法人の決算の流れ【2026年版】決算日から申告・納税までの全工程を税理士が時系列で解説

法人の決算は、「1年間の成績をまとめ、税額を計算し、申告・納税する」一連の作業です。決算日(事業年度の末日)から申告・納税期限(原則2か月後)までの間に、経理の締め・在庫の確認・税額計算・株主総会・申告書作成が、決まった順序で進みます。

COLUMN法人税・決算実務

法人の決算は、「1年間の成績をまとめ、税額を計算し、申告・納税する」一連の作業です。決算日(事業年度の末日)から申告・納税期限(原則2か月後)までの間に、経理の締め・在庫の確認・税額計算・株主総会・申告書作成が、決まった順序で進みます。

本記事では、3月決算の会社を例に、決算日の前後で何をするのかを時系列で解説します。決算前の節税対策は「決算前にやる節税対策チェックリスト」、申告書の中身は「法人税申告書の書き方」で詳説しています。

全体像:決算は「3か月の段取り」

決算は決算日に始まるものではありません。実務では決算日の2〜3か月前から準備が始まり、決算日の後の2か月で申告・納税まで完了させます。全体は次の3段階です。

段階 時期(3月決算の例) 主な作業
① 決算前の準備 1〜3月 着地予測・納税予測・節税対策・社長判断事項の決定
② 決算作業 4〜5月 帳簿の締め・実地棚卸・決算整理・決算書作成
③ 申告・納税 5月 株主総会・税額計算・申告書提出・納税

段階①:決算前の準備(決算日の2〜3か月前)

決算の質は、この段階でほぼ決まります。

  • 利益の着地予測: 残り数か月の見込みを立て、当期の利益・納税額を概算する
  • 納税資金の確認: 予測した税額を払えるか、資金繰りを確認する
  • 節税対策の実行: 決算賞与・経営セーフティ共済の前納・少額資産の取得など、決算日までに実行が必要な対策をこの段階で打つ(決算後ではもう間に合いません)
  • 社長判断事項の決定: 在庫の処分・不良債権の貸倒・役員賞与・設備投資など、社長しか決められないことを決める

「決算対策は決算3か月前」と言われるのは、この段階を逃すと打てる手が漏れ回収だけになるためです。

段階②:決算作業(決算日〜1か月)

1. 帳簿の最終確定

期末までの全取引が記帳されているか確認し、現金・預金の残高を帳簿と一致させます(実残高との照合)。売掛金・買掛金の計上漏れ、経過勘定(前払・未払・前受・未収)の整理を行います。

2. 実地棚卸

期末時点の在庫を実際に数えて評価します。帳簿在庫ではなく現物の確認が原則で、棚卸表を作成・保存します。在庫の金額は売上原価=利益に直結し、税務調査でも確認される重要工程です。

3. 決算整理仕訳

1年分の最終調整を行います。

  • 減価償却費の計上
  • 引当金(貸倒引当金・賞与引当金など)の計上
  • 経過勘定の振替(前払費用・未払費用など)
  • 棚卸資産の評価
  • 仮払金・仮受金の精算

4. 決算書の作成

決算整理を反映して、貸借対照表(BS)・損益計算書(PL)・株主資本等変動計算書・個別注記表を作成します。これが会社の1年間の成績表です。

段階③:申告・納税(決算日〜2か月)

5. 税額の計算

決算で確定した利益をもとに、法人税・地方法人税・住民税・事業税・消費税を計算します。ここで「税額が決まらないと決算書(未払法人税等)が確定せず、決算書が決まらないと税額が計算できない」という循環があり、納税額を計上して決算を確定させます(「法人税申告書の書き方」参照)。

6. 株主総会の開催

決算書を株主総会で承認します(決算の確定)。役員報酬の改定・配当の決議もこのタイミングです。1人会社でも議事録の作成が必要です。

7. 申告書の作成・提出

法人税申告書(別表)・消費税申告書・地方税申告書を作成し、e-Tax(国税)・eLTAX(地方税)で電子申告します。決算書・勘定科目内訳明細書・法人事業概況説明書を添付します。

8. 納税

申告と同じく決算日の翌日から2か月以内に納税します。法人税・消費税・地方税をそれぞれ納付します(口座振替のダイレクト納付が便利です)。

決算スケジュール早見表(3月決算)

時期 やること
1〜2月 着地予測・納税予測・節税対策の検討
3月(決算月) 在庫処分・除却の実行、決算賞与の通知、社長判断事項の決定
4月 帳簿の締め・実地棚卸・残高確認・資料の整理
5月上旬 決算整理・決算書作成・税額計算
5月中旬 株主総会・決算確定
5月31日まで 申告書の提出・納税

