「利益が1,000万円出たら、税金はいくら払うのか」——結論から申し上げると、中小法人ならおおよそ利益の27〜34%です。所得1,000万円の会社であれば、法人税・住民税・事業税を合わせて約270万円が目安になります(後ほど詳細にシミュレーションします)。
「法人税」と一口に言っても、実際に会社が払う税金は法人税だけではありません。本記事では、監査法人出身の税理士が、会社の利益にかかる税金の全体像と計算手順を、具体的なシミュレーション付きでゼロから解説します。
会社の利益にかかる税金は1つではない
決算で利益が出たとき、会社が納める「利益に対する税金」は、実は次の5つ(2026年4月以後開始事業年度からは6つ)のセットです。
| 税金の種類 | 納付先 | ざっくりした性格 |
|---|---|---|
| 法人税 | 国 | 本体。所得に対してかかる |
| 地方法人税 | 国 | 法人税額に上乗せされる国税 |
| 法人住民税 | 都道府県・市町村 | 法人税額に連動する「法人税割」+赤字でもかかる「均等割」 |
| 法人事業税 | 都道府県 | 所得に対してかかる。払った期の翌期に損金になる |
| 特別法人事業税 | 国(都道府県経由) | 事業税に上乗せされる |
| 防衛特別法人税 | 国 | 2026年4月1日以後開始事業年度から新設。法人税額ベース |
「法人税の計算」とは、実務上はこのセット全体の計算を指します。順番に見ていきましょう。
計算の出発点:「利益」ではなく「所得」
最初に押さえるべき大原則は、法人税は**会計上の利益ではなく、税務上の「所得」**にかかるということです。
所得 = 益金 − 損金
会計上の利益(収益−費用)をスタートに、税務上のルールとのズレを加算・減算して所得を求めます。この調整を申告調整といい、法人税申告書の別表四で行います。
代表的な調整項目は次のとおりです。
- 加算される(所得が増える)もの: 交際費の損金不算入額、役員給与の損金不算入額(事前確定届出給与の届出漏れ等)、減価償却の償却超過額、法人税・住民税そのもの
- 減算される(所得が減る)もの: 受取配当等の益金不算入額、前期に納めた事業税(納付した期に損金算入)
中小企業で会計と税務のズレが少ない会社なら「利益≒所得」になることも多いですが、交際費や役員給与の取り扱いを誤ると、利益は同じでも税額が大きく変わります。
また、過去に赤字(欠損金)がある場合、青色申告なら欠損金を翌期以降10年間繰り越して所得から控除できます。中小法人は繰越欠損金を所得の100%まで使えるため、「黒字になったのに過去の赤字で税金がゼロ」ということも普通にあります。
法人税の税率(2026年版)
所得が確定したら、税率を掛けます。
| 区分 | 所得のうち | 税率 |
|---|---|---|
| 中小法人(資本金1億円以下※) | 年800万円以下の部分 | 15% |
| 中小法人(同上) | 年800万円超の部分 | 23.2% |
| 普通法人(資本金1億円超) | 全額 | 23.2% |
※資本金1億円以下でも、資本金5億円以上の大法人の100%子会社などは中小法人の特例が使えません。
年800万円以下の部分の15%は租税特別措置による軽減税率で、適用期限が延長されてきた経緯があります(本則は19%)。また、税制改正により**所得が年10億円を超えるような大規模な中小法人には17%**とする見直しも行われています。適用期限・要件は変わり得るため、最新の取り扱いは国税庁サイトでご確認ください。
法人税以外の税金の計算
地方法人税(国税)
法人税額 × 10.3%。法人税に自動的に連動するため、節税の打ち手は法人税側と共通です。
法人住民税(都道府県+市町村)
2つの要素で構成されます。
- 法人税割: 法人税額 × 7.0%(標準税率。自治体により超過税率あり。東京23区は都民税に一本化)
- 均等割: 赤字でも必ずかかる固定額。資本金等1,000万円以下・従業者50人以下なら年7万円が標準
「赤字なのに毎年7万円払っている」のは、この均等割です。
法人事業税+特別法人事業税(都道府県)
資本金1億円以下の普通法人は所得に対して課税されます(標準税率の例)。
| 所得のうち | 事業税率 |
|---|---|
| 年400万円以下の部分 | 3.5% |
| 年400万円超800万円以下の部分 | 5.3% |
| 年800万円超の部分 | 7.0% |
さらに、事業税(標準税率分)の**37%**が特別法人事業税として上乗せされます。
事業税には重要な特徴があります。納付した事業年度の損金になる(=翌期の所得を減らす)点です。当期のシミュレーションでは満額かかりますが、翌期の税金を計算するときには当期分の事業税が経費として効いてきます。
防衛特別法人税(2026年4月以後開始事業年度から)
防衛力強化の財源として新設された付加税で、**基準となる法人税額から年500万円を控除した残額の4%**が課されます。基礎控除が500万円あるため、法人税額が500万円以下(所得でいうとおおよそ2,400万円程度まで)の中小企業には実質的にかかりません。制度開始直後のため、対象になりそうな規模の会社は国税庁の最新情報をご確認ください。
【シミュレーション】所得1,000万円の中小法人の場合
前提: 資本金1,000万円・東京23区・従業者50人以下・標準税率・2026年4月以後開始の事業年度・税務調整なし(利益=所得)
| 税目 | 計算 | 税額 |
|---|---|---|
| 法人税 | 800万円×15% + 200万円×23.2% | 1,664,000円 |
| 地方法人税 | 1,664,000円×10.3% | 171,300円 |
| 住民税(法人税割) | 1,664,000円×7.0% | 116,400円 |
| 住民税(均等割) | 固定 | 70,000円 |
