満の場合は月数換算で計算されます。
Q. 前期に多額の一時的な利益(不動産売却など)がありました。当期の中間納付も大きくなりますか? A. なります。中間納付は前期実績で機械的に計算されるため、一時的な利益の翌期は「実力以上の前払い」が発生します。仮決算方式で実績ベースに下げるか、確定申告での還付を前提に資金繰りを組むか、早めに方針を決めてください。
Q. 中間申告を仮決算でやった場合、確定申告は変わりますか? A. 変わりません。確定申告は通常どおり年間の実績で行い、仮決算で納めた中間税額を控除して精算します。仮決算はあくまで「前払い額の計算方法」の選択です。
まとめ
- 前期の法人税額が20万円超なら、当期の中間(6か月経過後2か月以内)に前期の約半分を前払い
- 予定申告は出さなくてもみなし申告になる。実務の核心は期限内の納付(法人税・地方税セットで)
- 業績悪化時は仮決算による中間申告で実績ベースに減額できる。ただし還付はなく、期限後は選べない
- 中間納付は確定申告で精算される前払い。問題は損得ではなく資金繰りのタイミング
- 消費税の中間申告は別基準(48万円超で年1回〜)。納税カレンダーと毎月の納税積立で山をならす
納税資金の計画づくりは Iroae税理士事務所へ
Iroae税理士事務所では、決算時に向こう1年の納税カレンダー(法人税・消費税・源泉・社保まで)を作成し、毎月の納税積立額の設定、業績悪化時の仮決算方式の損益分岐判定、猶予制度の相談まで、納税と資金繰りを一体でご支援しています。「中間納付のたびに資金繰りが苦しい」という会社こそ、仕組みで解決できます。
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※本記事は2026年時点の一般的な情報をもとに、税理士の監修のもと作成しています。中間申告の基準額・期限・仮決算の取り扱いは変更される場合があります。実際の申告にあたっては、必ず国税庁の最新情報をご確認いただくか、税理士にご相談ください。