申告期限の延長特例を取っている会社は、申告のみ6月末まで延びます(ただし納税は5月末まで=見込納付。「法人税の申告期限と期限延長の特例」参照)。

税理士からのひとこと(監査目線):決算がスムーズな会社とそうでない会社の差は、能力ではなく「前倒しの段取り」です。慌てる会社は決算月を過ぎてから資料を集め始め、社長判断(在庫・賞与・投資)が5月にずれ込み、繁忙期と申告作業が重なって品質が荒れます。一方、決算3か月前に着地予測を出し、社長判断事項を期末前に決め、資料の締切を期末後3週間に固定している会社は、5月末の申告まで余裕を持って進みます。決算は「年に1回の大仕事」ではなく、「毎月の月次決算の積み重ねの総まとめ」にできれば、最も楽になります。月次がきちんと締まっていれば、本決算は確認と調整だけで済みます。

決算で慌てないための「月次決算」

決算をスムーズにする最大のコツは、毎月の月次決算です。1年分をまとめて決算月にやろうとするから慌てるのであって、毎月締めていれば本決算は確認と調整だけで済みます。

月次決算でやることは次のとおりです。

  • 毎月の取引をその月のうちに記帳する(自動連携を使えば負担は小さい)
  • 月末の預金残高と帳簿を一致させる
  • 売掛金・買掛金・在庫を月次で把握する
  • 試算表で月次の売上・利益・資金繰りを確認する

月次決算ができていれば、本決算では「期末特有の処理(実地棚卸・減価償却・引当金)」だけを追加すればよく、決算作業が数週間で完了します。逆に月次が遅れている会社は、決算月に1年分を遡って処理することになり、申告期限に追われます。決算の速さと正確さは、日頃の月次決算で決まる——これが実務の鉄則です(「決算書の読み方」「記帳代行と自計化の選択」も参照)。

自社決算か税理士依頼か

  • 小規模で取引がシンプルな会社: 会計ソフトを使えば自社決算も可能。ただし税額計算(別表)・申告書作成はミスのコストが高い
  • 利益が出てきた・特例を使う会社: 税理士に依頼する実益が大きい。決算3か月前の着地予測と対策提案までセットで受けられる

判断の分かれ目は「調整項目の数」と「節税・資金繰りの設計に専門家の価値を見出せるか」です(「会社設立を自分でやる方法と税理士に頼む場合の比較」参照)。

よくある質問(FAQ)

Q. 決算作業はどれくらいの期間がかかりますか? A. 月次決算がきちんと締まっている会社なら、決算日後2〜4週間で決算書が固まります。月次が遅れている会社は、1年分の遡及作業で1〜2か月かかることもあります。日頃の月次が決算の速さを決めます。

Q. 赤字でも決算・申告は必要ですか? A. 必要です。赤字でも申告義務はあり、欠損金を翌期以降10年繰り越すには期限内の青色申告が条件です。住民税の均等割(年7万円)も納めます。

Q. 実地棚卸を省略できますか? A. 在庫のある業種では省略できません。帳簿在庫だけで決算すると、棚卸の精度=原価・利益の精度が崩れ、調査でも指摘されます。在庫の少ない業種でも、期末の現物確認は必要です。

Q. 株主総会は本当に開く必要がありますか? A. 決算の承認は株主総会の決議事項です。1人会社でも、書面決議を含め決算を確定する手続きと議事録が必要です。役員報酬の損金性の前提にもなります。

Q. 決算で利益が出すぎました。今から対策できますか? A. 決算月を過ぎていると、打てるのは漏れ回収(未払費用・貸倒・除却)が中心で、効果は限定的です。だからこそ決算3か月前の着地予測が重要です。来期はそのタイミングで対策を。

まとめ

  • 決算は「決算前の準備(3か月前)→ 決算作業(締め・棚卸・整理)→ 申告・納税(2か月以内)」の3段階
  • 決算の質は決算前の準備で決まる。節税対策・社長判断事項は決算日までに実行する
  • 決算作業の柱は帳簿の確定・実地棚卸・決算整理・決算書作成
  • 申告・納税は決算日の翌日から2か月以内。株主総会での決算確定が前提
  • 月次決算がきちんと締まっていれば本決算は楽になる。決算は「月次の総まとめ」

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Iroae税理士事務所では、決算3か月前の着地予測と対策提案、月次決算の早期化、決算作業から申告・納税までの代行、決算スケジュールの設計までご支援しています。「毎年決算で慌てる」会社は、月次の仕組みと前倒しの段取りで、驚くほど楽になります。

※本記事は2026年時点の一般的な情報をもとに、税理士の監修のもと作成しています。手続き・期限は制度改正により変わる場合があります。実務にあたっては、必ず国税庁・各自治体の最新情報をご確認いただくか、税理士にご相談ください。

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