法人化で消費税が最大2年免除される仕組み【2026年版】例外とインボイス時代の使い方を税理士が解説

「法人化すると消費税が2年免除される」——この話は今でも制度として正しいです。ただし、正確には条件と例外があり、さらにインボイス制度によって「使える会社」が限定されるようになりました。

COLUMN会社設立・法人化

「法人化すると消費税が2年免除される」——この話は今でも制度として正しいです。ただし、正確には条件と例外があり、さらにインボイス制度によって「使える会社」が限定されるようになりました。

結論の全体像はこうです。①資本金1,000万円未満の新設法人は、設立1期目・2期目は原則として消費税の納税義務が免除される。②ただし特定期間の売上・給与インボイス登録によって、免税の恩恵が消える場合がある。③だから現在は、「免税メリットを取れる事業かどうか」を先に判定するのが設計の出発点になります。

仕組み:なぜ2年(2期)免税になるのか

消費税の納税義務は、原則として基準期間(2期前)の課税売上高が1,000万円を超えるかで判定します。

新しく設立した法人には、1期目・2期目の時点で「2期前」が存在しません。基準期間がない → 判定のしようがない → 原則免税。これが「最大2年免除」の正体です。個人事業の売上実績は法人に引き継がれないため、個人時代に課税事業者だった方も、法人としてはゼロからの判定になります(これが法人成りの消費税メリットと呼ばれてきたものです)。

免税にならない4つの例外

例外1:資本金1,000万円以上

設立時の資本金が1,000万円以上だと、基準期間がなくても1期目から課税事業者です(新設法人の特例)。資本金は1,000万円未満——これが大前提です(「資本金はいくらにすべきか」参照)。

例外2:特定期間の売上・給与がともに1,000万円超

特定期間(1期目の開始日から6か月間)の①課税売上高と②給与等支払額がいずれも1,000万円を超えると、2期目から課税になります。判定は①と②の有利な方を選べるため、半年で売上が1,000万円を超えても、給与支払額を1,000万円以下に抑えていれば2期目も免税を維持できます(役員報酬の設計と連動する論点です)。

さらに技として、1期目を7か月以下に設定すると、特定期間による判定自体が生じない(短期事業年度)ため、2期目の免税が確定的になります。急成長が見込まれる会社の設立では、決算月の設計でこの形を作ることがあります。

例外3:特定新規設立法人(大企業の子会社等)

課税売上高5億円超の事業者等に株式の50%超を保有されている新設法人は、免税の対象外です。

例外4:インボイス登録(実務上の最大の例外)

適格請求書発行事業者としてインボイス登録をすると、免税事業者ではいられません(登録=課税事業者)。つまり、取引先が事業者中心(BtoB)でインボイスの発行を求められる会社は、制度上の免税期間があっても、実務上は使えないことになります。

インボイス時代の判定フロー

  1. 顧客は誰か?
    • 一般消費者中心(BtoC: 飲食・美容・小売・教室等)→ インボイス不要 → 免税メリットをフルに使える
    • 事業者中心(BtoB: 受託・卸・建設下請等)→ 次へ
  2. 取引先は仕入税額控除を求めるか?
    • 求められる(大半のBtoB)→ 登録せざるを得ない → 免税は実質使えない。ただし2割特例(売上税額の2割納税)が使える期間は負担が軽減されます——適用は2026年9月30日を含む課税期間までで、期限が迫っています
    • 免税事業者からの仕入れにも経過措置(2026年10月から控除70%)があるため、取引先との関係次第で未登録継続の余地が残る場合もあります
  3. 登録する場合も、簡易課税・2割特例の選択で納税額は大きく変わる → 詳細は「法人のインボイス対応【簡易課税・2割特例】」をご覧ください

税理士からのひとこと(監査目線):かつての「とりあえず資本金1,000万円未満で2年免税」という一律の設計は、インボイス制度で終わりました。いま私たちが設計で確認するのは3点です。①顧客構成(BtoCの売上比率)、②特定期間の見込み(半年で売上・給与とも1,000万円を超えそうか。超えるなら1期目7か月以下の設計や給与の調整)、③設備投資の予定(大きな投資があるなら、あえて課税事業者を選んで還付を取るほうが有利な場合すらあります)。「免税=常に得」ではなく、還付・経過措置・特例の期限まで並べて、自社の数字で選ぶ時代です。なお、免税期間中も請求書に消費税相当額を記載して受け取ること自体は適法ですが、取引先との価格交渉・表示の整理は丁寧に行ってください。