| 事業税 | 400万円×3.5%+400万円×5.3%+200万円×7.0% | 492,000円 |
| 特別法人事業税 | 492,000円×37% | 182,000円 |
| 防衛特別法人税 | 法人税額が500万円以下のため | 0円 |
| 合計 | 約2,695,000円 |
**所得1,000万円に対して合計約270万円、負担率にして約27%**です。なお実際の申告では課税標準の千円未満切捨て・税額の百円未満切捨てなどの端数処理があるため、上記は概算とお考えください。
同じ前提で所得を変えると、負担額の目安は次のように動きます。
| 所得 | 税負担の目安 | 負担率の目安 |
|---|---|---|
| 300万円 | 約74万円 | 約25% |
| 500万円 | 約121万円 | 約24% |
| 1,000万円 | 約270万円 | 約27% |
| 2,000万円 | 約638万円 | 約32% |
| 3,000万円 | 約1,011万円 | 約34% |
所得800万円を超えた部分から法人税率・事業税率がともに上がるため、所得が大きいほど負担率は約34%に向かって上昇していきます。これがよく言われる「中小法人の実効税率 約33〜34%」の正体です。
税理士からのひとこと(監査目線):シミュレーションで意外と見落とされるのが「納税資金の準備」です。法人税等は決算日から2か月後に一括納付ですし、利益が一定額を超えると翌期から**中間申告(前期の約半分を前払い)**が始まります。「利益1,000万円なら270万円+翌期の中間分」とキャッシュで考えておかないと、黒字なのに資金繰りが苦しくなります。私たちは決算の2〜3か月前に着地予測と納税額の見込みをお伝えし、納税資金を先に確保していただくようにしています。
どの税金が損金になるか(翌期以降の計算に効く話)
シミュレーションを翌期につなげるうえで重要なのが、「払った税金のうち、どれが損金(経費)になるか」です。
- 損金になる: 法人事業税・特別法人事業税(申告書を提出した事業年度の損金)、固定資産税、自動車税、印紙税など
- 損金にならない: 法人税・地方法人税・法人住民税、延滞税・過少申告加算税などのペナルティ類
同じ「税金」でも扱いが分かれるため、会計上は法人税・住民税・事業税をまとめて「法人税等」で処理しつつ、申告書の別表四・別表五(二)で正しく調整する必要があります。ここを誤ると翌期以降の所得計算がずれ続けるため、税務調査でも確認されやすいポイントです。
よくある誤解
誤解1:「利益の半分くらい税金で取られる」 → 中小法人の実効負担はおおよそ27〜34%です。「半分」は個人の所得税の最高税率帯のイメージが混ざった誤解で、むしろ利益が大きいなら個人より法人のほうが税率が低いことが、法人化のメリットの一つです。
誤解2:「赤字なら税金は一切かからない」 → 住民税の均等割(標準で年7万円)は赤字でもかかります。また消費税の納税義務は赤字かどうかと無関係です。
誤解3:「法人税を計算すれば終わり」 → 地方法人税・住民税・事業税・特別法人事業税がセットでかかります。シミュレーションは必ず「合計」で見てください。
よくある質問(FAQ)
Q. 法人税の申告と納付の期限はいつですか? A. 原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内です(申告期限は延長の特例あり。ただし納付は2か月以内のため、延長する場合は見込納付で対応します)。
Q. 中間申告とは何ですか? A. 前期の法人税額が20万円を超えると、当期の途中(事業年度開始から6か月経過後2か月以内)に前期実績の約半分を前払いする制度です。仮決算による中間申告を選ぶこともできます。
Q. 繰越欠損金はいつまで使えますか? A. 青色申告法人であれば、欠損金は翌期以降10年間繰り越せます。中小法人は所得の100%まで控除可能です。
Q. 実効税率とは何ですか? A. 法人税・住民税・事業税等を合計し、事業税が翌期に損金算入される効果まで織り込んだ「実質的な税率」です。中小法人(標準税率)では所得800万円超の部分でおおよそ33〜34%とされます。
Q. 自社の正確な税額を知るにはどうすればよいですか? A. 交際費・役員給与・減価償却などの税務調整、自治体ごとの超過税率、端数処理が影響するため、正確な金額は申告書の作成が必要です。決算前の着地予測は税理士にご相談ください。
まとめ
- 法人税の計算は「利益→(申告調整)→所得→税率」の流れ。実際は法人税・地方法人税・住民税・事業税・特別法人事業税(+2026年4月以後開始事業年度は防衛特別法人税)のセットで計算する
- 中小法人は所得年800万円以下が法人税率15%、超える部分は23.2%
- 所得1,000万円の中小法人で合計約270万円(負担率約27%)、所得が大きくなると約34%に向かって上昇
- 赤字でも均等割(標準年7万円)はかかる。事業税は翌期の損金になる
- 利益が出たら税額だけでなく、納付期限(2か月後一括)と中間申告まで含めた資金繰りを設計する
決算前の税額シミュレーションは Iroae税理士事務所へ
Iroae税理士事務所では、決算の2〜3か月前に当期の着地予測と納税額シミュレーションを行い、納税資金の確保と決算前にできる対策のご提案までセットでサポートしています。「今期いくら払うことになるのか早く知りたい」「中間申告も含めた資金繰りを整えたい」——監査法人出身の税理士が、数字に基づいてご支援します。
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※本記事は2026年時点の一般的な情報をもとに、税理士の監修のもと作成しています。税率・適用期限(中小法人の軽減税率、防衛特別法人税を含む)は税制改正により変わる場合があります。実際の申告にあたっては、必ず国税庁・各自治体の最新情報をご確認いただくか、税理士にご相談ください。