「合同会社を作りたいけれど、司法書士に頼むと費用が高そう」「freeeやマネーフォワードの会社設立サービスって、実際どこまで自分でできるの?」——法人成りや独立のタイミングで、このような疑問を持つ方は少なくありません。
かつて会社設立は専門家に丸ごと代行を依頼するのが一般的でしたが、現在ではクラウド会計ソフト各社が提供する会社設立支援サービスを使えば、必要書類の作成から電子定款の準備までを画面の案内に沿って進められるようになりました。とくに合同会社は手続きがシンプルで設立費用も安く、小規模事業やひとり社長との相性が良い法人形態です。
一方で、2023年10月開始のインボイス制度、2024年1月から本格化した電子帳簿保存法の電子取引データ保存義務など、設立時に押さえておくべき税務上の論点も増えています。この記事では、Iroae税理士事務所が、合同会社の設立費用・手続きの流れ・クラウド会計各社の設立サービス・設立後の税務までを、税理士の実務目線でまとめて解説します。
合同会社とは|株式会社との違いと向いている人
合同会社(LLC)は、2006年の会社法施行で導入された比較的新しい法人形態です。出資者がそのまま経営に関わる点が特徴で、出資者のことを「社員」、そのうち業務を執行する人を「業務執行社員」、会社を代表する人を「代表社員」と呼びます。ここでいう「社員」は従業員ではなく出資者である点に注意してください。
合同会社の主なメリットは次のとおりです。
- 設立費用が株式会社より安い:登録免許税が最低6万円(株式会社は最低15万円)で済み、後述のとおり定款認証も不要です。
- 決算公告の義務がない:株式会社のような官報掲載などの公告コストがかかりません。
- 役員の任期がない:株式会社のように任期ごとの役員変更登記(再任登記)が不要で、ランニングコストを抑えられます。
- 定款自治が広い:利益(剰余金)の配分を出資比率と切り離して柔軟に決められるなど、内部ルールを定款で自由に設計できます。
- 税制面の扱いは株式会社と同じ:法人税の計算や各種優遇制度の適用は株式会社と変わらず、法人化のメリットを同じように受けられます。
一方で、合同会社は株式上場ができない、株式会社に比べて社会的な知名度・信用度の面で見劣りする場面がある、出資者間で意見が割れると意思決定が滞りやすい、といったデメリットもあります。事業拡大とともに将来は株式会社へ組織変更することも可能なので、まずは合同会社で低コストに始め、必要に応じて移行するという選択肢も実務上よく採られます。
向いているのは、ひとり社長や少人数で始める方、対個人向けのサービス業・店舗・フリーランスからの法人成りなど、上場や大規模な外部資金調達を当面想定しない事業です。
合同会社の設立費用|株式会社との差額を具体額で
設立時にかかる法定費用を、株式会社と比較すると以下のようになります(2026年5月時点の一般的な目安)。
| 項目 | 合同会社 | 株式会社 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 6万円(資本金×0.7%が6万円超ならその額) | 15万円(資本金×0.7%が15万円超ならその額) |
| 定款認証手数料(公証人) | 不要(0円) | 資本金の額に応じて1.5万〜5万円程度 |
| 定款の収入印紙代 | 紙定款は4万円/電子定款は0円 | 紙定款は4万円/電子定款は0円 |
| 合計(電子定款の場合) | おおむね6万円〜 | おおむね18万円〜 |
ポイントは2つあります。
1つ目は、合同会社は定款認証が不要であること。株式会社は公証役場で定款の認証を受ける必要があり手数料がかかりますが、合同会社にはこの手続き自体がありません。
2つ目は、電子定款にすれば収入印紙代の4万円が不要になること。紙で定款を作成すると印紙税として4万円分の収入印紙が必要ですが、電子定款(PDFで作成し電子署名する方式)なら印紙税がかかりません。後述するクラウド会計各社の設立サービスは、この電子定款に対応しているため、自分で電子署名環境を用意しなくても印紙代を節約しやすくなっています。
なお、上記は法定費用であり、これとは別に資本金(1円から設定可能ですが、当面の運転資金や対外的な信用を考えて現実的な額にするのが一般的)、会社の実印作成費用、登記後の印鑑証明書・登記事項証明書の取得費用などがかかります。最新の手数料は法務局や公証役場の公式情報でご確認ください。
合同会社設立の手続きの流れ
