会社設立を自分でやる方法と税理士に頼む場合の比較【2026年版】時間・費用・失敗リスクで判断する

会社設立は、自分でもできます。無料の設立支援ツールが充実した現在、書類作成のハードルはかつてより大幅に下がりました。

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会社設立は、自分でもできます。無料の設立支援ツールが充実した現在、書類作成のハードルはかつてより大幅に下がりました。

それでも専門家への依頼が無くならないのは、設立の難所が「書類を作ること」ではなく、**「後から変えにくい設計を最初に正しく決めること」**だからです。資本金・決算月・株式の持ち分・役員構成・事業目的——ここでの設計ミスは、数年後に数十万〜数百万円のコストになって返ってきます。本記事では、自分でやる方法の実際と、専門家に頼む場合の選び方・費用を、損得の構造から比較します。

自分でやる場合:手順と現実的な工数

手順(株式会社の場合)

  1. 基本事項の決定(商号・本店・目的・資本金・決算月・役員)
  2. 定款の作成 → 公証役場で認証(電子定款なら印紙代4万円が不要)
  3. 資本金の払込み
  4. 登記申請書類の作成 → 法務局へ申請
  5. 設立後の届出(税務署・自治体・年金事務所)

無料ツールを使えば書類は作れる

クラウド系の会社設立支援ツール(freee会社設立・マネーフォワード会社設立など)を使うと、質問に答える形で定款・登記書類一式が自動生成され、電子定款の認証も提携で安価に対応できます。「書類作成」の部分は、ツールでほぼ解決済みと考えてよい状況です。

それでもかかる工数と「自分でやる」の実際

  • 調べ物+書類作成+公証役場・法務局・銀行とのやり取りで、合計20〜30時間が現実的な目安です
  • 法務局の補正(書類の不備による差し戻し)があると、設立日が想定からずれます
  • そして最大の問題は、ツールは「入力された内容」を書類にするだけで、資本金をいくらにすべきか、決算月をいつにすべきか、株式を誰に何%持たせるべきかは教えてくれないことです

「後から効いてくる」設立時の設計ミス

実際に弊所へ相談が来る「自分で設立した会社」の典型的な設計ミスです。

  • 資本金の設計ミス: 1,000万円以上にしてしまい初年度から消費税の課税事業者に。または1,000万円超で住民税の均等割が年7万円→18万円に
  • 決算月の設計ミス: 設立月の直後を決算月にしてしまい、第1期が2か月で申告が即到来。繁忙期と決算が重なる設定
  • 株式の持ち分ミス: 共同創業者と50:50、知人に「お礼」で数%——後の意思決定・資金調達の障害に(「スタートアップの資金調達と資本政策」で詳説)
  • 事業目的の漏れ: 許認可(建設・古物・人材等)に必要な文言がなく、定款変更+登記変更(登録免許税3万円+手間)が必要に
  • 届出の失念: **青色申告承認申請(設立3か月以内)**の出し忘れで初年度の欠損金繰越を喪失。社会保険の未加入放置
  • 役員報酬の決め損ね: 設立3か月以内に決めるべき役員報酬の設計が遅れ、損金化の機会を逸失

書類の不備は法務局が指摘してくれますが、設計のまずさは誰も指摘してくれません。数年後に税金・登記費用・交渉コストとして顕在化します。

設計ミスの実害を金額にすると

抽象的な「リスク」を、起こりがちな3例で金額化してみます。

  • 資本金1,000万円で設立: 設立初年度から消費税の課税事業者になり、免税期間(最大2年)を放棄。年商3,000万円・利益率の高い事業なら、失った免税メリットは2年で数百万円規模になり得ます。さらに均等割の差額が毎年11万円
  • 青色申告承認申請の出し忘れ: 初年度の欠損金500万円が繰り越せず、翌期以降の節税原資約150万円分(実効税率30%)が消滅
  • 事業目的の漏れ: 定款変更の株主総会+変更登記で登録免許税3万円+専門家費用+数週間。許認可の取得スケジュールが後ろ倒しになれば、開業遅延の機会損失も

「自分でやって浮く費用」は最大でも10万円前後。一方、設計ミス1つの実害はその数倍から数十倍——この非対称性が、比較の本質です。

専門家の種類と役割分担

「専門家に頼む」と言っても、設立に関わる士業は役割が分かれています。

専門家 できること 設立での役割
司法書士 登記申請の代理(独占業務) 定款・登記書類の作成と申請代理。設立手続きの本丸
行政書士 定款の作成・認証代行、許認可申請 許認可業種で強み。登記申請の代理は不可
税理士 税務の設計・税務署等への届出・顧問 資本金・決算月・役員報酬・インボイスの設計と設立後の税務一式
社会保険労務士 社会保険・労働保険の手続き 設立後の年金事務所・労基署まわり

