法人の社会保険の加入手続き【2026年版】新規適用・資格取得・算定基礎届を税理士が解説

法人は、社長1人でも社会保険(健康保険・厚生年金)への加入が義務です。「従業員がいないから未加入でよい」は誤りで、役員報酬を支払っている限り加入対象になります。

COLUMN役員報酬・社会保険

法人は、社長1人でも社会保険(健康保険・厚生年金)への加入が義務です。「従業員がいないから未加入でよい」は誤りで、役員報酬を支払っている限り加入対象になります。

加入は会社の義務であり、手続きには期限があります。本記事では、新規適用(会社として初めて加入する手続き)、従業員の資格取得、そして毎年の定例手続き(算定基礎届)まで、法人の社会保険実務を解説します。

法人の社会保険:4つの保険

法人が関わる社会保険・労働保険は4つです。

保険 対象 窓口
健康保険 役員・従業員(報酬を受ける人) 年金事務所(協会けんぽ等)
厚生年金保険 同上 年金事務所
雇用保険 従業員(役員は原則対象外) ハローワーク
労災保険 従業員(役員は原則対象外、特別加入あり) 労働基準監督署

**健康保険・厚生年金は「社会保険」、雇用保険・労災は「労働保険」**と呼び分けます。役員は社会保険には入りますが、労働保険は原則対象外(労働者ではないため)です。

新規適用:会社として初めて加入する

法人を設立し、役員報酬または従業員給与の支払いが始まったら、健康保険・厚生年金の新規適用手続きを行います。

  • 届出: 「健康保険・厚生年金保険 新規適用届」を事実発生から5日以内に年金事務所へ
  • あわせて、加入する役員・従業員の「被保険者資格取得届」、扶養家族がいれば「被扶養者(異動)届」を提出
  • 添付書類: 法人の登記事項証明書など

社長1人の会社でも、役員報酬の支払いが始まれば新規適用が必要です(報酬ゼロなら加入できない=手続き不要。「役員報酬ゼロ・0円のときの社会保険」参照)。

従業員を雇ったとき

社会保険(健康保険・厚生年金)

正社員、および一定の労働時間・日数を満たすパート・アルバイトは加入対象です。資格取得届を事実発生から5日以内に提出します。社会保険の適用拡大により、短時間労働者の加入要件は段階的に広がっているため、パートの加入判定は最新基準で確認してください。

労働保険(雇用保険・労災)

従業員を1人でも雇ったら労働保険の対象です。

  • 労災保険: 労働基準監督署へ「保険関係成立届」。全従業員が対象(パート・アルバイト含む)
  • 雇用保険: ハローワークへ「適用事業所設置届」+「被保険者資格取得届」。一定の労働時間以上の従業員が対象

保険料の仕組み

  • 社会保険料: 役員報酬・給与をもとにした標準報酬月額 × 保険料率(健康保険+厚生年金で労使合計おおむね30%前後)。会社と本人で折半
  • 労働保険料: 賃金総額 × 料率(労災は全額会社負担、雇用保険は会社と本人で負担)

社会保険料の会社負担分は会社の損金、本人負担分は給与天引きします。社長1人の会社でも、労使両方が実質自分の負担になる点は「役員報酬と社会保険の最適化」で解説しています。

毎年・随時の定例手続き

手続き 時期 内容
算定基礎届 毎年7月 4〜6月の報酬で標準報酬月額を見直し(9月から適用)
月額変更届(随時改定) 随時 固定的賃金が2等級以上変動したとき
賞与支払届 賞与支給の都度 支給から5日以内
労働保険の年度更新 毎年6〜7月 前年度の確定保険料の精算と当年度の概算保険料の申告・納付

特に**算定基礎届(7月)労働保険の年度更新(6〜7月)**は、全社共通の毎年の定例手続きです。役員報酬を期首に改定した場合は、随時改定(月額変更届)も絡みます(「役員報酬の変更手続きと届出先」参照)。

