銀行融資の受け方【2026年版】審査で見られる5項目と決算書の見られ方を税理士が解説

銀行融資の審査は、突き詰めると一つの問いに答える作業です。「この会社は、貸したお金を返せるか」。

COLUMN資金調達・融資

銀行融資の審査は、突き詰めると一つの問いに答える作業です。「この会社は、貸したお金を返せるか」

この問いに「返せる」と思わせる材料を、決算書と事業計画と日頃の取引で示せるかが、融資の可否・金額・金利を決めます。本記事では、審査で見られる5項目、決算書のどこが評価されるか、そして通りやすくする準備を解説します(創業期の融資は「創業融資完全ガイド」、公庫と制度融資の違いは別記事を、決算書の読み方は「決算書の読み方」をご覧ください)。

審査で見られる5項目

1. 返済能力(最重要)

営業利益+減価償却費」が年間の返済原資です。これに対して借入金の返済額が見合っているかが核心です。指標としては債務償還年数(借入金 ÷ 返済原資)が10年以内が一つの目安。本業できちんと利益を出していることが、何よりの返済能力の証明です。

2. 財務の健全性

**純資産がプラス(債務超過でない)**こと、自己資本比率が厚いことが見られます。債務超過の会社は、それだけで融資が難しくなります。役員貸付金は資産価値ゼロと見なされ実質的に自己資本から差し引かれるため、決算書から消しておくことが重要です(「役員貸付金のリスクと解消法」参照)。

3. 資金使途

借りたお金を何に使うかです。運転資金・設備資金など使途が明確で合理的であることが必要です。「とりあえず借りておきたい」は通りにくく、設備資金なら見積書、運転資金なら資金繰り表で「いくら・なぜ必要か」を示します。前回の融資が事業に使われたか(役員個人に流れていないか)も見られます。

4. 事業の将来性・経営者

事業計画の実現性、経営者の経験・人柄、業界の動向。数字だけでなく、「この経営者なら任せられる」という定性的な評価も融資判断に影響します。特に中小企業では、経営者自身の説明力が重要です。

5. 取引実績・信用情報

既存取引のある銀行なら、これまでの返済実績・預金取引・決算書の開示姿勢。新規なら、経営者個人の信用情報(借入・延滞)も確認されます。

決算書はどう見られるか

銀行は決算書を独自に「実態修正」して評価します。額面どおりには見ません。

  • 役員貸付金・仮払金: 回収不能とみなし、資産から控除(実質的に自己資本を削る)
  • 在庫・売掛金: 不良在庫・回収不能債権がないか。過大なら実態評価で減額
  • 減価償却: きちんと計上しているか(償却不足は利益の水増しと見なされる)
  • 保険積立金・有価証券: 含み損益を時価で評価

つまり、「実態が良い決算書」が評価されるのであって、利益を取り繕った決算書はかえって信頼を損ないます。粉飾は最も避けるべき行為で、発覚すれば取引そのものが終わります。

通りやすくする5つの準備

  1. 試算表・資金繰り表を「頼まれる前」に出す: 月次の数字を自発的に開示する会社は「管理できている」と評価され、融資交渉が有利になる
  2. 役員貸付金・仮払金を解消する: 実質自己資本を削る科目を減らす
  3. 資金使途を資料で示す: 設備は見積書、運転資金は資金繰り表で根拠を明確に
  4. 複数行と取引する: 1行依存はリスク。平時から複数の金融機関と関係を作っておく
  5. 業績が良いときに枠を作る: 「お金が必要になってから」では遅い。借りられるときに枠や当座貸越を確保しておく

税理士からのひとこと(監査目線):融資は「お金に困ってから申し込む」と最も通りにくく、「困っていないときに関係を作る」と最も通りやすい——この逆説を理解している経営者は強いです。私たちがお手伝いする会社には、決算後すぐに決算書+試算表+次期計画を持って銀行を訪問し、業績を自分の言葉で説明することをおすすめしています。これだけで「数字を管理し、開示する誠実な会社」という評価が積み上がり、いざ資金が必要なときの審査スピードと条件が変わります。融資は決算書という「点」ではなく、日頃の開示と返済実績という「線」で勝ち取るものです。逆に、決算のときだけ慌てて数字をよく見せようとする会社は、その不自然さが必ず伝わります。

