「税理士と顧問契約を結びたいけれど、毎月いくらかかるのか分からず踏み切れない」「いまの顧問料が高い気がするけれど、相場が分からないので交渉していいのか判断できない」——これは、はじめて税理士に依頼する経営者の方から最もよくいただくご相談です。
結論からお伝えすると、クラウド会計を導入し、税理士側の作業工数を減らす契約にすることで、顧問料を抑えられる可能性は十分にあります。 ただし「クラウド会計にすれば誰でも自動的に安くなる」わけではなく、安くなる条件と、逆に注意すべき落とし穴があります。
本記事では、税理士監修の立場から、顧問料の相場の考え方・報酬の内訳・顧問料を安くする具体的な方法・クラウド会計でなぜ工数が減るのかの仕組みまで、2026年時点の制度(インボイス制度・電子帳簿保存法改正)を踏まえて整理します。
※本記事に記載した金額は一般的な相場感の目安であり、事務所・業種・取引量によって変動します。具体的な料金は各事務所の見積りで、制度の最新情報は国税庁等の公的情報でご確認ください。
税理士の顧問料の相場の「考え方」
まず大前提として、税理士の顧問料には国が定めた料金表はありません。2002年に税理士報酬規程が廃止されて以降、料金は各事務所が自由に設定しています。そのため「相場」とは絶対的な基準ではなく、何にいくら払っているのか(内訳)を理解したうえで、自社の状況に見合っているかを判断するための目安にすぎません。
顧問料の水準は、主に次の要素で決まります。
- 事業規模(年商・売上高):取引量が増えるほど、確認・処理すべき仕訳や資料が増えます
- 記帳代行の有無:日々の帳簿づけを事務所が代行するか、自社(またはクラウド会計)で行うか
- 面談の頻度:毎月訪問・面談か、四半期ごとか、年1回(決算時のみ)か
- 業種の複雑さ:現金商売・多店舗・輸出入・補助金など、論点が多いほど工数が増えます
- 依頼する業務範囲:記帳・申告だけか、給与計算・年末調整・資金繰り相談まで含むか
つまり「顧問料が高い/安い」は金額単体では判断できず、上記のどこにコストがかかっているかを分解して見るのが、適正価格を見極める第一歩です。
売上規模・記帳の有無による月額の目安
あくまで一般的な目安ですが、月次顧問契約の場合、次のような幅で語られることが多いです(年1回の決算・申告料を別途請求する事務所が一般的です)。
| 区分 | 月額顧問料の目安 | 決算・申告料の目安 |
|---|---|---|
| 個人事業主(小規模・自社で記帳) | 月1万円前後〜 | 5〜10万円前後 |
| 個人事業主(記帳代行あり) | 月1.5〜3万円前後 | 5〜15万円前後 |
| 法人(年商1,000万円前後・自社で記帳) | 月2〜3万円前後 | 10〜20万円前後 |
| 法人(年商3,000〜5,000万円・記帳代行あり) | 月3〜5万円前後 | 15〜25万円前後 |
ここで注目していただきたいのは、「記帳代行あり」のほうが月額が高くなる点です。これは、税理士事務所側が日々の帳簿づけという手間のかかる作業を肩代わりしているためです。逆にいえば、この記帳作業を効率化できれば、顧問料を下げる余地が生まれるということになります。これが、後述するクラウド会計が顧問料の引き下げにつながる根本的な理由です。
顧問料の「内訳」を分解して理解する
顧問料を見直すには、月々の支払いに何が含まれているかを知る必要があります。一般的な月次顧問契約には、次のような業務が含まれます。
- 記帳代行・記帳チェック:日々の取引を仕訳に起こす、または自社の入力を確認する
- 月次試算表の作成・報告:毎月の損益・財政状態を可視化する
- 税務相談・経営相談:節税、資金繰り、設備投資などの相談対応
- 税制改正の情報提供:インボイス・電子帳簿保存法などへの対応案内
- (年1回)決算・確定申告:決算書・申告書の作成と提出 ※多くは別料金
- (オプション)給与計算・年末調整・法定調書・償却資産申告 など
ここで大事なのは、「自社にとって必要な業務」と「あれば便利だが必須ではない業務」を切り分けることです。すべてを最大限のフルパッケージで契約すると、当然ながら顧問料は上がります。自社のフェーズに合った範囲に絞ることが、過不足のない料金にする近道です。
顧問料を安くする具体的な5つの方法
1. 面談頻度を見直す(毎月訪問→必要時のみ)
従来、顧問料には「税理士が訪問して面談する」コストが含まれていました。しかし、月次の数字確認だけならオンライン面談(Web会議)で十分という企業も多くあります。訪問をオンライン中心に切り替える、あるいは面談を四半期ごとにすることで、移動・人件費分のコストを抑えられる場合があります。
