法人税申告書の書き方【2026年版】主要な別表の読み方を税理士がやさしく解説

法人税申告書を初めて開いた方の感想は、ほぼ例外なく「別表が多すぎて、どれが何なのか分からない」です。

COLUMN法人税・決算実務

法人税申告書を初めて開いた方の感想は、ほぼ例外なく「別表が多すぎて、どれが何なのか分からない」です。

結論から言うと、法人税申告書の本体は別表一で、そこに至る計算の心臓部が別表四と**別表五(一)**です。この3枚の関係さえつかめば、残りの別表は「明細書(計算の根拠資料)」として位置づけが見えてきます。

本記事では、監査法人出身の税理士が、中小企業の申告書で実際に使う別表に絞って、それぞれの役割と読み方を解説します。自社で書くかどうかにかかわらず、経営者が自社の申告書を「読める」ようになることを目標にします。

法人税申告書の全体像:3層構造で理解する

法人税申告書は、次の3層で考えると整理できます。

書類 役割
①本体 別表一 税額の最終計算・申告の「顔」
②心臓部 別表四・別表五(一) 利益→所得への変換と、税務上の純資産の管理
③明細書 その他の別表(七・十五・十六など) 個別項目の計算根拠

さらに、申告書には決算報告書(貸借対照表・損益計算書等)勘定科目内訳明細書法人事業概況説明書、租税特別措置を使う場合の適用額明細書を添付し、別途地方税(住民税・事業税)の申告書も提出します。

別表一:申告書の「顔」(税額計算のまとめ)

別表一は「各事業年度の所得に係る申告書」という正式名称のとおり、最終的な税額を計算して申告する本体です。

読み方のポイントはシンプルで、上から順に

  1. 所得金額(別表四から転記)
  2. 法人税額(所得×税率。中小法人は年800万円以下15%・超過分23.2%)
  3. 控除税額(預金利息から天引きされた源泉所得税など)
  4. 差引確定法人税額(中間納付があれば差し引く) と流れていきます。あわせて地方法人税(法人税額×10.3%)も別表一で計算します。

経営者がまず見るべきは、「所得金額」と「差引確定法人税額」の2つです。決算書の利益と所得金額がなぜズレているのか——その答えが次の別表四にあります。

別表四:利益を「所得」に変換する(税務の損益計算書)

別表四は、会計上の当期純利益からスタートして、税務上の所得金額を計算する表です。「税務の損益計算書」と呼ばれます。

当期純利益 + 加算項目 − 減算項目 = 所得金額

中小企業の申告書でよく登場する調整項目は次のとおりです。

  • 加算: 損金経理した法人税・住民税(納税充当金を含む)、交際費等の損金不算入額(別表十五から)、減価償却の償却超過額(別表十六から)、役員給与の損金不算入額
  • 減算: 納付した事業税(前期分)、受取配当等の益金不算入額、繰越欠損金の当期控除額(別表七から)

つまり別表四は、他の明細書(別表)で計算した結果が集まってくるハブです。「なぜ利益より所得が大きいのか」は、別表四の加算欄を上から読めば必ず説明がつきます。

別表四にはもう一つ重要な区分があります。各調整が「留保」か「社外流出」かの区別です。留保は会社の中に残る差異(いずれ解消する)、社外流出は配当や交際費のように外に出てしまい戻らないもの。この「留保」が、次の別表五(一)につながります。

別表五(一):税務上の純資産を管理する(税務の貸借対照表)

別表五(一)は「利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書」、いわば税務の貸借対照表です。会計の純資産と税務の純資産のズレ(別表四で「留保」とされた項目の累積)を、期首→当期増減→期末の形で管理します。

別表四の留保欄と別表五(一)は連動しています。たとえば減価償却の償却超過額100万円を別表四で加算(留保)すれば、別表五(一)に「償却超過額100万円」が積み上がり、将来その資産を除却・売却した期に減算(認容)されて消えます。

税理士からのひとこと(監査目線):申告書のセルフチェックで私たちが必ず行うのが、別表四と別表五(一)の検算です。「期首利益積立金額+別表四の留保所得−法人税等=期末利益積立金額」の関係が崩れていれば、どこかで転記ミスか調整漏れがあります。市販ソフトで自社申告した会社の申告書を引き継ぐと、この連動が切れたまま数年放置されているケースが実際にあります。一度切れたズレは年々雪だるま式に積み上がり、修正には過年度までさかのぼる調査が必要になります。

その他の主要別表:役割だけ押さえる

別表 名称(通称) 何をする表か
別表二 同族会社等の判定 株主構成から同族会社かどうかを判定する
別表五(二) 租税公課の納付状況 法人税・住民税・事業税の納付と納税充当金の動きを管理
別表六(一) 所得税額の控除 預金利息等から天引きされた源泉所得税を法人税から控除
別表七(一) 欠損金 赤字(欠損金)の繰越と当期の控除を管理(10年間)
別表八(一) 受取配当等 受取配当の益金不算入を計算
別表十(七) 特定の基金 経営セーフティ共済の掛金を損金にするための明細(添付必須)
別表十五 交際費 交際費の損金不算入額を計算(中小法人は年800万円まで損金算入可)
別表十六 減価償却 定額法・定率法ごとの償却限度額と超過額を計算

すべての会社が全部を使うわけではありません。中小企業の標準セットは、別表一・二・四・五(一)・五(二)に、該当する明細書(七・十五・十六など)を足したものです。

添付書類も忘れずに

  • 決算報告書: 貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書・個別注記表
  • 勘定科目内訳明細書: 預貯金・売掛金・買掛金・借入金・役員給与などの内訳
  • 法人事業概況説明書: 事業内容・従業員数・経理状況などの概況
  • 適用額明細書: 租税特別措置(中小法人の15%軽減税率や少額減価償却資産の特例など)を使う場合に添付必須。漏れると特例が適用できないおそれがあります

