中小企業の設備投資減税【2026年版】少額特例・投資促進税制・経営強化税制を税理士が使い分け解説

中小企業が設備投資をするとき、購入代金を通常より早く・大きく損金にできる、あるいは税額そのものを直接減らせる税優遇が複数用意されています。代表的なものは3つです。

COLUMN法人の節税

中小企業が設備投資をするとき、購入代金を通常より早く・大きく損金にできる、あるいは税額そのものを直接減らせる税優遇が複数用意されています。代表的なものは3つです。

  1. 少額減価償却資産の特例: 30万円未満の資産を年300万円まで全額即損金
  2. 中小企業投資促進税制: 機械等の取得で特別償却30%または税額控除7%
  3. 中小企業経営強化税制: 計画認定が前提で即時償却(100%)または税額控除10%

これらを使えるかどうか、どれを選ぶかで、同じ投資でも当期の税負担が大きく変わります。本記事では、3制度の違いと使い分けを解説します(減価償却の基礎は「減価償却の基礎」を、社用車は「社用車の経費計上」をご覧ください。各制度は適用期限のある時限措置のため、最新の要件は必ず確認してください)。

制度1:少額減価償却資産の特例(最も手軽)

中小企業者等が取得価額30万円未満の減価償却資産を取得した場合、その年に全額を損金にできます(年間合計300万円まで)。

  • パソコン・什器・工具・ソフトウェアなど、対象は幅広い
  • 事前の計画認定など不要で、申告時に明細を添付するだけ
  • 中古資産でもOK
  • ただし償却資産税(固定資産税)の対象になる点は留意

決算前に更新予定の備品をまとめて取得すれば、年300万円まで一気に損金化できる、最も手軽で使い勝手のよい制度です。

制度2:中小企業投資促進税制(計画認定不要)

中小企業者等が、一定の**機械・装置(160万円以上)、測定工具・検査工具、ソフトウェア(70万円以上)、貨物自動車(車両総重量3.5トン以上)**などを取得し事業に使った場合、次のいずれかを選べます。

  • 特別償却 30%: 通常の減価償却に加えて、取得価額の30%を初年度に上乗せ償却
  • 税額控除 7%: 取得価額の7%を法人税額から直接控除(資本金3,000万円以下の法人等。控除は法人税額の20%が上限、超過分は1年繰越)

事前の計画認定が不要で使いやすいのが特徴です。普通乗用車・パソコン単体などは対象外で、生産・サービス提供に使う設備が中心です。

制度3:中小企業経営強化税制(最も効果が大きい)

経営力向上計画の認定を受けた中小企業者等が、認定計画に基づいて一定の設備を取得した場合、次のいずれかを選べます。

  • 即時償却(取得価額の100%を初年度に損金): その年に全額を経費化できる
  • 税額控除 10%(資本金3,000万円超は7%): 取得価額の10%を税額から直接控除

効果が最も大きい制度ですが、取得前に経営力向上計画の認定を受ける必要があるため、駆け込みでは使えません。計画の作成・申請・認定に時間がかかるため、設備投資の構想段階から準備が必要です。対象設備には生産性向上・収益力強化などの類型と、工業会の証明書や経済産業局の確認などの要件があります。

即時償却と税額控除、どちらを選ぶべきか

経営強化税制で迷うのが「即時償却」と「税額控除」の選択です。

項目 即時償却 税額控除
効果の性質 課税の繰延(早く損金にするだけ) 税額の純減(トータルの税負担が減る)
当期の効果 取得価額全額が損金で大きい 取得価額の10%が税額控除
長期の総額 償却の前倒しで、総損金は同じ 控除分だけ得(償却も通常どおり)
向いている会社 当期に大きな利益・損金がほしい会社 長期で確実に税負担を減らしたい会社

ポイントは、**即時償却は「繰延」、税額控除は「純減」**ということです。即時償却は当期の損金を増やしますが、翌年以降の償却がなくなるため、トータルの損金額は変わりません。一方、税額控除は通常の償却に加えて税額が直接減るため、長期では税額控除のほうが得になることが多い——というのが実務の定石です。当期に突出した利益があり今期の損金がどうしても必要、という場合に即時償却を選びます。

