「会計ソフトを入れたいけれど、種類が多すぎてどれを選べばいいのか分からない」「結局どのクラウド会計ソフトが一番使われているの?」――独立したばかりの個人事業主の方や、これから経理を整えたい中小企業の経営者の方から、こうしたご相談を本当によくいただきます。
数年前まで会計ソフトと言えばパソコンにインストールして使う「インストール型」が主流でしたが、いまやクラウド会計ソフトが当たり前の時代になりました。さらに、インボイス制度(2023年10月開始)や電子帳簿保存法の改正(電子取引データの電子保存義務化)といった制度変更が立て続けに起こり、「制度に対応できるソフトを選ばないと、後から手作業でやり直すことになる」という新しい論点も生まれています。
この記事では、Iroae税理士事務所が日々の実務で多くのお客様の会計ソフトに触れている立場から、クラウド会計ソフトの普及状況とシェア、そして freee会計・マネーフォワードクラウド・弥生会計オンライン の3つを比較しながら、制度対応も含めた「失敗しない選び方」を解説します。
クラウド会計ソフトはどこまで普及したのか
クラウド会計ソフトとは、ソフトをパソコンにインストールするのではなく、インターネット経由でブラウザから利用する会計ソフトのことです。データはクラウド(インターネット上のサーバー)に保存されるため、自宅でもオフィスでも、スマートフォンからでも同じデータにアクセスできます。
この記事の旧版(2019年)では、当時のアンケート調査で「クラウド会計ソフトの利用率は18.5%」という数字を紹介していました。しかし、その後の数年間でクラウド会計の普及は大きく進みました。背景には、次のような環境の変化があります。
- 確定申告の電子化(e-Tax)の浸透:電子申告が一般的になり、クラウド会計ソフトとの相性の良さが評価された
- インボイス制度・電子帳簿保存法への対応ニーズ:制度変更に手作業で対応するのは現実的でなく、ソフトに頼る流れが加速した
- 銀行・クレジットカード連携による自動化の進化:明細を自動で取り込み、仕訳の候補まで提示してくれる機能が実用レベルに達した
普及率の具体的な最新数値は、調査主体(MM総研、矢野経済研究所、各ソフト会社のIR資料など)や対象(個人事業主か法人か)によって異なります。最新の利用率・シェアを正確に把握したい場合は、各調査機関の公表資料をご確認いただくのが確実です。ここで強調しておきたいのは、「クラウド会計はもはや一部の先進的な事業者だけのものではなく、新規に会計ソフトを導入する方の有力な選択肢になっている」という点です。
※本記事では、特定年度の利用率・シェアの順位を断定的に示すことは避けています。会計ソフト市場はシェアの変動が大きく、数値はすぐに陳腐化するためです。導入を検討される際は、最新の各社公表データと、後述する「自社に合うか」という観点で判断することをおすすめします。
クラウド会計ソフト主要3社の特徴
日本国内のクラウド会計ソフトは、freee会計、マネーフォワードクラウド会計(個人事業主向けはマネーフォワードクラウド確定申告)、弥生会計オンライン(個人向けはやよいの青色申告 オンライン) の3つがよく知られています。それぞれに設計思想の違いがあり、「どれが一番か」ではなく「あなたの事業に合うのはどれか」で選ぶのが正解です。
freee会計
簿記の知識があまりない方でも使いやすいように設計されているのが特徴です。「収入」「支出」といった日常の言葉で入力を進められ、銀行・クレジットカード連携による自動仕訳の提案も強力です。バックオフィス全体(請求書発行・経費精算・給与計算など)を一つの思想でまとめたい方や、これから経理を一から立ち上げる個人事業主・スタートアップに選ばれやすい傾向があります。
マネーフォワードクラウド
家計簿アプリ「マネーフォワード ME」で知られる会社が提供しており、金融機関連携の幅広さに定評があります。会計だけでなく、請求書・給与・経費・勤怠などをシリーズで揃えられるため、事業の成長に合わせてバックオフィスを拡張していきたい法人に向いています。簿記の基本を理解している方や、経理担当者がいる事業者とも相性が良いと感じる場面が多いです。
弥生会計オンライン/やよいの青色申告 オンライン
会計ソフトの老舗である弥生が提供するクラウド版です。長年インストール型「弥生会計」で培われた信頼と、サポート体制の手厚さが強みです。すでに弥生のインストール型を使っている方がクラウドへ移行するケースや、電話サポートを受けながら確実に申告まで進めたい方に選ばれています。個人事業主向けの「やよいの青色申告 オンライン」は初年度無料のプランが用意されることもあり、コストを抑えて始めたい方の入口になりやすいです。
なお、料金プランや無料期間、機能の対応範囲は各社が随時改定しています。最新の料金・プラン内容は必ず各社の公式サイトでご確認ください。
3社のざっくり比較イメージ
| 観点 | freee会計 | マネーフォワードクラウド | 弥生会計オンライン |
|---|---|---|---|
| 設計の方向性 | 簿記知識が浅くても使いやすい | 金融連携・拡張性に強み | 老舗の信頼とサポート |
| 向いている方 | これから経理を立ち上げる個人・スタートアップ | 成長に合わせて拡張したい法人 | 確実に・サポートを受けて進めたい方 |
| バックオフィス連携 | 請求・経費・給与まで一気通貫 | 会計・給与・経費・勤怠をシリーズ展開 | 会計を軸に周辺サービスを拡充 |