数値例:返済能力はこう計算される

営業利益500万円・減価償却費300万円の会社が、借入総額5,000万円を抱えているケースで見ます。

  • 返済原資 = 営業利益500万円 + 減価償却費300万円 = 年800万円
  • 債務償還年数 = 借入5,000万円 ÷ 800万円 ≒ 6.3年

10年以内に収まっており、返済能力の面では健全と評価されます。逆に同じ借入5,000万円でも返済原資が年300万円しかなければ、債務償還年数は約17年——「返すのに時間がかかりすぎる」と判断され、追加融資は厳しくなります。新規の借入を検討するときは、この「返済原資 × 10年」が借入総額の一つの上限目安、と覚えておくと自社の借入余力が見えます。

銀行訪問のベストタイミング

  • 決算後すぐ(決算書が固まったら): 決算書+試算表+次期計画を持参し、業績を報告。融資の予定がなくても、関係構築として有効
  • 資金が必要になる2〜3か月前: 余裕を持って相談する。「来月までに」は審査が間に合わないことも
  • 四半期ごとの試算表提出: 定期的な開示が信頼を積み上げる

最悪なのは「月末に資金が足りないので明日貸してほしい」という駆け込みです。融資は時間に余裕があるほど条件がよくなる——この原則を、資金繰り表(「資金繰り表の作り方」参照)で先を見ながら実践してください。

融資の種類と使い分け

種類 特徴
証書貸付 設備資金など長期。返済予定表に沿って分割返済
手形貸付 短期の運転資金。期日一括返済が基本
当座貸越 枠内で自由に借入・返済。資金繰りの安全弁
保証協会付き融資 信用保証協会の保証付き。創業期・実績の浅い会社向け
プロパー融資 銀行が自行リスクで貸す。財務が健全な会社向け

成長段階に応じて、保証協会付き→プロパーへと「借り方」を育てるのが王道です(「公庫と制度融資の違い」参照)。

よくある質問(FAQ)

Q. 赤字だと融資は受けられませんか? A. 1期の赤字で即不可ではありません。赤字の原因(一時的か構造的か)と改善の道筋を説明でき、債務超過でなければ可能性はあります。ただし連続赤字・債務超過は厳しくなります。

Q. 黒字なのに融資を断られました。なぜですか? A. 役員貸付金で実質債務超過と見られた、資金使途が不明確だった、返済原資(営業利益)が借入に見合っていなかった——などが典型です。決算書の「実態」が評価されている結果です。

Q. 金利はどうやって決まりますか? A. 会社の信用力(財務・実績)、保証の有無、借入期間などで決まります。財務が健全で取引実績があるほど低くなります。複数行の条件を比較する余地もあります。

Q. 融資の相談に税理士が同席できますか? A. できます。数字の説明を補強し、事業計画・資金繰り表の作成を支援することで、審査がスムーズになります。金融機関とのパイプを持つ税理士なら紹介も可能です。

Q. いくらまで借りられますか? A. 一般に「月商の3〜6か月分」が一つの目安とされますが、返済能力(営業利益+償却)と財務内容で決まります。借入総額が返済能力に見合っているかが最終的な基準です。

まとめ

  • 融資審査の核心は「返せるか」。返済原資(営業利益+減価償却費)と借入のバランスが最重要
  • 見られる5項目は「返済能力・財務の健全性・資金使途・将来性と経営者・取引実績
  • 決算書は実態修正される。役員貸付金は実質自己資本を削る。粉飾は最悪手
  • 通りやすくする鍵は「頼まれる前の開示・役員貸付金の解消・使途の明示・複数行取引・平時の枠確保
  • 融資は決算書という点でなく、日頃の開示と返済実績という線で勝ち取る

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※本記事は2026年時点の一般的な情報をもとに、税理士の監修のもと作成しています。審査基準・金利は金融機関・状況により異なります。実務にあたっては、必ず専門家にご相談ください。

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