税理士からのひとこと(監査目線):設備投資減税で最も多い「もったいない」は、①制度を知らずに通常償却しただけ、②経営強化税制を使えたのに、認定が間に合わず投資促進税制にとどまった、の2つです。経営力向上計画の認定は取得前が原則のため、設備投資の話が出た瞬間に「認定を取れるか」を検討するのが鉄則です。そして即時償却か税額控除かは、「黒字が続く会社なら税額控除(純減)」が基本。即時償却の見た目の大きさに引っ張られず、5年の総額で比較してください。なお、補助金とこれらの税制は併用できる場合がありますが、補助金で取得した資産は圧縮記帳との関係も整理が必要です。投資の前に、補助金・税制・償却方法をまとめて設計するのが、効果を最大化する唯一の方法です。

数値例:500万円の機械を経営強化税制で取得

利益が出ている中小法人(実効税率約34%・法人税額に十分な余裕あり)が、500万円の機械を経営強化税制で取得した場合を比較します。

即時償却を選んだ場合

  • 当期に500万円を全額損金 → 当期の税負担が 約170万円減少
  • ただし翌年以降の減価償却はゼロ。トータルの損金は500万円で変わらず(=課税の繰延)

税額控除10%を選んだ場合

  • 通常どおり減価償却(数年かけて500万円を損金化)に加え、50万円を税額から直接控除
  • 当期の損金は償却費分のみだが、税額が50万円純減し、それが取り戻されることはない

黒字が続く前提なら、長期では税額控除のほうが約50万円分得になります。一方、「当期だけ突出した利益が出て、今期の損金をどうしても増やしたい」局面では即時償却の即効性が勝ちます。自社の利益が一過性か継続的かで選ぶのが基本です。

制度の選び方フローチャート

  1. 取得価額30万円未満少額特例で全額損金(年300万円まで)
  2. 30万円以上で、経営力向上計画の認定を取得前に取れる経営強化税制(即時償却 or 税額控除10%)
  3. 認定が間に合わない・対象設備が経営強化税制に該当しない → 投資促進税制(特別償却30% or 税額控除7%)
  4. いずれも該当しない → 通常の減価償却

よくある質問(FAQ)

Q. これらの制度は併用できますか? A. 同一の資産に複数の特別償却・税額控除を重ねて適用することはできません(有利なものを1つ選択)。ただし、別々の資産にそれぞれ別の制度を使うことは可能です。

Q. 中古設備でも使えますか? A. 少額特例は中古でも使えますが、投資促進税制・経営強化税制は**原則として新品(新規取得)**が対象です。中古は通常の減価償却(耐用年数の短縮あり)になります。

Q. 税額控除を使いたいのですが赤字です。 A. 税額控除は法人税額から控除するため、赤字(税額ゼロ)の年は効果が出ません(1年の繰越制度があります)。赤字見込みの年は即時償却・特別償却(損金が増え欠損金が積み上がる)のほうが意味を持つ場合があります。

Q. 経営力向上計画の認定はどれくらいかかりますか? A. 計画の作成と審査で数週間〜1か月以上かかるのが通常です。設備取得の前に認定を受ける必要があるため、投資の構想段階から準備してください。

Q. ソフトウェアも対象になりますか? A. 一定の要件を満たすソフトウェアは投資促進税制・経営強化税制の対象になり得ます(70万円以上等)。自社利用ソフトの開発・導入を予定しているなら、適用可否を確認する価値があります。

まとめ

  • 中小企業の設備投資減税は「少額特例(30万円未満・年300万円まで全額)・投資促進税制(特償30%/控除7%)・経営強化税制(即時償却/控除10%)」の3本柱
  • 効果が最大なのは経営強化税制だが、取得前の計画認定が必須。駆け込みでは使えない
  • 即時償却は「繰延」、税額控除は「純減」。黒字が続く会社は税額控除が長期で得なことが多い
  • 選び方は「30万円未満→少額特例/認定が取れる→経営強化税制/取れない→投資促進税制」
  • 補助金・税制・償却方法は投資の前にまとめて設計するのが効果最大化の鍵

設備投資の税制活用は Iroae税理士事務所へ

Iroae税理士事務所では、設備投資の税優遇の適用可否判定、経営力向上計画の認定支援、即時償却と税額控除の有利比較、補助金との併用設計まで、投資の意思決定段階からご支援しています。「この設備、どの制度が使えていくら得か」を、購入前にお答えします。

※本記事は2026年時点の制度をもとに、税理士の監修のもと作成しています。各制度は適用期限のある時限措置で、対象設備・要件・控除率は税制改正により変わります。適用にあたっては、必ず中小企業庁・国税庁の最新情報をご確認いただくか、税理士にご相談ください。

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