経理アウトソーシング・記帳代行の費用と選び方【2026年版】税理士が相場と失敗パターンを解説

経理の外注を検討するとき、最初に知りたいのは「いくらかかるのか」と「どこまでやってくれるのか」の2点です。

COLUMN法人の実務・税理士活用

経理の外注を検討するとき、最初に知りたいのは「いくらかかるのか」と「どこまでやってくれるのか」の2点です。

結論から申し上げると、費用相場の目安は記帳代行(仕訳入力のみ)なら月1万〜3万円程度、支払・請求・給与まで含む経理代行なら月5万〜20万円程度です。そして選び方で最も重要なのは、価格ではなく「どの業務を、どこまで任せるかの線引き」です。ここが曖昧なまま契約すると、「思っていたよりやってくれない」「結局自社の手間が減らない」という失敗につながります。

本記事では、監査法人出身の税理士が、経理アウトソーシングの種類・費用相場・選び方の基準、そして見落とされがちな不正リスク(内部統制)の観点まで解説します。

「記帳代行」と「経理アウトソーシング」は別物

まず用語の整理です。似た言葉が混在していますが、任せられる範囲がまったく違います。

種類 任せられる範囲 主な担い手
記帳代行 領収書・通帳から仕訳を入力し、試算表を作る 税理士事務所・記帳代行業者
経理代行(経理アウトソーシング) 記帳に加え、請求書発行・支払業務・経費精算・給与計算など日常経理の実務 経理代行会社・BPO事業者
経理BPO(本格的な外部委託) 経理部門の機能を丸ごと委託。月次決算・管理資料作成まで BPO専門会社

注意点が一つあります。税務申告書の作成や税務相談は税理士の独占業務であり、記帳代行業者・経理代行会社には依頼できません。そのため実務では「日常経理は経理代行会社+税務は税理士」または「税理士事務所に記帳から申告まで一括」という組み合わせになります。

費用相場の目安(2026年時点)

あくまで一般的な目安です。仕訳量・業務範囲・資料の渡し方で大きく変動します。

記帳代行

  • 月額制: 仕訳100件程度まで 月10,000〜30,000円
  • 従量制: 仕訳単価 1件50〜100円程度
  • 領収書を「丸投げ」(整理されていない状態で渡す)場合は割増になるのが一般的です

経理代行・アウトソーシング

  • 記帳+請求書発行+支払代行など一部委託: 月50,000〜100,000円程度
  • 経費精算・給与計算・月次レポートまで広く委託: 月100,000〜200,000円程度
  • 給与計算単体: 従業員1人あたり月1,000〜2,000円程度(年末調整は1人2,000〜3,000円程度の別料金が多い)

税理士顧問とのセット

税理士事務所に記帳代行を依頼する場合、顧問料に月10,000〜20,000円程度の記帳代行料が加算される形が一般的です(顧問料自体の相場は別記事「税理士の顧問料相場」で詳しく解説します)。

比較のポイント:経理担当者を1人雇用すると、給与に社会保険料・採用費・教育コストを加えて年400万〜500万円規模の固定費になります。月数万〜20万円の外注費と比べる際は、「人件費との比較」だけでなく、退職リスク(経理が突然辞めると業務が止まる)を外注で消せるという事業継続の観点も含めて判断するのが実務的です。

自社に合う選び方:5つの基準

1. 任せる範囲を先に決める(最重要)

「経理を外注したい」ではなく、業務を分解してから探します。①領収書整理・仕訳入力、②請求書発行・入金管理、③支払業務、④経費精算、⑤給与計算、⑥月次試算表・レポート、⑦税務申告——このうちどれを出すのか。範囲が決まれば、候補は自然に絞られます。

2. クラウド会計に対応しているか

freee・マネーフォワード等のクラウド会計を使っている(使いたい)なら、そのソフトでの運用実績があるかを必ず確認します。銀行口座・カードの自動連携を活かせば仕訳量自体が減り、外注費も下がります。逆に、業者側の都合で自社がソフトを変えさせられる形は本末転倒です。

