「クラウド会計を入れたいけれど、今の税理士は紙とExcelのままで話がかみ合わない」「クラウド会計に詳しい税理士に顧問を切り替えたいが、料金や進め方がわからない」——こうしたお悩みをよくお聞きします。
インボイス制度(2023年10月開始)や電子帳簿保存法の改正(電子取引データの電子保存が2022年1月施行・2024年1月から本格適用。一定の要件を満たす場合の猶予措置あり)により、経理まわりの作業は確実に増えました。こうした制度変更に振り回されず、むしろ自動化・効率化していくうえで、クラウド会計とそれに対応した税理士顧問の組み合わせは非常に相性が良いものです。
この記事では、税理士の実務の視点から、クラウド会計で顧問を依頼するメリット、従来型の顧問との違い、料金相場、対応税理士の選び方、導入の流れまでを整理して解説します。
そもそも税務顧問とは何をしてくれるのか
まず前提として、税務顧問(顧問税理士)の主な役割を確認しておきます。一般的に、顧問税理士の業務は次のようなものです。
- 税務相談:日々の取引の処理方法、節税の可否、消費税や所得税・法人税の取り扱いなどの相談対応
- 申告・申請の代理:法人税・所得税・消費税の確定申告、年末調整、各種届出書の作成・提出
- 税務書類の作成:決算書、申告書、内訳書などの作成
- これらに付随するサポート:記帳代行、月次の業績報告、資金繰りや経営に関するアドバイス、融資・資金調達の支援 など
このうち「申告・申請の代理」「税務書類の作成」「税務相談(税務代理に付随するもの)」は税理士の独占業務であり、税理士でなければ行えません。クラウド会計を導入しても、最終的な申告の責任を担い、税法上の判断を行うのは税理士です。だからこそ、クラウド会計に強い税理士と顧問契約を結ぶ意味があります。
クラウド会計を使った税務顧問が広がっている背景
クラウド会計とは、freee会計・マネーフォワードクラウド・弥生会計オンラインに代表される、インターネット上で利用する会計ソフトの総称です。従来のインストール型ソフトと異なり、次のような特徴があります。
- 銀行口座・クレジットカード・電子マネー・決済サービスと連携し、取引データを自動で取り込める
- 取り込んだデータから仕訳を自動で提案してくれる(学習機能あり)
- 経営者と税理士が同じデータをリアルタイムで共有できる
- パソコンだけでなくスマートフォンからも確認・操作できる
この「経営者と税理士がクラウド上で同じ帳簿を見る」という仕組みが、税務顧問のかたちを大きく変えました。以前は、領収書や通帳のコピーを郵送したり、Excelの試算表をメールでやりとりしたりしていた作業の多くが不要になり、データの送受信の手間が大幅に減ります。
その結果、税理士は記帳や転記といった作業時間を圧縮でき、空いた時間を経営アドバイスや資金繰りの相談など、本来事業者が求めている「価値のある時間」に振り向けやすくなります。顧問料の面でも、効率化が進んだぶん、従来より抑えた料金で提供しやすくなっているのが実情です。
クラウド会計で税理士に顧問を頼む5つのメリット
1. 経理の手間が減り、本業に集中できる
口座やカードの自動連携により、入力作業そのものが大きく減ります。レシートはスマホで撮影して取り込む運用も可能です。経理担当者がいない、あるいは社長が自分で経理を回している小規模事業者ほど、この恩恵は大きくなります。
2. 数字をリアルタイムで把握できる
月末を待たなくても、現時点の売上・経費・利益の概況をいつでも確認できます。経営者がスマホの隙間時間に自社の数字を見られることで、「気づいたら赤字だった」「資金がショートしそうだと直前まで気づかなかった」といった事態を防ぎやすくなります。
3. インボイス制度・電子帳簿保存法への対応がしやすい
クラウド会計は、制度改正に合わせてシステム側がアップデートされていきます。
- インボイス制度:適格請求書(インボイス)かどうか、登録番号があるかどうかを踏まえた消費税の処理を、ソフトの機能で整理しやすくなっています。
- 電子帳簿保存法:メールやインターネットで受け取った請求書・領収書などの電子取引データは、原則として電子のまま保存することが義務づけられています。クラウド会計や連携ストレージを使えば、要件(日付・金額・取引先などで検索できる状態にする等)に沿った保存をしやすくなります。
これらは自社だけで正確に対応しようとすると負担が大きい領域です。クラウド会計に詳しい税理士と組むことで、自社の運用に落とし込んだ形で対応を進められます。
4. 税理士とのやりとりがスムーズになる
同じ画面を見ながら相談できるため、「この取引はどう処理すべきか」といった確認が早く済みます。資料の郵送やファイルの再送信といった往復が減り、意思決定のスピードが上がります。
5. 顧問料を抑えやすい
前述のとおり、作業の自動化・効率化が進むため、記帳代行を含むフルサポートでも、従来型より抑えた料金体系を組みやすくなっています。
従来型の顧問と何が違うのか
ざっくり整理すると、次のような違いがあります。
| 項目 | 従来型の顧問 | クラウド会計を使った顧問 |
|---|---|---|
| 帳簿の入力 | 手入力・記帳代行が中心 | 口座・カード連携で自動取得+自動仕訳提案 |
| 資料のやりとり | 郵送・持参・メール添付 | クラウド上で共有(送受信の手間が少ない) |
| 数字の確認 | 月次の試算表を受け取って確認 | リアルタイムで随時確認 |
| 場所の制約 | 事務所のソフトに依存 | スマホ・PCどこからでも |