税理士からのひとこと(監査目線):社会保険の手続きで多いトラブルは、①新規適用・資格取得の届出漏れ(設立後に未加入のまま放置)、②算定基礎届・年度更新の失念、③パートの加入要件の判定ミスです。社会保険は加入が義務で、未加入が年金事務所の調査で発覚すると、保険料を遡って徴収されます(最大2年分)。これは数十万〜数百万円になることもあり、資金繰りに大きな打撃です。社会保険・労働保険の手続きは社会保険労務士の専門領域で、税理士・社労士が連携して対応するのが一般的です。給与計算とセットで専門家・クラウドサービスに任せると、届出漏れのリスクが構造的に消えます。設立時・採用時・賞与時・毎年7月——この節目を押さえることが基本です。

設立直後の社会保険スケジュール例

会社を設立し、社長+従業員1人で事業を始めるケースの手続きの流れです。

タイミング 手続き 窓口
役員報酬の支給開始 新規適用届・社長の資格取得届 年金事務所
従業員の入社 健康保険・厚生年金の資格取得届 年金事務所
同上 労災保険の保険関係成立届 労働基準監督署
同上 雇用保険の適用事業所設置届・資格取得届 ハローワーク
扶養家族がいる場合 被扶養者(異動)届 年金事務所

設立から事業開始までの短期間に、3つの窓口(年金事務所・労基署・ハローワーク)への届出が集中します。それぞれ期限(おおむね5〜10日以内)があるため、設立後の届出リスト(税務署・自治体の税務届出と合わせて)を1枚にまとめて、漏れなく進めることが重要です(税務側の届出は「会社設立の費用と流れ」参照)。

保険料の負担イメージ

役員報酬・給与に対する社会保険料は、労使合計でおおむね報酬の30%前後です。

  • 月額報酬30万円の従業員: 労使合計で月約9万円(うち会社負担 約4.5万円)
  • 社長1人(報酬月50万円): 労使合計で月約15万円(1人会社なら実質全額が自分の負担)

社会保険料は会社にとって人件費に約15%上乗せされる固定費です。採用・役員報酬の設計では、この会社負担分を必ず織り込んでください。

よくある質問(FAQ)

Q. 社長1人の会社でも社会保険に入る必要がありますか? A. 役員報酬を支払っているなら必要です。法人は社長1人でも健康保険・厚生年金が強制適用です。報酬ゼロの場合は加入できず、国保・国民年金になります。

Q. 加入しないとどうなりますか? A. 未加入は法令違反で、年金事務所の調査で発覚すると保険料を遡及徴収(最大2年分)されます。延滞金が加わることもあり、放置するほど負担が膨らみます。

Q. パート・アルバイトも加入させる必要がありますか? A. 労働時間・日数・賃金などの要件を満たせば社会保険の対象です。適用拡大で要件が広がっているため、最新基準で判定してください。労災保険は全員対象、雇用保険は一定時間以上の人が対象です。

Q. 算定基礎届とは何ですか? A. 毎年7月に、4〜6月の報酬をもとに標準報酬月額(保険料の基礎)を見直す手続きです。これにより9月以降の保険料が決まります。全社共通の年次手続きです。

Q. 手続きは自分でできますか? A. できますが、新規適用・資格取得・算定基礎届・年度更新と手続きが多く、期限もあります。給与計算とあわせて社会保険労務士・専門サービスに任せると、漏れなく回せます。

まとめ

  • 法人は社長1人でも健康保険・厚生年金が強制適用。役員報酬を払うなら加入義務がある
  • 新規適用・資格取得は事実発生から5日以内。従業員を雇えば労働保険(労災・雇用)も必要
  • 保険料は標準報酬月額×料率(労使折半)。会社負担分は損金
  • 毎年の定例は算定基礎届(7月)と労働保険の年度更新(6〜7月)
  • 未加入は遡及徴収(最大2年)のリスク。設立・採用・賞与・毎年7月の節目を押さえる

社会保険の手続き・給与実務は Iroae税理士事務所へ

Iroae税理士事務所では、提携社会保険労務士と連携し、新規適用・資格取得から算定基礎届・年度更新まで、社会保険・労働保険の手続きを給与計算と一体でご支援しています。「設立したが社保の手続きが分からない」「届出漏れが不安」という段階から、漏れのない体制づくりをお手伝いします。

※本記事は2026年時点の一般的な情報をもとに、税理士の監修のもと作成しています。社会保険の適用要件・料率は改正により変わります。手続きにあたっては、必ず日本年金機構・各窓口の最新情報をご確認いただくか、専門家にご相談ください。

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