3. レスポンスと月次の締まりの早さ

「試算表が2か月遅れでしか出てこない」は経理外注の典型的な不満です。月次試算表が翌月何日に出てくるかを契約前に確認してください。翌月10〜15日程度で締まる体制なら、数字を経営判断に使えます。

4. 税理士との連携体制

経理代行会社を使う場合、税理士と二重にやり取りが発生します。経理代行と税理士が直接連携してくれるか(資料の受け渡し・質問対応)で、経営者の手間は大きく変わります。税理士事務所への一括依頼はこの摩擦がない点が利点です。

5. セキュリティと再委託の有無

通帳データ・給与情報という最高機密を渡す相手です。秘密保持契約、データの管理方法、業務の再委託(海外含む)の有無は確認しておくべき項目です。

【監査目線】外注しても消えない「不正リスク」の話

監査法人出身の立場から、あえて強調したい点があります。経理の外注で記帳の手間は消せますが、お金を動かす権限の管理は外注できません

中小企業の横領事案の典型は、「お金を動かせる人」と「記録する人」が同一というパターンです。外注を導入する際も、次の3点だけは社内(経営者)に残してください。

  • 振込の最終承認は経営者自身が行う(代行会社に振込データ作成まで任せても、承認ボタンは渡さない)
  • 通帳・印鑑・ネットバンキングの権限を一人に集中させない
  • 月次試算表を経営者自身が見る。現預金残高と通帳実残高の一致は、月1回の確認で多くの異常を検知できます

「外注したから安心」ではなく、「外注によって記録と実行が分離され、むしろ統制が効きやすくなった」という状態を作るのが正しい設計です。

規模別のおすすめ構成(年商数千万〜数億円の会社)

弊所が実務でよくご提案する構成を、会社のフェーズ別に整理します。

創業期〜年商数千万円(経理専任なし)

クラウド会計の自動連携+税理士に記帳・申告を一括依頼が基本形です。仕訳量が少ないうちは、経理代行会社を挟むより税理士一本のほうが窓口が一つで済み、コストも抑えられます。月数万円で「数字まわりはすべて任せている」状態を作れます。

成長期〜年商1億〜3億円(業務量が増え社長が経理に追われ始める)

請求書発行・支払・経費精算の事務量が増える時期です。日常経理を経理代行(または事務スタッフ)へ、月次チェックと税務を税理士へと二層に分けます。このとき前述の三者の業務分担表を必ず作り、振込承認は経営者に残します。

年商3億円超(管理部門を持ち始める)

経理担当者を採用しつつ、繁忙対応と専門性の補完として外注を併用する形が現実的です。担当者1人に依存しない体制(属人化の解消)こそが目的になるため、業務マニュアルの整備とクラウド上での業務の見える化をセットで進めます。

導入までの4ステップ

  1. 業務の棚卸し: 誰が・何を・月何時間やっているかを書き出す(外注見積りの精度が決まります)
  2. 資料の流れを設計: 領収書・請求書をどうデータ化して渡すか、電子帳簿保存法に沿った保存方法も同時に決める
  3. 並走期間を設ける: 1〜2か月は社内処理と並走し、品質と期日を検証してから完全移行する
  4. 分担表と承認ルールを文書化: 「どこまでが外注、どこからが社内、承認は誰か」を1枚にまとめて関係者で共有する

いきなり全部を移すのではなく、記帳→経費精算→請求・支払の順に段階的に広げると、トラブルなく移行できます。

失敗パターンと回避策

失敗パターン 原因 回避策
思ったより安くならない 資料を整理せず丸投げし割増料金 領収書のデータ化ルールを最初に決める
試算表が遅くて使えない 締めの期日を契約で決めていない 月次の提出期日を契約に明記
質問しても返事が遅い 担当者の業務量過多・窓口不明 窓口担当者と返信目安を事前確認
税理士と代行会社の板挟み 役割分担が曖昧 三者の業務分担表を作ってから開始
解約時にデータが返ってこない 会計データの所有権が曖昧 契約時にデータの返却形式を確認

