役員貸付金のリスクと解消法【2026年版】融資に効く「最悪の科目」を消す手順を税理士が解説

決算書の資産の部にある「役員貸付金」(会社から社長へのお金の貸し)。これは、金融機関から最も嫌われる科目です。

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決算書の資産の部にある「役員貸付金」(会社から社長へのお金の貸し)。これは、金融機関から最も嫌われる科目です。

理由は単純で、銀行から見れば「会社に貸したお金が、社長個人に流れている」ことを示す科目だからです。放置すれば融資の枠と条件を確実に蝕み、税務上も認定利息・賞与認定という問題を抱え、最後は相続の場面までついてきます。本記事では、役員貸付金が生まれる原因、4つのリスク、そして現実的な解消手順を解説します。

なぜ生まれるのか:3つの典型ルート

  1. 生活費の引き出し: 役員報酬を低く設定しすぎて生活費が足りず、会社の口座から都度引き出す——最多のパターンです
  2. 使途不明金の行き先: 領収書のない支出・経費にできない私的支出を、決算で仕方なく「社長への貸付」として処理
  3. 個人の支払いの立替: 個人の税金・保険・車のローン等を会社口座から払い続けた累積

共通するのは「公私の財布の混在」です。つまり解消は、返済計画と同時に発生源を断つ仕組み(役員報酬の適正化・法人カードと個人カードの分離)とセットでなければ、翌年また増えます。

4つのリスク

リスク1:融資審査で「実質債務超過」に修整される

金融機関は役員貸付金を資産価値ゼロ(回収不能)として自己資本から差し引いて評価するのが通例です。帳簿上は資産超過でも、貸付金を引いたら実質債務超過——この修整で、融資の可否・金利・保証の条件が一段階悪化します。さらに「前回の融資資金が社長個人に流れたのでは」という資金使途への疑念は、金額以上に信頼を損ないます。

リスク2:認定利息の計上義務

会社は営利法人ですから、役員への貸付にも利息を取る必要があります(税法上の認定利率に基づく利息。無利息のままだと、利息相当が役員給与(定期同額外=損金不算入)と認定されるリスク)。つまり貸付金がある限り、毎期、受取利息の計上と未収利息の累積が続き、雪だるまの芯になります。

リスク3:回収可能性を失うと「役員賞与」認定

返済の実態がないまま貸付金が膨らみ続けると、税務調査で「実質的には給与(賞与)だったのでは」と認定されるリスクがあります。認定されれば、法人側は損金不算入、個人側は給与課税+源泉徴収漏れ——最悪の組み合わせです。

リスク4:相続まで持ち越される

社長に万一があった場合、会社の貸付金(社長から見れば借金)は相続人が返済義務を引き継ぎ、一方で会社側の貸付金債権は相続財産の評価にも絡みます。「自分の会社からの借金」は、死後に家族の問題になります。

解消の手順:4ステップ

ステップ1:実態の確定

まず貸付金の中身を仕分けます。①本当に社長が使ったもの、②実は経費性のある支出(精算漏れ)、③内容不明——。②は経費精算で減らせ、③は原因究明が先です。金額と発生原因の一覧化が出発点です。

ステップ2:返済計画を「書面」にする

金銭消費貸借契約書(利率・返済期間・毎月の返済額)を整備し、毎月の返済を実行します。銀行への説明でも、「契約と返済実績がある貸付金」と「増え続ける貸付金」では評価がまったく違います。

ステップ3:返済原資を設計する(主な5つの方法)

方法 内容 注意点
役員報酬の増額+手取りで返済 期首改定で報酬を上げ、増えた手取りを返済に回す 個人の税・社保が増える。最も健全で標準的な方法
役員賞与(事前確定届出給与)との相殺 届出済み賞与の手取りを返済原資に 届出期限・支給の厳格運用が前提
役員退職金との相殺 勇退時に退職金と貸付金を相殺 退職所得の優遇で税効率は最良。ただし勇退まで残る
個人資産の売却・個人での借り換え 個人の不動産・保険・証券を換金して返済 個人側の譲渡課税等を確認
債務免除(最終手段) 会社が貸付金を放棄 役員への給与(賞与)課税+損金不算入が原則。安易に選ばない

ステップ4:発生源を断つ

  • 役員報酬を生活費が回る水準に再設定する(低すぎる報酬が諸悪の根源です)
  • 法人口座・法人カードと個人の支払いを完全分離する
  • 経費精算のルール(締め日・領収書)を決め、「とりあえず会社の金で払う」をやめる

税理士からのひとこと(監査目線):解消相談で最初にお伝えするのは、「今期、1円でも残高を減らし始めること」です。金融機関が見ているのは残高の絶対額だけでなく増減のトレンドで、毎期着実に減っている貸付金は「管理されている」と評価され、増え続ける貸付金は金額が小さくても警戒されます。実務では、①期首の報酬改定で月◯万円の返済原資を作る、②契約書と返済予定表を整備、③決算書の勘定科目内訳明細書に返済実績が現れる——この3点を1年回すだけで、銀行との会話が変わります。もう一つ。逆の「役員借入金」(社長が会社に貸す)は、融資上はむしろ資本に近い扱いをされることもある別物です。2つを混同せず、自社の決算書のどちら側に何があるかを把握してください。

