法人と個人事業の税金の違い【2026年版】税率・経費・社会保険を税理士が徹底比較

法人と個人事業は、同じ事業をしていても税金の仕組みがまったく違います。所得にかかる税率、経費にできる範囲、社会保険、赤字の扱い——あらゆる面で差があり、それが「どちらが得か」の判断を難しくしています。

COLUMN会社設立・法人化

法人と個人事業は、同じ事業をしていても税金の仕組みがまったく違います。所得にかかる税率、経費にできる範囲、社会保険、赤字の扱い——あらゆる面で差があり、それが「どちらが得か」の判断を難しくしています。

結論を先に言えば、所得が小さいうちは個人事業がシンプルで有利、所得が大きくなると法人のほうが税率・設計の面で有利になります。本記事では、両者の税金の違いを項目別に比較します(法人化の損得判断は「個人事業主が法人化する年収の目安」をご覧ください)。

比較表:法人と個人事業の税金の違い

項目 個人事業 法人
所得への税金 所得税5〜45%(累進)+住民税約10% 法人税等 実効約23〜34%
税率の性質 累進(所得が増えるほど高い) 比例的(一定で頭打ち)
自分への給与 なし(利益=自分の所得) 役員報酬(給与所得控除あり)
給与所得控除 なし あり(最大195万円)
所得分散 専従者給与(要件あり) 家族を役員にして分散しやすい
経費の範囲 事業関連費 役員社宅・出張日当・退職金など幅が広い
社会保険 国保・国民年金 健保・厚生年金(強制加入・労使折半)
赤字の繰越 3年(青色) 10年
赤字時の負担 ほぼなし 住民税均等割 年7万円〜
消費税 同じ枠組み(免税判定は別人格でリセット) 設立当初最大2年免税の可能性
事務負担・コスト 軽い(確定申告) 重い(決算・申告・社保。税理士費用も)
退職金(自分へ) 不可 可(退職所得課税で有利)
信用 弱い 強い

税率の違い:累進 対 比例

最大の違いは税率の構造です。

  • 個人事業: 所得税は累進で、所得が増えるほど税率が上がる(課税所得900万円超で所得税33%+住民税10%=43%、1,800万円超で50%、4,000万円超で55%)
  • 法人: 実効税率は約23〜34%でほぼ頭打ち

所得が小さいうちは個人の累進税率が低く有利ですが、所得が大きくなると法人の比例的な税率のほうが低くなります。この逆転が起きる分岐点が、おおむね所得800万円前後です。

経費・所得分散の違い:法人のほうが手段が多い

  • 給与所得控除: 法人なら役員報酬に給与所得控除(最大195万円)が付き、課税対象が圧縮される。個人事業の事業所得にはない
  • 役員社宅・出張日当・退職金: 法人なら規程整備で経費化できる範囲が広い(個人事業にはない、または限定的)
  • 所得分散: 法人は家族を役員にして報酬を分け、世帯で累進を下げやすい
  • 経営セーフティ共済: 個人事業でも使えるが、法人のほうが活用の幅が広い

法人は「お金の受け取り方・残し方」の設計の自由度が高く、これが所得が大きい場合の有利性につながります。

社会保険の違い:法人は強制加入で負担増

  • 個人事業: 国民健康保険・国民年金(所得に応じて国保料が増えるが上限あり)
  • 法人: 健康保険・厚生年金に強制加入(社長1人でも)。労使合計で報酬の約30%

法人化で社会保険料の負担が増えるのが、「法人化したのに手取りが増えない」最大の原因です。一方、厚生年金は将来の年金が国民年金より手厚く、健康保険の扶養も使えるという面もあります(「役員報酬と社会保険の最適化」参照)。

数値イメージ:所得別の負担の差

同じ事業所得でも、個人と法人で負担がどう変わるかのイメージです(単身・概算・社会保険料を含む大まかな傾向)。

事業所得 個人事業(所得税+住民税+国保等) 法人化(法人税+個人の税・社保+維持コスト) 傾向
400万円 比較的軽い 維持コスト・社保で割高になりやすい 個人有利
700万円 累進が効き始める 拮抗 ほぼ互角
1,000万円 累進+国保上限で重い 設計次第で軽くできる 法人有利
1,500万円 高い累進税率 法人留保・退職金で分散 法人有利