合同会社の設立は、大きく次のステップで進みます。株式会社より工程が少なく、書類もシンプルです。
1. 会社の基本事項を決める
商号(会社名)、本店所在地、事業目的、資本金の額、社員(出資者)の構成、代表社員・業務執行社員、事業年度などを決めます。会社名に使える文字や、同一住所・同一商号の制限などのルールがあるため、事前確認が必要です。
2. 定款を作成する
基本事項をもとに定款を作成します。合同会社は公証人による認証が不要なため、内容が固まればそのまま設立登記に進めます。電子定款にすれば印紙代を節約できます。
3. 出資金を払い込む
代表社員などの個人口座に、決めた資本金を払い込みます。法人口座は設立登記後でないと作れないため、まず個人口座を使い、通帳のコピーなどで払込証明書類を準備します。
4. 設立登記を申請する
本店所在地を管轄する法務局に、登記申請書・定款・払込証明・代表社員の印鑑証明書などをそろえて申請します。この登記申請日が会社の設立日になります。オンライン申請にも対応しています。
5. 設立後の各種届出を行う
登記完了後、税務署・都道府県・市区町村への法人設立届出書、青色申告の承認申請書、給与支払事務所等の開設届出書、年金事務所への社会保険関係の手続きなどを行います。提出期限が定められているものが多いので、設立直後のスケジュール管理が重要です。
クラウド会計各社の会社設立支援サービス
freee・マネーフォワード・弥生の各社は、画面の質問に答えていくだけで設立書類を作成できる会社設立支援サービスを提供しています。いずれも電子定款に対応しており、紙定款の印紙代4万円を抑えられる点が共通の強みです。
| サービス | 提供元 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| freee会社設立 | freee株式会社 | 質問に答える形式で書類を自動作成。電子定款に対応。freee会計とそのまま連携でき、設立後の記帳・申告まで一気通貫で進めやすい。 |
| マネーフォワード クラウド会社設立 | 株式会社マネーフォワード | 必要事項を入力して書類を作成。電子定款に対応。マネーフォワード クラウド会計・確定申告と連携し、設立後の経理を効率化できる。 |
| 弥生のかんたん会社設立 | 弥生株式会社 | 案内に沿って設立書類を作成。電子定款に対応。弥生会計オンライン・やよいの青色申告 オンラインとの連携で設立後の会計に移行しやすい。 |
各サービスは、書類作成自体の利用料を無料〜低額に設定していることが多い一方、電子定款の電子署名手続きを専門家が代行する部分などで実費がかかる場合があります。料金体系・対応範囲・キャンペーンは時期により変わるため、申込み前に各社公式サイトで最新の内容をご確認ください。
これらのサービスの大きな利点は、設立サービスと会計ソフトが地続きになっていることです。設立した会社情報をそのまま会計ソフトへ引き継げるため、登記後すぐに日々の記帳・請求書発行・決算準備に取りかかれます。
設立時に必ず確認したいインボイス制度
合同会社の設立で、近年もっとも判断に迷うのがインボイス制度(適格請求書等保存方式)への対応です。
法人を新しく設立した場合、原則として設立から一定期間は消費税の免税事業者となり得ます。しかし、取引先が課税事業者で、こちらの発行する請求書を仕入税額控除に使いたい場合、適格請求書(インボイス)を発行できる「適格請求書発行事業者」になっているかが取引継続のうえで重要になります。
ここで、設立直後の会社には次の選択肢があります。
- 免税事業者のままでいく:自社が消費税を納める必要はありませんが、インボイスを発行できないため、課税事業者の取引先から取引条件の見直しを求められる可能性があります。対個人(消費者)中心のビジネスでは影響が小さいことが多いです。
- あえて課税事業者となり適格請求書発行事業者に登録する:取引先にインボイスを発行できますが、自社で消費税の申告・納付が必要になります。対法人取引が中心の事業では、この選択が現実的なケースが多くあります。
課税事業者を選ぶ場合、納税額の負担を軽くする経過措置として「2割特例」(売上にかかる消費税の2割を納税額とできる簡便計算)の適用可否も検討材料になります。適用には期間や要件の条件があるため、自社が対象になるかは個別の確認が必要です。