予防:そもそも作らない会社の習慣

  • 役員報酬は「生活費+個人の納税+予備」から逆算して設定する(節税目的で下げすぎない)
  • 会社の現金を動かすのは報酬・配当・経費精算・契約ある貸借の4ルートだけと決める
  • 月次試算表で「役員貸付金・仮払金」の残高をゼロ確認する(増えた月に即対処)

ケーススタディ:貸付金800万円を3年で解消した例

役員報酬月50万円・貸付金残高800万円(毎年100万円ずつ増加中)の会社の実例イメージです。

  • 1年目: 期首改定で役員報酬を月65万円へ増額。増えた手取りのうち月12万円を返済に充当(年144万円)。同時に金銭消費貸借契約書を整備し、法人カードと個人支出を完全分離。増加が止まり、残高656万円へ
  • 2年目: 同ペースで返済を継続し残高約510万円。決算書の内訳明細書に返済実績が2期連続で現れ、金融機関の評価が「増え続ける貸付金」から「解消計画が実行されている貸付金」に変化。設備資金の融資が通常条件で承認
  • 3年目: 経営セーフティ共済の解約(出口イベント)と役員賞与(事前確定届出給与)の手取りを併用し、残高をゼロに

ポイントは、初年度に**「増加を止める+書面を整える」**だけで金融機関の見方が変わり始めたことです。完済まで待たずとも、トレンドの転換そのものに価値があります。

よくある質問(FAQ)

Q. 役員貸付金の利率は何%にすればよいですか? A. 税法上の認定利率(会社の調達金利または特例基準割合による利率)を目安に設定します。利率は年により変わるため、契約書作成時に最新の率を確認してください。

Q. 役員報酬を上げて返済すると、税金・社保で損しませんか? A. 増額分に税・社保がかかるのは事実ですが、貸付金の放置コスト(融資条件の悪化・認定リスク・利息の累積)との比較で考えるべきです。多くのケースで「数年かけて計画的に解消」が総合的に最も安くつきます。

Q. 退職金で相殺するつもりです。それまで放置でよいですか? A. 方針として退職金相殺は有効ですが、それまでの期間も契約書・認定利息・少額でも定期返済の3点は維持してください。「勇退まで無管理」は、その間の融資と調査で不利益を受け続けます。

Q. 貸付金を雑損失で落とせますか? A. 役員への貸付金の放棄は、原則として役員給与(損金不算入+個人課税)の問題になります。回収不能を理由とする損失処理は、役員という関係上きわめて厳格に見られます。安易な損切りはできない科目です。

Q. 役員貸付金があると、生命保険や共済で対策できますか? A. 「保険の契約者貸付で借り換えて科目を消す」ような見せかけの対策は、実態が変わらないため推奨しません。王道は本文の4ステップ(報酬設計と返済)です。一方、勇退時の退職金で相殺する計画なら、その原資づくりとして共済・保険を使うのは正当な組み合わせです。

Q. 決算直前に一時返済して、期明けにまた借りる「期末だけ消す」処理はどうですか? A. 期末前後の一時的な返済・再貸付は、金融機関にも税務署にも容易に見抜かれ(通帳の動きで分かります)、発覚すれば信頼を根本から損ないます。残高を取り繕うのではなく、トレンドを変えることに注力してください。

Q. 「仮払金」も同じ問題ですか? A. 同根です。内容不明の仮払金は実質的な役員貸付金として扱われ、融資・調査での見られ方も同じです。月次での精算ルールで残高を持ち越さないことが基本です。

まとめ

  • 役員貸付金は融資で最も嫌われる科目。実質債務超過への修整と資金使途への疑念を生む
  • 税務上も認定利息・賞与認定・(相続まで続く)債務という三重のリスク
  • 解消は「実態確定→契約書化→返済原資の設計(報酬増額・賞与・退職金)→発生源の遮断」の4ステップ
  • 増減のトレンドが見られている。今期から減らし始めることに最大の価値がある
  • 債務免除は給与課税の最終手段。まず報酬設計と公私分離という王道から

役員貸付金の解消プランは Iroae税理士事務所へ

Iroae税理士事務所では、貸付金の発生原因の仕分け、認定利息・契約書の整備、役員報酬の改定とセットにした返済計画の設計、金融機関への説明資料づくりまで、解消の実行を伴走支援しています。決算書から「最悪の科目」を消す道筋を、数字で一緒に作りましょう。

※本記事は2026年時点の一般的な情報をもとに、税理士の監修のもと作成しています。認定利率・給与認定の取り扱いは個別事情により異なります。解消の実行にあたっては、必ず税理士にご相談ください。

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