免税メリットの金額感

免税メリットの大きさは「預かる消費税 − 支払う消費税」、つまり粗利に対する消費税相当分です。

年商(税抜) 課税仕入れ率 免税メリットの概算(年)
1,500万円 40%(人件費中心の業種) 約90万円
3,000万円 40% 約180万円
3,000万円 70%(仕入の多い業種) 約90万円

人件費比率の高いサービス業ほどメリットが大きく、2年分なら数百万円規模になり得ます。BtoCでこの条件に当てはまる事業の法人化では、依然として無視できない設計要素です。

ケーススタディ:免税設計が決まるまで

ケース1)ネイルサロンの法人成り(BtoC・年商1,800万円・人件費中心) 顧客は一般消費者でインボイス不要。資本金300万円・1期目11か月で設立し、1期目・2期目とも免税を確保。粗利ベースの免税メリットは2年で約200万円。特定期間の給与は役員報酬の設計(月50万円なら6か月で300万円)で1,000万円を大きく下回り、判定も問題なし——免税メリットをフルに取れる典型例です。

ケース2)システム受託の法人成り(BtoB・年商2,400万円) 取引先はすべて法人で、インボイスの発行が取引条件。設立と同時に登録し、免税期間は実質使えません。代わりに、登録初年度は2割特例(期限内の課税期間)で納税を売上税額の2割に抑え、特例終了後は簡易課税(第5種・みなし仕入率50%)と原則課税を実データで比較して選択する設計に。「免税」ではなく「計算方式の最適化」が主戦場になる典型例です。

ケース3)製造業の新設(初年度に設備3,000万円を投資) 免税のままだと設備にかかった消費税約300万円の還付が受けられません。あえて課税事業者を選択して初年度に還付を受け、2年目以降の方式を改めて検討。「免税=常に得」ではないことを示す例です。

よくある質問(FAQ)

Q. 個人事業で課税事業者でした。法人化したら本当に免税に戻れますか? A. 法人は別人格のため、資本金1,000万円未満なら原則1期目は免税です。ただしインボイス登録をしていた個人が法人化する場合、法人で改めて登録するかどうかで実務が決まります。取引先との関係を切り離して「制度上免税に戻れるか」だけで判断しないでください。

Q. 2期目の途中で売上が伸びたら、その期から課税になりますか? A. なりません。判定は期首時点の基準(基準期間・特定期間・資本金等)で行われ、期の途中で課税事業者に変わることはありません(インボイス登録をした場合を除く)。

Q. 免税期間中に大きな設備投資をする予定です。損しませんか? A. 免税事業者は支払った消費税の還付を受けられません。投資額が大きい期は、課税事業者を選択して還付を受けるほうが有利な場合があります。投資計画がある場合は、免税の放棄を含めた比較を必ず行ってください。

Q. 1期目を7か月以下にすると、何か不利益はありますか? A. 1期目の申告が早く来る・期間が短い分の事務が増える程度で、税務上の不利益は基本的にありません。2期目の免税を確実にする設計として実務でも使われています。

Q. 「2年免税」の間、消費税はもらってよいのですか? A. 免税事業者が税込価格で販売すること自体は適法です。ただしインボイスは発行できないため、事業者向け取引では相手の控除に影響します(経過措置で2026年10月以降は70%控除)。価格・表示・取引先への説明はセットで設計してください。

まとめ

  • 仕組みは「基準期間がないから原則免税」。条件は資本金1,000万円未満
  • 例外は「特定期間(売上と給与がともに1,000万円超)・大企業子会社・インボイス登録」。給与基準の選択と1期目7か月以下の設計で2期目免税を固められる
  • インボイス時代はBtoCなら免税フル活用、BtoBは登録前提で2割特例(期限間近)・簡易課税の選択へ
  • メリットの規模は粗利×消費税率。人件費型のBtoC事業なら2年で数百万円になり得る
  • 設備投資の予定があるなら、あえて課税を選んで還付を取る比較も忘れずに

消費税まで含めた法人化設計は Iroae税理士事務所へ

Iroae税理士事務所では、顧客構成・売上見込み・投資計画から免税メリットの実額を試算し、資本金・決算月(1期目の月数)・役員報酬・インボイス登録の4点を同時に設計する法人化プランをご提案しています。消費税は設計順序を間違えると取り返しがつかない税目です。設立前に、必ず一度ご相談ください。

※本記事は2026年時点の制度をもとに、税理士の監修のもと作成しています。納税義務の判定・特例(2割特例の期限を含む)は税制改正により変わる場合があります。設立・登録の判断にあたっては、必ず国税庁の最新情報をご確認いただくか、税理士にご相談ください。

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