決算後に届く納付書を見て、「法人税のほかに、都道府県と市町村からも請求が来るのはなぜ?」と戸惑った経験はないでしょうか。
会社の利益には、国税(法人税・地方法人税)に加えて、法人住民税(都道府県・市町村)と法人事業税+特別法人事業税(都道府県)がかかります。本記事では、この「地方の税金」2系統の計算方法を、中小企業(資本金1億円以下)に絞って解説します。赤字でもかかる均等割と、翌期の損金になる事業税——この2つの特徴をつかむのがゴールです。
全体像:地方の税金は2系統
| 税目 | 課税ベース | 納付先 | 赤字の年 |
|---|---|---|---|
| 法人住民税(法人税割) | 法人税額に連動 | 都道府県+市町村 | かからない |
| 法人住民税(均等割) | 資本金等と従業者数(固定額) | 都道府県+市町村 | かかる |
| 法人事業税(所得割) | 所得に連動 | 都道府県 | かからない |
| 特別法人事業税 | 事業税(標準税率分)に連動 | 国(都道府県経由) | かからない |
東京23区内のみに事務所がある法人は、市町村分も含めて都民税として一括で都税事務所に申告・納付します(特別区の特例)。
法人住民税の計算
1. 法人税割:法人税額の約7%
法人税割 = 法人税額 × 税率(標準 7.0%=都道府県1.0%+市町村6.0%)
法人税額に連動するため、法人税の節税はそのまま法人税割の節税になります。自治体によっては超過税率(標準より高い税率)を採用しており、たとえば東京都では資本金や法人税額の規模によって超過税率が適用されます(中小規模の法人には標準税率が適用される不均一課税の仕組みがあります)。
2. 均等割:赤字でも必ずかかる固定額
均等割は、資本金等の額と従業者数で決まる固定額です。代表的な区分(年額・標準税率)は次のとおりです。
| 資本金等の額 | 従業者数50人以下 | 従業者数50人超 |
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 7万円(県2万+市5万) | 12万円(県2万+市10万) |
| 1,000万円超〜1億円以下 | 18万円(県5万+市13万) | 20万円(県5万+市15万) |
ここで実務上きわめて重要なのが、資本金1,000万円の壁です。資本金等が1,000万円を「超える」と均等割は7万円→18万円に跳ねます。資本金をちょうど1,000万円にしておけば7万円のままですが、1,000万円超(たとえば1,001万円)にすると毎年11万円の固定費増です。増資の際は、この壁(と消費税の新設法人判定の壁)を意識して金額を決めてください。
また、均等割は事務所等のある自治体ごとにかかります。支店・営業所を増やすと、その市町村の均等割が追加で発生します。
法人事業税の計算
所得割:所得に段階税率
資本金1億円以下の普通法人(外形標準課税の対象外)の事業税は、所得に対する段階税率です(標準税率)。
| 所得の区分 | 税率 |
|---|---|
| 年400万円以下の部分 | 3.5% |
| 年400万円超〜800万円以下の部分 | 5.3% |
| 年800万円超の部分 | 7.0% |
自治体により超過税率(東京都では各区分がやや高い率)があります。所得800万円の会社なら、事業税は 400万×3.5%+400万×5.3% = 35.2万円(標準税率)です。
特別法人事業税:事業税に37%上乗せ
特別法人事業税 = 事業税の所得割額(標準税率で計算した額) × 37%
国税ですが、都道府県が事業税と一緒に賦課徴収します。先の例なら 35.2万円 × 37% = 約13万円が上乗せされます。
事業税の最大の特徴:翌期の損金になる
法人税・住民税は損金になりませんが、事業税と特別法人事業税は、申告書を提出した事業年度(=通常は翌期)の損金になります。当期に納めた前期分の事業税が、当期の所得計算で減算される——この時間差が、実効税率(約33〜34%)が表面税率より低くなる理由です(「法人税の実効税率」で詳説しています)。
申告と納付:様式と提出先
- 都道府県: 法人都道府県民税・事業税・特別法人事業税の申告書(第六号様式)を都道府県税事務所へ
- 市町村: 法人市町村民税の申告書(第二十号様式)を市役所・町村役場へ
- 期限はいずれも法人税と同じ(事業年度終了から2か月以内。申告期限の延長は自治体への届出が別途必要)
- 電子申告はeLTAXを使います。e-Tax(国税)とは別システムである点に注意
- 中間申告も法人税に連動して発生します
複数の都道府県・市町村に事務所がある場合は、従業者数などの分割基準で課税標準を各自治体に按分して申告します(複数自治体への申告が必要になり、事務負担が一段増えます)。
税理士からのひとこと(監査目線):地方税で実際に起きる事故は、税額計算よりも「自治体への手続き漏れ」です。典型例は3つ。①本店移転・支店開設をしたのに自治体への異動届を出さず、旧住所の自治体から均等割の申告催告が届く。②国税の申告期限延長は取ったのに都道府県・市町村への延長届を忘れ、地方税だけ期限後申告扱いになる。③支店を閉鎖したのに届出を怠り、実体のない自治体に均等割を払い続ける——。地方税は「自治体ごとの手続き」が独立している、と覚えてください。登記の変更・拠点の開閉があったら、法務局・税務署とセットで自治体への届出をチェックリストに入れることが、無駄な均等割と催告状を防ぐ一番の方法です。