| サポート | チャット等のオンライン中心 | オンライン中心 | 電話サポートに定評 |
※上記は2026年時点での一般的な傾向をまとめたもので、各社のプランや機能改定により変わります。実際の比較は最新の公式情報でご確認ください。
ソフト選びで今いちばん重要な「制度対応」
数年前であれば、クラウド会計ソフトは「使いやすさ」や「料金」で選べば十分でした。しかし2026年現在、制度への対応が選定の最重要ポイントになっています。ここを見落とすと、後から手作業でのやり直しが発生し、かえって時間とコストがかかってしまいます。
インボイス制度(適格請求書等保存方式)への対応
2023年10月から、消費税の仕入税額控除を受けるための仕組みとして**インボイス制度(適格請求書等保存方式)**が始まりました。クラウド会計ソフトを選ぶ際は、次のような点に対応できるかを確認しましょう。
- 適格請求書(インボイス)の発行:登録番号や適用税率、税率ごとに区分した消費税額などを記載した請求書を発行できるか
- 受領した請求書の管理:取引先がインボイス発行事業者かどうかを区分し、仕入税額控除の可否を正しく処理できるか
- 経過措置への対応:免税事業者等からの仕入れについて、一定割合を控除できる経過措置の計算に対応しているか
主要なクラウド会計ソフトはいずれもインボイス制度への対応を進めていますが、対応の細かさや使い勝手には差があります。免税事業者のままでいくのか、インボイス発行事業者として登録するのかによって必要な機能も変わるため、自社の方針と合わせて確認することが大切です。
電子帳簿保存法の改正への対応
もう一つの大きな論点が**電子帳簿保存法(電帳法)**です。特に重要なのが、電子取引データの電子保存の義務化です。メールに添付された請求書のPDFや、ネット通販の領収書など、電子的にやり取りした取引データは、原則として電子データのまま、一定の要件(改ざん防止などの「真実性の要件」、日付・金額・取引先で検索できる「可視性(検索)の要件」など)を満たして保存する必要があります。
「紙に印刷して保存すればよい」という従来のやり方が、電子取引については原則認められなくなった、という点が大きな変更です。クラウド会計ソフトの多くは、この電子保存に対応するための書類保管機能(証憑のアップロード・検索・改ざん防止対応など)を備えています。義務化への対応を手作業でゼロから整えるのは大変なので、ソフトの機能を活用するのが現実的です。
インボイス制度・電子帳簿保存法は、適用範囲や経過措置の細部が複雑で、事業者ごとに必要な対応が異なります。制度の正確な内容や最新の取扱いは、国税庁のウェブサイトでご確認いただくか、税理士にご相談ください。本記事は制度の概要を分かりやすくお伝えするものであり、個別の判断は専門家の確認を前提としています。
税理士が考える「失敗しない選び方」
シェアやアンケート結果は参考にはなりますが、それだけで会計ソフトを決めるのはおすすめできません。私たちが実務でお客様にお伝えしている、選定の視点を3つご紹介します。
1. 個人事業主か法人かで考える
個人事業主の方であれば、確定申告(青色申告)までスムーズに完結できることが第一です。一方、法人の場合は決算書の作成や消費税の処理、給与計算との連携など、求められる範囲が広がります。同じシリーズでも「個人向け」と「法人向け」で製品が分かれていることが多いため、自分がどちらに該当するかをまず整理しましょう。
2. 銀行・クレジットカード連携の自動仕訳精度を試す
クラウド会計の最大のメリットは、銀行口座やクレジットカードの明細を自動で取り込み、仕訳の手間を大幅に減らせる点にあります。ただし、自動で提案される仕訳の精度や、よく使う金融機関に対応しているかはソフトによって差があります。多くのソフトに無料お試し期間があるので、実際に自分の取引データで試してみるのが、何より確実な比較方法です。
3. 顧問税理士との連携のしやすさを確認する
会計ソフトは、最終的に決算・申告で税理士と二人三脚になる場面が多くあります。顧問税理士が普段どのソフトを使い慣れているか、データ共有がスムーズにできるかは、見落とされがちですが非常に重要なポイントです。ソフトを決める前に、依頼を検討している税理士に「このソフトで対応できますか」と一言確認しておくと、後の連携がぐっと楽になります。
まとめ
クラウド会計ソフトは、いまや新規に会計を始める方の有力な選択肢として広く普及しました。freee会計・マネーフォワードクラウド・弥生会計オンラインのいずれも完成度が高く、「どれを選んでも大きく外れることはない」というのが正直なところです。
だからこそ、選定の決め手になるのは次の2点です。
- 自社に合うか:個人事業主か法人か、簿記の知識はどの程度か、どこまで自動化したいか
- 制度に対応できるか:インボイス制度・電子帳簿保存法(電子取引データの電子保存義務化)への対応
そして最後に、顧問税理士との連携のしやすさを加えて検討すれば、導入後の運用で困ることはぐっと減ります。
クラウド会計のご相談はIroae税理士事務所へ
Iroae税理士事務所では、クラウド会計ソフトの選定から、インボイス制度・電子帳簿保存法への対応、導入後の運用サポートまで、お客様の状況に合わせてお手伝いしています。「自分の事業にはどのソフトが合うのか分からない」「制度対応がきちんとできているか不安」という方は、ぜひ一度ご相談ください。
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