実務では、**税理士が窓口となり提携司法書士が登記を担当する「ワンストップ型」**が中小企業の定番です。設立そのものの費用を抑え(または実費同等にし)、顧問契約とセットで設計から面倒を見る形が多く、「設立は安く、設計と税務はプロが見る」という構成になります。

費用と価値の比較表

方法 費用の目安(法定費用除く) 得られるもの 向いている人
完全に自分で(ツール利用) 0〜数千円 書類一式・最安 1人会社・設計がシンプル・時間がある
司法書士に依頼 5万〜10万円程度 確実・迅速な登記 急ぎ・役員株主構成が複雑
税理士経由のワンストップ 設立実費+顧問契約(設立手数料は割引・無料の場合も) 設計の助言+登記+税務届出+顧問 設計に不安・設立後の税務まで任せたい

0円と10万円の差」に見えますが、実際に比べるべきは「20〜30時間の自分の時間+設計ミスのリスク」と「専門家費用」です。創業準備期の20〜30時間は、本来、商品・顧客・資金調達に使うべき時間でもあります。

税理士からのひとこと(監査目線):判断基準を一つに絞るなら、「設立時に決める7項目(商号・目的・資本金・決算月・株主構成・役員・役員報酬の方針)について、自分で根拠を持って決められるか」です。全部「決められる」なら自分でやって構いません。1つでも「よく分からない」があるなら、その1項目の設計ミスがツール利用で浮く数万円を簡単に超えます。なお、弊所のような税理士事務所に設立相談が来た場合も、設計がシンプルで顧問が不要な方には「ツールで自分でやるのが最安です」とお伝えすることがあります。誰に頼むかより、設計の確からしさ——これが唯一の判断軸です。

自分でやる場合の「転ばぬ先」チェックリスト

自力設立を選ぶ方は、申請前に最低限この7点を確認してください。

  • 資本金は1,000万円未満か(消費税・均等割の壁)
  • 決算月は繁忙期を外し、第1期が極端に短くないか
  • 事業目的に許認可に必要な文言が入っているか(許認可窓口に事前確認)
  • 株式は代表に過半数(できれば3分の2)が集まっているか
  • 同一商号・類似商号、商標の問題がないか確認したか
  • 設立後の届出リスト(税務署・自治体・年金事務所)と期限を把握しているか
  • **青色申告承認申請(3か月以内)と役員報酬の決定(3か月以内)**をカレンダーに入れたか

よくある質問(FAQ)

Q. 設立支援ツールは本当に無料ですか? A. 書類作成自体は無料が多く、電子定款の認証手数料等の実費はかかります。会計ソフト等の利用を前提とした導線になっているため、その点を理解して使えば十分に有用です。

Q. 行政書士に設立を頼んでもよいですか? A. 定款作成・許認可は行政書士の領分ですが、登記申請の代理はできません(本人申請の形になります)。許認可業種で行政書士に依頼する場合も、登記は司法書士または本人申請という分担になります。

Q. 税理士に設立を頼むと顧問契約が必須ですか? A. 事務所によります。顧問前提で設立費用を抑えるプランが一般的ですが、設計相談・届出のみのスポット対応を受ける事務所もあります。契約条件は最初に確認してください。

Q. 合同会社なら自分でやっても大丈夫ですか? A. 定款認証が不要なぶん手続きは簡単で、自力設立との相性は良い形態です。ただし合同会社特有の設計論点(持分の相続条項など)があるため、定款の中身は記事「合同会社と株式会社の違い」を確認してから作ってください。

Q. 設立後に設計ミスに気づきました。直せますか? A. 多くは直せますが、コストがかかります(事業目的の変更登記3万円、決算月変更は届出のみ、資本金は減資手続き等)。気づいた時点で放置せず、優先順位をつけて是正してください。

まとめ

  • 書類作成は無料ツールでほぼ解決済み。自力設立の実工数は20〜30時間
  • 難所は書類ではなく設計(資本金・決算月・株式・目的・届出)。設計ミスは数年後にコストとして顕在化する
  • 登記の代理は司法書士の独占業務。中小企業の定番は税理士窓口のワンストップ型
  • 判断軸は「設立時に決める7項目を、根拠を持って自分で決められるか
  • 自力でやるなら、7点チェックリストと設立後90日の届出カレンダーだけは必ず整備する

設立の設計相談は Iroae税理士事務所へ

Iroae税理士事務所では、提携司法書士とのワンストップ設立に加え、「自分で設立する方」向けの設計レビュー(資本金・決算月・株式構成・届出計画の確認)も承っています。手続きは自分で、設計だけプロの目を通す——そんな使い方も歓迎です。

※本記事は2026年時点の一般的な情報をもとに、税理士の監修のもと作成しています。設立手続き・費用・ツールの仕様は変更される場合があります。手続きにあたっては、必ず法務局・各サービスの最新情報をご確認ください。

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