計算例:所得1,000万円・東京23区・資本金1,000万円の会社
| 税目 | 計算 | 税額(概算) |
|---|---|---|
| 法人税 | 800万×15%+200万×23.2% | 1,664,000円 |
| 住民税(法人税割) | 1,664,000円×7.0% | 116,400円 |
| 住民税(均等割) | 資本金1,000万円以下・50人以下 | 70,000円 |
| 事業税 | 400万×3.5%+400万×5.3%+200万×7.0% | 492,000円 |
| 特別法人事業税 | 492,000円×37% | 182,000円 |
| 地方税等の合計 | 約86万円 |
法人税(約166万円)に対して、地方の税金が約86万円——**「法人税の約半分がもう一度来る」**というのが、地方税の体感的なボリューム感です。納税資金の計画には必ずこの分を織り込んでください。
地方税を抑える・無駄を防ぐ4つの着眼点
地方税は法人税ほど「対策」の余地は大きくありませんが、構造的に効く着眼点があります。
- 資本金は1,000万円の壁の内側で設計する: 均等割年7万円と18万円の差は10年で110万円。信用上の必要がない増資で壁を越えない
- 使っていない拠点を整理する: 登記だけ残った旧本店・実体のない営業所の均等割は、届出一枚で止められる無駄です
- 法人税側の対策がそのまま効く: 法人税割は法人税額連動のため、所得・税額を下げる対策は地方税まで自動的に波及します。効果試算は「法人税×約1.07倍+事業税系」で見る癖をつける
- 事業税の損金算入を翌期の予測に織り込む: 当期に大きな事業税を納めた翌期は、その分所得が下がります。翌期の納税予測・中間納付の資金計画はこの効果込みで
よくある質問(FAQ)
Q. 赤字の年は何を払うことになりますか? A. 均等割(標準で年7万円〜)のみです。法人税割・事業税・特別法人事業税はかかりません。なお均等割は事務所のある自治体ごとにかかります。
Q. 「資本金等の額」とは資本金のことですか? A. 資本金に資本準備金等を加味した税法上の概念で、無償増減資などがあると資本金と一致しないことがあります。均等割の区分判定に直結するため、増資・減資をした年は要確認です。
Q. 設立した年の均等割は満額かかりますか? A. 設立日からの月割りで計算されます(事務所を有していた月数分)。廃止・移転の年も同様に月割りです。
Q. 個人事業にも事業税はありましたが、法人と同じですか? A. 個人事業税は業種ごとの税率(多くは5%)で事業主控除290万円がある別の仕組みです。法人成りすると本記事の法人事業税の体系に変わります。
Q. 外形標準課税とは何ですか?うちにも関係ありますか? A. 資本金1億円超の法人に適用される事業税の課税方式で、付加価値(給与・利息・賃借料等)と資本に対して赤字でも課税されます。資本金1億円以下の中小企業には原則適用されませんが、減資による適用回避への規制が強化されているため、資本金の増減を検討する際は要確認です。
Q. 支店を他県に出したら、税金はどう変わりますか? A. その県・市町村の均等割が追加され、法人税割・事業税は従業者数等の分割基準で各自治体に按分して申告します。申告先が増えるため、拠点展開の際は事務負担とセットで計画してください。
Q. 地方税の納付書が届きません。払わなくてよいですか? A. 法人住民税・事業税は申告納付(自分で計算して納める)が原則で、納付書の有無にかかわらず期限は到来します。eLTAXの電子納付か、自治体への納付書再発行依頼で期限内に納めてください。
まとめ
- 地方の税金は住民税(法人税割+均等割)と事業税+特別法人事業税の2系統。合計すると法人税の約半分の規模感
- 均等割は赤字でも年7万円〜。資本金1,000万円の壁・自治体ごと課税・月割りのルールを押さえる
- 事業税は所得への段階税率+37%の特別法人事業税。翌期の損金になるのが最大の特徴
- 申告は第六号様式(都道府県)・第二十号様式(市町村)、電子はeLTAX。延長届・異動届は自治体ごとに必要
- 拠点の開設・移転・閉鎖の年は、自治体への届出漏れが均等割の無駄払い・催告の原因になる
地方税まで含めた納税設計は Iroae税理士事務所へ
Iroae税理士事務所では、法人税と地方税を合算した納税額の事前予測、資本金設計(1,000万円の壁)の助言、拠点異動時の自治体手続きの整理、eLTAXでの申告・納付体制づくりまで、国税・地方税を一体でご支援しています。「決算後にいくら出ていくのか」を、地方税込みの正確な数字で把握しましょう。
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※本記事は2026年時点の標準税率をもとに、税理士の監修のもと作成しています。税率(超過税率を含む)・均等割の区分は自治体・改正により異なります。実際の申告にあたっては、必ず各自治体・総務省の最新情報をご確認いただくか、税理士にご相談ください。