所得が小さいうちは個人事業のシンプルさと軽い負担が勝ち、大きくなると法人の税率の頭打ち・所得分散・退職金が勝つ——この傾向がはっきり出ます。ただし、これは社会保険・維持コスト・設計(社宅・共済)まで含めた総合の話で、税率表だけでは判断できません。自分の所得・家族構成での実額シミュレーションが必須です。

赤字・消費税の違い

  • 赤字の繰越: 個人(青色)3年に対し、法人は10年。法人のほうが赤字を将来の黒字と相殺できる期間が長い
  • 赤字時の負担: 法人は赤字でも住民税均等割(年7万円〜)がかかる。個人事業はほぼなし
  • 消費税: 個人事業の課税売上の実績は法人に引き継がれないため、法人化で免税判定がリセットされ、設立当初最大2年免税の可能性(「法人化で消費税が2年免除される仕組み」参照)

税理士からのひとこと(監査目線):「法人と個人、どっちが得か」は一律には決まりません。判断軸は所得の大きさ、家族構成、社会保険、事業の信用ニーズ、将来の退職金・承継——これらの総合です。ざっくりした目安では、所得が安定して800万円を超えてきたら法人化の検討開始、900万〜1,000万円なら多くの場合法人有利です。ただし、これは税金だけの話。法人には決算・申告・社保という事務負担と、税理士費用・均等割という固定費が加わります。「税金は安くなるが手間とコストが増える」のが法人化です。逆に、所得が小さいうちは個人事業のシンプルさ(確定申告だけ)が大きな価値です。私たちは、確定申告書をもとに「個人継続」と「法人化」の手取りを社会保険料・維持コスト込みで比較し、数字と手間の両面でご提案しています。「なんとなく法人」も「なんとなく個人のまま」も避け、自分の数字で判断してください。

よくある質問(FAQ)

Q. 法人と個人事業、結局どちらが得ですか? A. 所得が小さいうちは個人事業(シンプル・低い累進・社保が軽い)、所得が大きくなると法人(税率の頭打ち・給与所得控除・所得分散・退職金)が有利です。分岐点は所得800万円前後が目安です。

Q. 法人化すると必ず節税になりますか? A. なりません。社会保険料の増加・維持コスト(均等割・税理士費用)があるため、所得が小さいと法人化でかえって負担が増えることもあります。実額シミュレーションでの判断が必要です。

Q. 個人事業の経費と法人の経費、どちらが広いですか? A. 法人のほうが広い傾向です。役員社宅・出張日当・自分への退職金など、個人事業にはない(または限定的な)経費化手段があります。

Q. 消費税は法人のほうが得ですか? A. 法人化で免税判定がリセットされ、設立当初最大2年免税の可能性があります(資本金1,000万円未満等)。ただしインボイス登録をすれば免税は使えません。取引構造によります。

Q. 途中で個人事業から法人に変えられますか? A. 法人成り(法人化)はいつでも可能です。資産・契約の引き継ぎ、個人事業の廃業など手続きがあります(「法人成りの手続きと順番」参照)。逆に法人から個人に戻すのは解散・清算のコストがかかります。

まとめ

  • 法人と個人事業は税金の仕組みがまったく違う。税率・経費・社会保険・赤字繰越・消費税・事務負担すべてに差
  • 税率は個人=累進(最大55%)、法人=比例的(約23〜34%)。逆転の分岐は所得800万円前後
  • 法人は給与所得控除・社宅・退職金・所得分散など設計の手段が多いが、社保強制加入・均等割・事務負担が増える
  • 所得が小さいうちは個人事業のシンプルさが、大きくなると法人の税率と設計が有利
  • 「どっちが得か」は所得・家族・社保・将来設計の総合。自分の数字でのシミュレーションで判断する

法人と個人事業の比較シミュレーションは Iroae税理士事務所へ

Iroae税理士事務所では、確定申告書をもとに「個人継続」と「法人化」の手取り比較(税金・社会保険料・維持コスト込み)、法人化の最適タイミング、法人成りの実行までご支援しています。「法人化すべきか」を、印象ではなく御社の数字で判断しましょう。

※本記事は2026年時点の制度をもとに、税理士の監修のもと作成しています。税率・社会保険料率は改正により変わります。判断にあたっては、必ず実額シミュレーションを行うか、税理士にご相談ください。

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