法人の税務・経理には、毎月・毎年の決まった手続きがあります。これを月別のカレンダーで把握しておけば、申告・納税・各種届出の漏れを防げます。
本記事は、3月決算の会社を例に、1年間の税務・経理・労務の手続きを月別に整理した「年間スケジュール」です。この記事は法人ブログ100本のまとめとして、各テーマの詳細記事への入口も兼ねています。決算月が異なる会社は、決算関連の時期を自社の決算月に置き換えてご覧ください。
毎月やること(共通)
決算月にかかわらず、毎月の定例業務があります。
- 記帳・月次決算: 売上・経費を記帳し、試算表で月次の数字を確認(「決算書の読み方」「記帳代行と自計化の選択」)
- 資金繰りの確認: 資金繰り表で先々の現預金を予測(「資金繰り表の作り方」)
- 源泉所得税の納付: 原則、給与等から徴収した源泉税を翌月10日までに納付(納期の特例なら年2回)
- 給与計算・社会保険料の納付
月別スケジュール(3月決算の例)
| 月 | 主な手続き |
|---|---|
| 1月 | 源泉所得税の納付(納期特例: 7〜12月分を1月20日)/法定調書・給与支払報告書・償却資産申告(1月31日) |
| 2月 | 決算3か月前の着地予測・節税対策の検討開始(「決算前にやる節税対策チェックリスト」) |
| 3月(決算月) | 在庫処分・決算賞与の通知など決算前の最終対策/実地棚卸の準備 |
| 4月 | 決算作業(帳簿の締め・実地棚卸・決算整理) |
| 5月 | 株主総会・決算確定/法人税・消費税・地方税の申告と納税(5月31日)(「法人の決算の流れ」) |
| 6月 | 役員報酬の改定(期首3か月以内)/労働保険の年度更新(〜7月) |
| 7月 | 源泉所得税の納付(納期特例: 1〜6月分を7月10日)/社会保険の算定基礎届/労働保険の年度更新 |
| 8月 | (比較的手続きの少ない月。中間に向けた業績確認) |
| 9月 | 社会保険料の改定(算定基礎届の反映) |
| 10月 | (業績の中間確認。下期の対策検討) |
| 11月 | 法人税・消費税の中間申告・納付(11月30日)(前期実績による)(「法人税の中間申告」) |
| 12月 | 年末調整/賞与の支給・賞与支払届(「年末調整の法人実務」) |
毎年必ずある「締め切り」
特に絶対に外せない期限を抜き出します。
- 5月31日(3月決算の場合): 法人税・消費税・地方税の確定申告・納税(決算日の翌日から2か月)
- 11月30日: 中間申告・納税(前期の税額が一定以上の場合)
- 1月31日: 法定調書・給与支払報告書・償却資産申告
- 7月10日・1月20日: 源泉所得税(納期特例の場合)
- 毎月10日: 源泉所得税(原則)
- 6〜7月: 社会保険の算定基礎届・労働保険の年度更新
これらの期限を過ぎると、加算税・延滞税のリスクがあります(「法人税の申告期限と期限延長の特例」「法人税の延滞税の計算」)。
決算月別:申告・中間・対策の時期早見表
自社の決算月で、主要な期限がいつになるかの早見表です。
| 決算月 | 確定申告・納税 | 中間申告・納税 | 決算3か月前(対策好機) |
|---|---|---|---|
| 3月決算 | 5月末 | 11月末 | 12〜1月 |
| 6月決算 | 8月末 | 翌2月末 | 3〜4月 |
| 9月決算 | 11月末 | 翌5月末 | 6〜7月 |
| 12月決算 | 翌2月末 | 8月末 | 9〜10月 |
確定申告は「決算日の翌日から2か月以内」、中間申告は「事業年度開始から6か月経過後2か月以内」、対策の好機は「決算3か月前」——この3つの関係は、どの決算月でも同じです。一方、源泉所得税(毎月10日、納期特例なら7月10日・1月20日)・年末調整(12月)・社会保険の算定基礎届(7月)・法定調書(1月末)は、決算月にかかわらず時期が固定です。
決算月から逆算する「対策の好機」
年間スケジュールの中で、特に重要なのが決算3か月前です。
- 決算3か月前(3月決算なら12〜1月): 利益の着地予測を立て、節税対策を検討する最後の好機。経営セーフティ共済の加入・決算賞与・設備投資など、決算日までに実行が必要な対策はこの時期に動く
- 決算月(3月): 在庫処分・除却・決算賞与の通知など、決算日までに完了させる対策の実行
- 期首(4〜6月): 役員報酬の改定(3か月以内)。来期の利益計画に基づいて設定
「決算が終わってから節税を考える」のでは遅く、決算3か月前からの逆算が、打てる手の数を決めます。