| 税理士の時間配分 | 入力・転記に時間を取られがち | 経営・資金繰りの相談に時間を使いやすい |
ポイントは、クラウド会計にすれば作業が減るぶん、税理士に「相談・アドバイス」をより多く求められるという点です。ツールを入れること自体が目的ではなく、空いた時間で経営の意思決定を支えてもらうことに本当の価値があります。
主要クラウド会計ソフトの比較
代表的な3つのソフトの特徴を整理します。料金プランは改定されることがあるため、契約前に各社の公式サイトで最新の内容をご確認ください。
| ソフト | 特徴 | 向いている事業者の例 |
|---|---|---|
| freee会計 | 簿記の知識が浅くても使いやすいUI。○×形式の質問に答える形で経理を進められる。 | 経理担当がいない小規模事業者・スタートアップ |
| マネーフォワードクラウド | 会計だけでなく請求書・経費精算・給与・勤怠など周辺サービスとの連携が幅広い。 | バックオフィス全体を一括で整えたい成長企業 |
| 弥生会計オンライン | 会計ソフトとして長い実績があり、従来の弥生会計からの移行もしやすい。 | これまで弥生製品を使ってきた事業者 |
どのソフトにも一長一短があり、業種・規模・既存の業務フロー・予算によって最適解は変わります。税理士によって対応ソフトや得意なソフトが異なるため、「自社が使いたいソフトに対応しているか」は顧問選びの大切な確認事項です。
クラウド会計に対応した税理士の選び方
クラウド会計顧問を選ぶ際は、次の点を確認するとミスマッチを防げます。
- 使いたいソフトに対応しているか:freee会計・マネーフォワードクラウド・弥生会計オンラインなど、希望するソフトでの顧問実績があるか。
- オンラインでのやりとりに慣れているか:チャットやWeb会議、クラウド上での資料共有にスムーズに対応できるか。
- インボイス・電子帳簿保存法への対応方針が明確か:自社の取引に合わせて、保存方法や消費税処理をどう運用するか説明してくれるか。
- 料金体系が明確か:顧問料に何が含まれるのか(記帳代行の有無、決算料、相談回数など)がはっきりしているか。
- 自社の業種・規模の経験があるか:同じ規模・業種のサポート経験があると、論点を踏まえた助言を受けやすくなります。
「ソフトを入れれば誰でも同じ」ではありません。制度対応や経営判断のサポートには税理士の関与が欠かせないため、ツールと人の両面で相性を見ることが重要です。
クラウド会計顧問の料金相場の考え方
顧問料は、事業規模(年商)、取引の件数、依頼する業務範囲(記帳代行を含むか、相談中心か)、訪問の有無などによって変わります。一般論として、
- 取引量が少なく相談中心であれば比較的抑えられる
- 記帳代行までフルで任せる、取引件数が多い、という場合は相応に上がる
- 決算・申告料は月額顧問料とは別に設定されていることが多い
といった傾向があります。クラウド会計で自動連携が進むと記帳の手間が減るため、同じ業務範囲でも従来型より料金を抑えやすくなるケースがあります。具体的な金額は事業者ごとに異なるため、見積もりの際は「何にいくらかかるのか」の内訳を必ず確認しましょう。
クラウド会計顧問の導入の流れ
実際の導入は、おおむね次のような流れで進みます。
- 無料相談・ヒアリング:現状の経理体制、使いたいソフト、悩みを共有する
- ソフトと業務範囲の決定:自社に合うソフトと、記帳代行の有無などの依頼範囲を決める
- 初期設定・連携:口座・カード等の連携、勘定科目の設定、過去データの取り込み
- 運用ルールの確認:領収書の取り込み方法、電子取引データの保存ルールなどを決める
- 月次運用の開始:日々の取引が自動で取り込まれ、月次で税理士が確認・報告
- 決算・申告:年に一度、決算書・申告書を作成して提出
最初の設定さえ整えてしまえば、日々の運用はぐっと楽になります。設定や移行でつまずきやすいポイントこそ、クラウド会計に慣れた税理士のサポートが活きる場面です。
まとめ
クラウド会計と、それに対応した税理士顧問を組み合わせることで、
- 経理の入力作業を自動化し、本業に集中できる
- 自社の数字をリアルタイムで把握できる
- インボイス制度・電子帳簿保存法への対応を進めやすい
- 効率化により顧問料を抑えやすい
といったメリットが期待できます。一方で、ソフトを導入すれば終わりというわけではなく、制度対応や経営判断のサポートには税理士の関与が欠かせません。だからこそ、「使いたいソフトに対応し、オンラインでのやりとりや最新制度への対応に強い税理士」を選ぶことが大切です。
なお、税制や各ソフトの料金・機能は改定されることがあります。最新の制度内容は国税庁、ソフトの料金・仕様は各社の公式サイトでご確認のうえ、判断に迷う点は税理士にご相談ください。
クラウド会計の導入・顧問のご相談はIroae税理士事務所へ
Iroae税理士事務所では、freee会計・マネーフォワードクラウド・弥生会計オンラインといったクラウド会計に対応した税務顧問サービスをご提供しています。インボイス制度や電子帳簿保存法への対応、ソフトの初期設定・移行から、月次の業績報告、決算・申告まで一貫してサポートいたします。
「自社にどのソフトが合うか相談したい」「料金の見積もりがほしい」「今の経理体制を見直したい」——どんな段階のご相談でも構いません。オンラインでの無料相談を承っておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断を保証するものではありません。具体的な取り扱いについては、必ず税理士または所轄の税務署にご確認ください。