法人税の実効税率と中小企業の軽減税率【2026年版】「結局何%取られるのか」を税理士が解説

「法人税って結局、何%なんですか?」——この素朴な質問への答えは、中小企業なら所得800万円以下の部分で約21〜23%、800万円を超える部分で約34%(標準税率ベースの実効税率の目安)です。

COLUMN法人税・決算実務

「法人税って結局、何%なんですか?」——この素朴な質問への答えは、中小企業なら所得800万円以下の部分で約21〜23%、800万円を超える部分で約34%(標準税率ベースの実効税率の目安)です。

「法人税率23.2%」「軽減税率15%」という個別の数字と、この「約34%」のあいだにあるギャップを埋めるのが、実効税率という考え方です。本記事では、表面税率と実効税率の違い、中小企業の軽減税率の正確な適用条件、そして「800万円の壁」をどう経営に活かすかを解説します。

表面税率と実効税率:何が違うのか

会社の利益には、法人税だけでなく地方法人税・法人住民税・法人事業税・特別法人事業税が連動してかかります(全体像は「法人税の計算方法」で解説しています)。これらを単純に足した「表面税率」と、実際の負担率である「実効税率」は一致しません。

ズレの原因は、法人事業税(と特別法人事業税)が、納付した期の損金になることです。事業税を払うと翌期の所得が減り、その分の税金が安くなる——この「税金が税金を減らす」循環を織り込んで計算した実質負担率が実効税率です。

実効税率 =(法人税率 ×(1+地方法人税率+住民税率)+事業税率等)÷(1+事業税率等)

式は覚える必要はありません。「表面税率より実効税率のほうが少し低くなる」「意思決定には実効税率を使う」の2点だけ押さえてください。

中小企業の実効税率の目安(標準税率ベース)

資本金1億円以下の中小法人(外形標準課税の対象外・標準税率)の実効税率は、所得の階層ごとにおおむね次のとおりです。

所得の階層 実効税率の目安
年400万円以下の部分 約21〜22%
年400万円超〜800万円以下の部分 約23%
年800万円超の部分 約33〜34%

階層ごとの「その部分にかかる率」である点に注意してください。所得1,200万円の会社全体の平均負担率は約27%程度になります(自治体の超過税率によって若干上下します)。

なお、2026年4月以後に開始する事業年度からは防衛特別法人税(法人税額から年500万円を控除した残額の4%)が加わりますが、基礎控除があるため所得約2,400万円までの中小企業には実質的な影響はありません。それを超える規模の会社は、実効税率が1ポイント弱上がるイメージで見込んでください。

中小企業の軽減税率:15%の正確な適用条件

「中小企業は法人税15%」と言われるのは、年800万円以下の所得部分に適用される軽減税率のことです。正確な条件を整理します。

適用される会社

  • 資本金1億円以下の普通法人
  • ただし、資本金5億円以上の大法人の100%子会社(グループ会社含む)は対象外
  • 通算法人など、その他の除外パターンもあります

税率の構造

区分 税率
年800万円以下の部分(本則) 19%
年800万円以下の部分(租税特別措置による時限の軽減 15%
年800万円超の部分 23.2%

重要なのは、15%が恒久ルールではなく、期限延長を繰り返している時限措置だということです(現在は延長済みの期限内。また、税制改正により**所得が年10億円を超える事業年度については17%**とする見直しも入っています)。「15%は当然」ではなく、適用期限・要件を毎年の税制改正で確認すべき数字です。

適用の手続き

軽減税率(租税特別措置分)の適用には、申告書への適用額明細書の添付が必要です。自社申告で添付を漏らすと、本来15%で済む部分に高い税率が適用されるおそれがあります。

「800万円の壁」をどう経営に使うか

実効税率が約23%から約34%へ跳ね上がる所得800万円のラインは、中小企業の意思決定の基準線になります。

使い方1:投資・損金の「効き目」を階層で測る

同じ100万円の損金でも、所得900万円の会社では約34万円、所得500万円の会社では約23万円の節税です。決算対策の効果試算は、自社の所得がどの階層にあるかから始めてください。800万円を少し超える程度の年は、決算賞与や共済前納などで800万円以下に収める設計の効率が特に良くなります。

使い方2:役員報酬とのバランス設計

法人に利益を残すか、役員報酬で個人に移すか——の判断にも、この階層が効きます。法人側の限界税率が約23%の階層なら法人に残す選択肢が相対的に有利になり、約34%の階層に入ると個人の税率・社会保険料との比較が拮抗してきます。年1回の役員報酬改定は、この法人・個人の限界税率の比較で行うのが王道です。

使い方3:「壁の手前で利益を止める」ことを目的化しない

一方で、800万円はあくまで税率の階段であり、超えた部分に高い率がかかるだけです(全体に34%かかるわけではありません)。壁を恐れて成長投資や利益計上を抑えるのは本末転倒です。

税理士からのひとこと(監査目線):実効税率で経営判断が変わる典型例が「繰越欠損金の使い切り時期」と「設備投資の実行年度」です。たとえば翌期に大型受注で所得が800万円超の階層に入る見込みなら、損金性の支出(修繕・広告・採用)は当期より翌期に置くほうが、同じ支出で1.5倍近い節税効果になります。逆もまた然りです。私たちが決算の着地予測を3か月前に出すのは、この「どの期に損金を置くか」という期またぎの最適化こそ、合法的で効果の大きい税務戦略だからです。税率表は暗記するものではなく、支出のタイミングを決める道具です。