なお2019年頃まで「TV会議」と呼ばれていたものは、現在ではZoom・Google Meet・Microsoft TeamsなどのWeb会議が主流です。画面共有で同じ資料を見ながら話せるため、対面と遜色のない相談が可能になっています。
2. 記帳を自社(クラウド会計)に切り替える
前述のとおり、記帳代行は顧問料を押し上げる要因です。クラウド会計ソフトを使って自社で日々の取引を取り込めば、税理士側の作業はチェック中心になり、その分の料金を下げられる可能性があります。詳しくは次章で解説します。
3. 臨時相談を都度課金にする
毎月の顧問料に「いつでも何でも相談し放題」を含めると、その分は割高になりがちです。定期的な業務はパッケージにしつつ、スポット的な相談は都度課金にするプランがあれば、相談が少ない月の固定費を抑えられます。ただし、相談を遠慮して必要な確認を怠ると、かえって税務リスクが高まる点には注意が必要です。
4. 依頼範囲を必要なものに絞る
給与計算・年末調整・資金繰り表の作成などは、自社で対応できるなら外す選択肢もあります。一方で、専門性が高くミスが許されない申告業務などは、無理に内製化せず任せたほうが安全です。「安さ」と「リスク」のバランスで判断しましょう。
5. 複数の事務所を比較し、根拠を聞いたうえで相談する
相場感を持ったうえで、複数事務所の見積りを取り、料金の根拠(何にいくらかかっているか)を確認することが大切です。そのうえで現在の顧問税理士に「この業務を自社対応に切り替えたら見直せるか」と相談するのは、決して失礼なことではありません。料金の透明性に誠実に応じてくれるかは、信頼できる事務所かを見極める材料にもなります。
安さだけを基準に選ぶと、対応が遅い・相談しづらい・申告品質に不安が残るといった「安物買いの銭失い」になりかねません。顧問料は「金額」ではなく「金額に対して得られる安心と価値」で判断するのが、税理士選びの本質です。
クラウド会計で「なぜ」顧問料が安くなるのか
クラウド会計が顧問料の引き下げにつながるのは、税理士事務所側の作業工数が構造的に減るからです。仕組みを具体的に見ていきましょう。
銀行・クレジットカードの自動連携で入力が消える
freee会計・マネーフォワードクラウド・弥生会計オンラインといった主要クラウド会計ソフトは、銀行口座やクレジットカードと連携し、取引明細を自動で取り込みます。従来は通帳や領収書を見ながら一件ずつ手入力していた作業が大幅に減り、その分のコストが下がります。
AIによる自動仕訳で勘定科目の判定を効率化
近年のクラウド会計は、取り込んだ取引内容からAIが勘定科目を推測して仕訳を提案します。学習が進むほど精度が上がり、繰り返しの判断作業が減ります。税理士側は「ゼロから入力」ではなく「提案された仕訳の確認・修正」に集中できるため、確認中心の効率的な業務に変わります。
データをリアルタイムで共有でき、訪問が不要に
クラウド上で同じ帳簿を共有するため、税理士はいつでも最新の数字を確認できます。資料を郵送・持参する必要がなく、オンライン面談と組み合わせれば、訪問のための時間とコストを削減できます。
このように、「入力」「科目判定」「資料のやり取り・移動」という、従来コストの大きかった部分が圧縮されるため、その効率化分を顧問料に反映できる、というのがクラウド会計で安くなる理屈です。
主要クラウド会計ソフトの特徴(2026年時点)
| ソフト | 特徴 |
|---|---|
| freee会計 | 簿記知識が少なくても直感的に使える設計。質問に答える形で決算・申告まで進めやすく、個人事業主・スタートアップに人気 |
| マネーフォワード クラウド | 自動連携できる金融機関・サービスが豊富。給与・請求・経費など周辺サービスとの連携に強い |
| 弥生会計 オンライン | 会計ソフトの老舗で、従来型の会計処理に馴染みのある方に親しみやすい。サポート体制が手厚い |
いずれのソフトも、後述するインボイス制度・電子帳簿保存法に対応しています。料金プランは機能や利用人数で複数用意されているため、最新の料金・機能は各社公式サイトでご確認ください。
2026年は「制度対応」がクラウド会計を後押し
クラウド会計の重要性は、近年の制度改正によってさらに高まっています。
インボイス制度(2023年10月開始)への対応