地方税側では、都道府県への法人都道府県民税・事業税の申告書(第六号様式)、市町村への**法人市町村民税の申告書(第二十号様式)**を別途提出します(東京23区は都税に一本化)。

実際に書くときの順番(作成手順)

別表は番号順に書くわけではありません。実務では次の順序で作成します。

  1. 決算を固める: 貸借対照表・損益計算書を確定させる(ただし法人税等の計上額は後で決まるため、いったん仮置き)
  2. 明細系の別表から作る: 減価償却(別表十六)、交際費(別表十五)、繰越欠損金(別表七)、受取配当(別表八)など、個別項目の調整額を先に確定させる
  3. 別表四を組む: 当期純利益に2で計算した加算・減算を集約し、所得金額の仮計算を行う
  4. 税額を計算する(別表一): 所得金額に税率を掛け、法人税・地方法人税、さらに地方税(住民税・事業税)を計算する
  5. 納税充当金を確定して決算に戻す: 4で計算した税額を「法人税、住民税及び事業税」として決算書に計上し、別表四・五(二)に反映する
  6. 最終確認: 別表四と別表五(一)の検算、適用額明細書の添付確認、地方税申告書との突合

ポイントは5です。税額が決まらないと決算書が確定せず、決算書が確定しないと税額が決まらない——この循環を納税充当金の計上で一周させて閉じるのが、法人税申告書作成の独特な構造です。申告ソフトはこの循環計算を自動化してくれますが、構造を知らずに数字だけ入れると、エラーの原因がどこにあるか判断できなくなります。

提出期限と提出方法

  • 期限: 事業年度終了の日の翌日から2か月以内(申告期限の延長特例を受ければ申告は1か月延長可。ただし納付は2か月以内のため、延長時は見込納付で利息負担を回避します)
  • 方法: e-Tax(国税)・eLTAX(地方税)での電子申告が標準です。資本金1億円超の法人は電子申告が義務ですが、中小企業も実務上は電子申告が前提と考えてよい状況です

自社申告か、税理士依頼か

法人税申告書は、会計ソフトの延長では完結しません。別表四・五(一)の連動、納税充当金の処理、特例の適用判断と適用額明細書——1か所の誤りが翌期以降に連鎖する構造のため、ミスのコストが高い書類です。

役員給与や交際費の調整がほぼない小規模法人で、申告ソフトを使い、毎年同じパターンという条件なら自社申告も不可能ではありません。一方、利益が出てきて特例や節税策を使い始めた会社、消費税の課税事業者になった会社は、税理士に依頼する実益が大きくなります。判断の分かれ目は「調整項目の数」です。

よくある質問(FAQ)

Q. 赤字でも申告書は提出が必要ですか? A. 必要です。赤字(欠損金)を翌期以降10年間繰り越すには、青色申告で期限内に申告を続けることが条件です。申告しないと繰越のメリットも失います。

Q. 別表はすべて提出するのですか? A. 該当するものだけです。中小企業の標準は別表一・二・四・五(一)・五(二)+該当する明細書です。

Q. 「納税充当金」とは何ですか? A. 決算で計上する未払法人税等の税務上の呼び名です。会計で費用にしても税務では損金にならないため、別表四で加算し、別表五(二)で納付状況を管理します。

Q. 申告書の控えはどれを保管すればよいですか? A. 電子申告の受信通知(メール詳細)と申告書一式のデータです。融資審査では「別表一+決算報告書+勘定科目内訳明細書」の提出を求められるのが定番のため、すぐ出せるようにしておくと資金調達がスムーズです。

Q. 中間申告のときも同じ申告書を作るのですか? A. 前期実績による中間申告(予定申告)なら、税務署から送られる簡易な様式に前期の半分の税額を記載するだけで、別表一式を作る必要はありません。仮決算による中間申告を選んだ場合のみ、6か月分の決算に基づく申告書一式を作成します。

Q. 過去の申告に誤りを見つけたらどうすればよいですか? A. 税額を少なく申告していた場合は修正申告、多く払っていた場合は更正の請求(原則5年以内)を行います。放置すると加算税・延滞税が膨らむため、気づいた時点で対応してください。

まとめ

  • 法人税申告書の本体は別表一、心臓部は別表四(利益→所得の変換)と別表五(一)(税務の純資産管理)
  • 別表四の「留保」と別表五(一)は連動しており、この連動が切れた申告書は誤っている
  • 中小企業の標準セットは別表一・二・四・五(一)・五(二)+該当明細書。租税特別措置を使うなら適用額明細書の添付を忘れない
  • 期限は決算から2か月。赤字でも申告は必須(欠損金繰越の条件)
  • 調整項目が増えてきたら、自社申告のミスのコストは税理士報酬を上回る
  • 申告書は融資審査・税務調査の双方で「会社の信用」を映す書類。経営者自身が別表一・四・五(一)を読めることが、数字に強い経営の第一歩

法人税申告のご相談は Iroae税理士事務所へ

Iroae税理士事務所では、法人税申告書の作成はもちろん、過年度の申告書のセルフチェック(別表四・五(一)の連動確認)、自社申告からの引き継ぎ、特例適用の見直しまでサポートしています。「自社の申告書が正しいのか不安」「申告書を読めるようになりたい」——監査法人出身の税理士が、申告書の中身からご説明します。

※本記事は2026年時点の一般的な情報をもとに、税理士の監修のもと作成しています。様式・添付書類・税率は税制改正により変わる場合があります。実際の申告にあたっては、必ず国税庁の最新情報をご確認いただくか、税理士にご相談ください。

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