税理士からのひとこと(監査目線):年間スケジュールを持つことの最大の効用は、「慌てない経営」ができることです。申告・納税・届出の期限を事前に把握し、納税資金を毎月積み立て、決算3か月前に対策を打つ——この型ができている会社は、期限に追われることも、資金繰りに慌てることもありません。逆に、スケジュールを把握していない会社は、毎年5月末(決算申告)と11月末(中間納付)に資金繰りで慌て、節税の機会を逃します。この100本のブログで解説してきた個々のテーマ(役員報酬・決算対策・資金繰り・各種税制)は、すべてこの年間スケジュールの中に位置づけられます。まずは自社の決算月をもとに、この記事のカレンダーを自社版に作り替えてみてください。納税カレンダー1枚が、1年の経営の安定をつくります。
このブログ100本の歩き方
このブログでは、法人の税務・経理・経営の数字について100本の記事を公開しています。この年間スケジュールを起点に、各テーマへ進むと体系的に把握できます。
- これから起業する方: 会社設立の費用と流れ → 資本金はいくらにすべきか → 法人化のメリット・デメリット
- 節税を考えたい方: 法人の節税対策 → 役員報酬の決め方 → 経営セーフティ共済 → 決算前にやる節税対策チェックリスト
- 資金繰り・融資の方: 資金繰り表の作り方 → 銀行融資の受け方 → 創業融資完全ガイド
- 数字を読めるようになりたい方: 決算書の読み方 → 法人税の計算方法 → 法人の消費税の計算方法
- 出口を考える方: 事業承継の基礎 → 役員退職金の活用 → M&Aで会社を売る税務
ご自身の今の関心に最も近いテーマから読み始めてください。どのテーマも、最終的にはこの「年間スケジュール」の中の各月の手続きにつながっています。
よくある質問(FAQ)
Q. 決算月が3月以外の場合はどう読めばよいですか? A. 申告・納税は「決算日の翌日から2か月以内」、中間申告は「事業年度開始から6か月経過後2か月以内」です。自社の決算月を起点に、本記事の3月決算の時期を置き換えてください。源泉・年末調整・算定基礎届などは決算月にかかわらず時期が固定です。
Q. 納税資金はどう準備すればよいですか? A. 5月末(確定申告)・11月末(中間納付)の納税の山に備え、毎月一定額を納税用口座に積み立てるのがおすすめです。資金繰り表に納税予定を書き込み、突発支出にしない仕組みが有効です。
Q. これだけの手続きを自社で全部できますか? A. 毎月の記帳・源泉納付・年次の申告・社会保険まで、すべて自社で行うのは負担が大きいのが実情です。記帳は自計化、決算・申告・社保は専門家、というハイブリッドが現実的です(「税理士に依頼できること」)。
Q. スケジュールの抜け漏れを防ぐコツは? A. 納税・申告・届出の期限を1枚のカレンダー(または会計ソフトのリマインダー)に集約し、ダイレクト納付で納付を自動化することです。「期限を人の記憶に頼らない」仕組みが最も確実です。
Q. この100本のブログはどこから読めばよいですか? A. ご自身の今の関心(設立・節税・資金繰り・承継など)に近いテーマから読むのが近道です。本記事の年間スケジュールから、各月の手続きの詳細記事へ進むと、体系的に把握できます。
まとめ
- 法人の税務・経理には**毎月(記帳・源泉・資金繰り)と毎年(申告・届出)**の決まった手続きがある
- 絶対に外せない期限は確定申告・納税(決算2か月後)・中間申告(11月末)・法定調書等(1月末)・源泉・社保
- 最重要の好機は決算3か月前。節税対策はこの時期からの逆算で打つ
- 納税カレンダー1枚+毎月の納税積立で、期限に追われない・資金繰りに慌てない経営ができる
- 個々のテーマ(役員報酬・決算対策・資金繰り・各種税制)は、すべてこの年間スケジュールの中にある
年間を通じた税務・経理の伴走は Iroae税理士事務所へ
Iroae税理士事務所では、年間の納税カレンダーの作成、毎月の記帳・試算表のチェック、決算3か月前の対策提案、申告・納税・各種届出まで、法人の1年を通じてご支援しています。「期限に追われる」「決算で慌てる」経営から、「数字で先を見る」経営へ。監査法人出身の税理士が伴走します。
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※本記事は2026年時点の制度をもとに、税理士の監修のもと作成しています。手続き・期限は制度改正により変わる場合があります。実務にあたっては、必ず国税庁・各自治体の最新情報をご確認いただくか、税理士にご相談ください。