インボイス制度(適格請求書等保存方式)の開始により、請求書ごとに適格請求書発行事業者の登録番号や税率・消費税額を正しく管理する必要が生じました。取引先が課税事業者か免税事業者かで仕入税額控除の扱いも変わるため、請求・帳簿の管理が以前より複雑化しています。
主要クラウド会計はインボイス対応機能を備えており、登録番号の管理や税区分の判定をシステムで支援します。手作業での管理は負担とミスが大きいため、ここでもクラウド会計の効率化が効いてきます。
電子帳簿保存法改正(電子取引データの電子保存義務化)
電子帳簿保存法の改正により、メールやWeb上でやり取りした請求書・領収書などの「電子取引データ」は、電子データのまま保存することが原則となりました。この義務は2022年1月に施行され、2023年12月末までの宥恕措置を経て、2024年1月から本格適用されています(紙に印刷して保存するだけでは要件を満たさないケースがあります)。
ただし、所轄税務署長が「相当の理由」があると認め、税務調査の際に電子取引データのダウンロードの求めと出力書面の提示等に応じられる場合には、検索要件等を満たさなくても電子データ保存ができる猶予措置(2024年1月以降の恒久措置)が設けられています。基準期間の売上高が5,000万円以下の事業者などは検索要件の一部が不要になる緩和もあります。最新の取り扱いは国税庁の公式情報でご確認ください。
クラウド会計やクラウドストレージを使えば、取引データを要件に沿った形で保存しやすくなります。電子帳簿保存法への対応は、もはや「あると便利」ではなく「対応必須」のテーマになっており、これがクラウド会計導入を実質的に後押ししています。
インボイス制度・電子帳簿保存法は、適用条件や経過措置が細かく、その後も見直しが行われています。自社にどう適用されるかは、最新情報を国税庁の公式情報で確認するか、税理士にご相談ください。
クラウド会計にすれば「必ず」安くなるわけではない点に注意
ここまでクラウド会計のメリットを説明しましたが、税理士として正直にお伝えすべき注意点もあります。
- 自社の入力品質が低いと、かえって修正工数が増える:自動連携・AI仕訳も、運用が雑だと税理士側のチェック・修正が増え、コスト削減効果が薄れます。最初の設定と運用ルールづくりが重要です。
- 記帳を自社に移す=自社の手間が増える:顧問料は下がっても、自社の作業時間というコストは発生します。トータルで得かを見ることが大切です。
- ソフトの利用料が別途かかる:クラウド会計の月額利用料が発生します。顧問料の削減額と利用料を合わせて判断しましょう。
「クラウド会計の導入支援・初期設定・運用フォローまで含めてサポートしてくれる事務所」を選ぶことが、効率化を確実に料金へ反映させるためのポイントです。
まとめ:クラウド会計は「安さ」と「正確さ」を両立する手段
- 税理士の顧問料に決まった料金表はなく、規模・記帳代行の有無・面談頻度・業務範囲で決まる
- 記帳代行は顧問料を押し上げる要因であり、クラウド会計で記帳を効率化すれば引き下げの余地が生まれる
- 顧問料を抑えるには、面談頻度の見直し・記帳のクラウド化・臨時相談の都度課金・依頼範囲の最適化・複数比較が有効
- クラウド会計は、自動連携・AI仕訳・データ共有で税理士側の工数を構造的に削減し、その分を料金に反映できる
- インボイス制度・電子帳簿保存法改正により、クラウド会計対応は実質的に必須のテーマになっている
- ただし運用品質や利用料を含めたトータルで判断すべきで、「安さ」だけでなく「正確さ・安心」とのバランスが大切
クラウド会計は、単に顧問料を下げる手段ではなく、正確な経理と効率化を同時に実現する経営インフラです。制度対応に追われる今だからこそ、導入を機に顧問契約の中身を見直す価値があります。
Iroae税理士事務所のクラウド会計顧問について
Iroae税理士事務所(旧 カスタマーグロース合同会社)では、freee会計・マネーフォワードクラウド・弥生会計オンラインなど主要クラウド会計の導入支援から、初期設定・運用フォロー、インボイス制度・電子帳簿保存法への対応まで一気通貫でサポートしています。Web会議・チャットを活用したオンライン顧問により、訪問にかかるコストを抑えた料金体系をご用意しています。
「いまの顧問料が適正か診断してほしい」「クラウド会計に切り替えたらどれくらい効率化できるか知りたい」——そんなご相談を、初回オンライン無料相談で承っています。自社の状況に合わせた最適なプランを、一緒に考えさせてください。
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