どちらを選ぶかは、取引先の構成・事業の規模・将来の売上見込みによって最適解が変わります。設立時点の判断が設立後の資金繰りに直結するため、登記前の早い段階で税理士に相談しておくことを強くおすすめします。制度の詳細・登録手続きは国税庁のインボイス制度特設サイトでも確認できます。
電子帳簿保存法への対応とクラウド会計
もう一つ、設立時から意識しておきたいのが電子帳簿保存法です。電子取引データの電子保存は2022年1月に施行され、2023年12月末までの宥恕措置を経て、2024年1月から本格適用となりました。これにより、電子取引(メールやWeb上でやり取りした請求書・領収書などのデータ)は、原則としてデータのまま保存することとされています。紙に印刷して保存するだけでは要件を満たさない取引が出てくるため、新設法人も最初から電子保存に対応した体制を整えておくと安心です。なお、所轄税務署長が相当の理由があると認め、税務調査等の際にデータのダウンロードの求めと出力書面の提示・提出に応じられる場合は、検索要件等にかかわらず電子データを保存できる猶予措置も設けられています。
電子保存では、改ざん防止の措置(タイムスタンプの付与や訂正・削除の履歴が残る運用など)や、日付・金額・取引先で検索できる状態にしておくことなどの要件が求められます。これらの要件は、紙とエクセルだけで自前管理しようとすると相当な手間になります。
そこで有効なのがクラウド会計ソフトの活用です。freee会計・マネーフォワード クラウド・弥生会計オンラインなどは、電子取引データの保存要件に対応した機能を備えており、設立サービスから会計ソフトへそのまま移行すれば、設立初日から電子帳簿保存法に沿った形で記帳・保存をスタートできます。設立後に運用を作り直す手戻りを避ける意味でも、最初から電子保存を前提に環境を整えておくのが得策です。なお、具体的な保存要件は国税庁の公式情報で最新の内容をご確認ください。
合同会社ならではの実務上の注意点
最後に、合同会社で設立する場合に実務でつまずきやすいポイントを挙げておきます。
- 社員(出資者)が複数いる場合の取り決め:合同会社は定款自治が広い分、利益配分・業務執行の権限・社員の加入や脱退のルールなどを定款でしっかり定めておかないと、後々トラブルになりやすくなります。出資比率と利益配分を分けたい場合は、その旨を明確に定款へ記載しておくことが大切です。
- 代表社員と業務執行社員の整理:誰が会社を代表し、誰が日常の業務を執行するのかを明確にしておきます。
- 社会保険の加入:法人は、社長一人であっても社会保険(健康保険・厚生年金)への加入が原則必要です。設立後すみやかに手続きを行います。
- 将来の株式会社化:事業が成長して外部資金調達や上場を視野に入れる段階になれば、合同会社から株式会社へ組織変更する経路があります。最初は合同会社で低コストに始め、必要になったタイミングで移行する設計も実務上は有効です。
これらは、いずれも設立後の税務・労務・資金繰りに直結します。ツールで書類を作るところは簡単になりましたが、「自社にとってどの選択が最適か」という判断こそ、専門家に相談する価値が大きい部分です。
まとめ
合同会社は、登録免許税6万円・定款認証不要・電子定款なら印紙代も不要と、株式会社より低コストで設立できる法人形態です。freee・マネーフォワード・弥生の会社設立支援サービスを使えば、書類作成から電子定款の準備までを効率的に進められ、そのまま会計ソフトへ移行して設立後の経理・電子帳簿保存・申告までスムーズにつなげられます。
ただし、インボイス制度で課税事業者になるかどうか、2割特例の適用可否、電子帳簿保存法に沿った運用づくり、合同会社特有の定款設計など、設立時の判断が設立後の負担を大きく左右する論点が数多くあります。ツールが便利になった今だからこそ、「どう設定するのが自社にとって有利か」を最初に詰めておくことが重要です。
Iroae税理士事務所では、合同会社・株式会社の設立、個人事業主からの法人成り、クラウド会計の導入・運用に関するご相談を承っております。設立形態の選び方、インボイス・電子帳簿保存法への対応、設立後の記帳・申告までワンストップでサポートいたします。会社設立をご検討の方は、ぜひお気軽にオンライン無料相談をご利用ください。
※本記事の費用・税制・制度の内容は2026年5月時点の一般的な情報です。登録免許税・各種手数料・インボイス制度・電子帳簿保存法の最新かつ正確な要件は、法務局・公証役場・国税庁などの公式情報をご確認のうえ、個別の判断は税理士にご相談ください。