計算例:所得1,200万円の会社の平均負担率

階層構造の理解のため、所得1,200万円の中小法人(標準税率・概算)で平均負担率を確認します。

  • 〜400万円の部分: 400万円 × 約22% ≒ 約88万円
  • 400万〜800万円の部分: 400万円 × 約23% ≒ 約92万円
  • 800万円超の部分: 400万円 × 約34% ≒ 約136万円
  • 合計: 約316万円 → 平均負担率 約26%

ここから分かることが2つあります。第一に、「800万円を超えたから全体が34%になる」わけではないこと(超えた部分だけです)。第二に、所得が増えるほど平均負担率は約34%に向かってじわじわ上がるため、所得2,000万円を超えるあたりからは「法人に残す」だけでなく退職金・設備投資など長期の出口も組み合わせる価値が増すことです。

所得 平均負担率の目安
600万円 約22%
1,200万円 約26%
2,000万円 約28%
5,000万円 約31%

大企業・外形標準課税との違い(参考)

資本金1億円超の法人は、軽減税率がないうえ、事業税に外形標準課税(付加価値割・資本割:赤字でも課税)が加わります。一方で所得割の税率は低く、実効税率はおおむね29〜30%程度です。「中小の800万円超(約34%)より大企業(約30%)のほうが税率が低い」という逆転は、外形標準課税という「赤字でも払う税」とのセットで成立している点に注意してください。なお、減資により資本金1億円以下とする外形外しには課税強化の改正が続いており、資本金の設計は税率だけでは決められない論点になっています。

よくある質問(FAQ)

Q. 実効税率は何%で覚えておけばよいですか? A. 中小企業の意思決定用なら「800万円以下の部分は約23%、超える部分は約34%、ざっくり全体で3割」で実用上十分です。正確な税額計算は申告ソフト・税理士の仕事で、経営者は階層感覚を持つことが大切です。

Q. 軽減税率の「800万円」は売上ですか、利益ですか? A. 税務上の所得(おおむね利益)です。売上規模は関係ありません。売上10億円でも所得が700万円なら、全額が軽減税率の階層です。

Q. 法人成りの判断にはどの税率を使えばよいですか? A. 法人側は本記事の実効税率、個人側は所得税の限界税率+住民税+社会保険料を使い、世帯の手取り総額で比較します(詳しくは「法人化のメリット・デメリットとタイミング」をご覧ください)。

Q. 赤字の年は税率ゼロですか? A. 法人税・事業税はかかりませんが、住民税の**均等割(標準で年7万円)**は赤字でも発生します。また赤字(欠損金)は翌期以降10年間繰り越して将来の所得と相殺できます(「繰越欠損金の繰越控除」で詳説します)。

Q. グループで複数の会社を持てば、800万円の枠も複数使えますか? A. 形式上は法人ごとに軽減税率の枠がありますが、事業実態のない分社による枠の多重利用は、行為計算否認や事業実態の認定の論点があり、推奨できません。グループ通算・100%子会社の扱いなど制度面の制約もあるため、分社は事業上の必然性で判断してください。

Q. 個人事業の税率と比べるとどちらが低いですか? A. 個人の所得税+住民税は累進で最高約55%まで上がるのに対し、法人は約34%で頭打ちです。課税所得900万円前後から法人有利の領域に入っていくのが大まかな構図です(社会保険料まで含めた比較が必須です)。

Q. 実効税率は今後どう動きそうですか? A. 防衛特別法人税の導入(2026年4月以後開始事業年度)など、負担はやや増加方向の改正が続いています。軽減税率の期限・税率も改正のたびに見直されるため、毎年の税制改正大綱の確認(または顧問税理士からの報告)を前提にしてください。

まとめ

  • 「結局何%か」の答えは実効税率で。中小企業は800万円以下の部分が約23%、超える部分が約34%(標準税率の目安)
  • 実効税率が表面税率より低いのは、事業税が翌期の損金になるため。意思決定には実効税率を使う
  • 軽減税率15%は時限措置。資本金1億円以下でも大法人の100%子会社は対象外、適用額明細書の添付が必要
  • 800万円の壁は損金を置く期を決める道具。壁を恐れて成長を止めるのは本末転倒
  • 2026年4月以後開始事業年度から防衛特別法人税。中小への影響は所得約2,400万円超から
  • 所得1,200万円の平均負担率は約26%。階層の平均と限界を分けて考えると意思決定を誤らない

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Iroae税理士事務所では、御社の所得階層に基づく限界税率の把握、支出・投資をどの期に置くかの期またぎ設計、役員報酬とのバランス最適化まで、実効税率を「経営の道具」として使うご支援をしています。「うちの会社の今年の限界税率は何%か」——即答できる状態を一緒に作りましょう。

※本記事は2026年時点の一般的な情報をもとに、税理士の監修のもと作成しています。実効税率は自治体の超過税率・税制改正(軽減税率の期限、防衛特別法人税を含む)により変動します。実際の判断にあたっては、必ず国税庁・各自治体の最新情報をご確認いただくか、税理士にご相談ください。

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