相見積もりの取り方と見積書の見方

最後に、実際に見積もりを取るときのコツです。最低2〜3社から、同じ条件(月間仕訳数・従業員数・任せたい業務の一覧)を提示して取り寄せてください。条件を揃えないと、安く見えた見積もりに後からオプションが積み上がります。

見積書では次の3点を確認します。

  • 基本料金に含まれる範囲: 仕訳何件まで・試算表の提出はいつ・問い合わせ対応は含むか
  • 超過・割増の条件: 仕訳超過の単価、資料の未整理割増、繁忙期(年末調整・決算期)の追加料金
  • 初期費用と最低契約期間: 導入設定費の有無、解約予告の期間、解約時のデータ返却形式

「月額は安いが超過条件が厳しい」会社と「月額は高めだが包括的」な会社では、年間総額が逆転することも珍しくありません。12か月の総額で比較するのが確実です。

よくある質問(FAQ)

Q. 記帳代行と自計化(自社入力)はどちらがよいですか? A. 経理に時間を割けない創業期は記帳代行が合理的です。一方、月次の数字をタイムリーに見たい成長期の会社は、クラウド会計+自動連携で自計化し、チェックだけ専門家に任せる形が向きます。会社のフェーズで使い分けるものとお考えください。

Q. 領収書はどうやって渡すのですか? A. 郵送・スキャン・スマホ撮影アップロードが一般的です。電子帳簿保存法のスキャナ保存・電子取引データ保存に対応した方法かどうかも、あわせて確認してください。

Q. インボイス制度に対応してもらえますか? A. 対応可否は業者によります。受け取った請求書のインボイス登録番号の確認や、免税事業者からの仕入れの経過措置の処理など、制度対応の実績を確認してください。

Q. 外注費は経費(損金)になりますか? A. なります。記帳代行料・経理代行料は支払手数料等として損金算入できます。源泉徴収は原則不要ですが、税理士・社会保険労務士など士業個人への報酬は源泉徴収が必要なため、支払先の区分だけ注意してください。

Q. 経理代行会社に税務申告まで頼めますか? A. 頼めません。税務申告書の作成・税務相談は税理士の独占業務です。「申告までセット」をうたう非税理士業者には注意してください。

Q. 月の仕訳数が少ないのですが、それでも外注する意味はありますか? A. 仕訳が月数十件程度なら、クラウド会計の自動連携で自社処理し、決算・申告のみ税理士に依頼する形が費用対効果に優れることが多いです。無理にフルセットの外注を選ぶ必要はありません。

まとめ

  • 相場の目安は記帳代行で月1万〜3万円、経理代行で月5万〜20万円。仕訳量と業務範囲で変動する
  • 税務申告・税務相談は税理士の独占業務。経理代行会社には頼めないため、組み合わせの設計が必要
  • 選び方の核心は「任せる範囲の線引き」「クラウド会計対応」「月次の締まりの早さ」
  • 外注しても振込の最終承認・権限の分離・月次確認は経営者の手元に残す(不正リスク対策)
  • 人件費比較だけでなく、担当者の退職リスクを消せるという事業継続の価値も込みで判断する

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Iroae税理士事務所では、記帳代行から月次決算・税務申告までの一括対応はもちろん、クラウド会計を使った自計化への移行支援、経理代行会社と併用する場合の業務分担設計まで、会社のフェーズに合わせた経理体制づくりをサポートしています。「経理を任せたいが、何をどこに頼めばいいか分からない」——監査法人出身の税理士が、統制の効いた仕組みからご提案します。

※本記事は2026年時点の一般的な情報をもとに、税理士の監修のもと作成しています。記載した費用はあくまで一般的な相場の目安であり、個別のサービス内容・仕訳量により異なります。契約にあたっては必ず各社の最新の料金体系をご確認ください。

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