「クラウド会計ソフトを使いたいけれど、freee・マネーフォワード・弥生のどれを選べばいいのか分からない」「シェアが大きいソフトを選んでおけば間違いないのか」——独立・開業して経理を自分でやろうとすると、最初にぶつかるのがこの悩みではないでしょうか。
ソフト選びは、その後の経理作業の効率や、確定申告・消費税申告のしやすさ、そして顧問税理士との連携のしやすさを大きく左右します。いったん使い始めると乗り換えに手間がかかるため、最初の選択は慎重に行いたいところです。
この記事では、Iroae税理士事務所(旧 カスタマーグロース合同会社)が、税理士の実務目線でクラウド会計ソフトの市場動向と主要3社の特徴、そして「あなたはどれを選ぶべきか」を整理します。2023年に始まったインボイス制度、2024年に本格適用が始まった電子帳簿保存法(電子取引データの電子保存)への対応という、いま最も重要な選定軸についても解説します。
クラウド会計ソフトの市場シェアはどうなっているのか
国内のクラウド会計ソフト市場は、長らく freee会計・マネーフォワード クラウド会計/確定申告・弥生(弥生会計オンライン/やよいの青色申告オンライン等) の主要3社を中心に推移してきました。とりわけ個人事業主向けの領域ではこの3社で大半が占められている状況が続いています。
弥生は30年以上の歴史を持つ老舗で、デスクトップ版「弥生会計」の時代から圧倒的な知名度と利用者基盤を築いてきました。freeeとマネーフォワードは、クラウド時代に登場した比較的新しいベンダーで、銀行口座やクレジットカードとの自動連携、AIによる自動仕訳といった機能をいち早く取り入れて利用者を伸ばしてきた経緯があります。
ただし、ここで税理士として強くお伝えしたいことがあります。シェアの大きさは「選ぶべき理由」にはなりません。
シェアの数値は調査機関・調査時点・対象(個人事業主か法人か、無料版を含むか)によって大きく変わります。最新の正確なシェア順位は各社の公表資料や調査機関のレポートで確認いただくとして、本記事では数字の順位争いよりも「あなたの事業にどれが合うか」という観点で比較していきます。実際、シェア1位のソフトが、あなたの業種・規模・スキルにとって最適とは限らないからです。
主要3社の特徴を比較する
クラウド会計ソフトはどれも基本機能(仕訳入力、銀行・クレカ連携、確定申告書類の作成など)は備えていますが、設計思想や操作性に違いがあります。
freee会計
簿記の知識がない方でも使いやすいよう、「○○の口座から××を支払った」といった日常の言葉に近い形で取引を登録できるのが特徴です。会計の専門用語に不慣れな個人事業主やスタートアップに向いています。法人向けプランも充実しており、規模拡大に合わせて使い続けやすい設計です。
一方で、独自の入力フローに慣れが必要な面があり、簿記の知識がある方や、従来型の複式簿記の画面に慣れた方には最初やや戸惑うこともあります。
マネーフォワード クラウド
会計だけでなく、請求書・経費精算・給与計算・勤怠などのバックオフィス機能が一つのシリーズで揃っているのが強みです。事業の拡大に伴って経理以外の管理業務も増えてくる法人や、複数のサービスを連携させて使いたい事業者に適しています。銀行・クレカ・電子マネーなどとの連携対応の幅が広い点も評価されています。
弥生(弥生会計オンライン/やよいの青色申告オンライン)
長年の実績による安心感と、サポート体制の手厚さが魅力です。電話やメールでのサポートを重視する方、会計ソフトに不慣れで「困ったときに相談できる窓口」を求める方に向いています。デスクトップ版からの移行ユーザーや、税理士・会計事務所での導入実績も豊富です。
なお、弥生では「やよいの青色申告 オンライン」などで一定期間の無料体験プランが用意されることがあります。料金体系やプラン内容は改定されることがあるため、最新の料金・無料期間は必ず各社公式サイトでご確認ください。 本記事公開時点の情報と異なる場合があります。
【最重要】インボイス制度への対応で選ぶ
2023年10月に始まった**インボイス制度(適格請求書等保存方式)**は、いまクラウド会計ソフトを選ぶうえで最も重要な判断軸のひとつです。
課税事業者として適格請求書発行事業者の登録を受けた場合、取引先に交付する請求書に登録番号・適用税率・消費税額等を記載した「適格請求書(インボイス)」を発行する必要があります。また、仕入側では、受け取った請求書が適格請求書かどうかを確認し、区分して経理する手間が発生します。
主要3社のクラウド会計ソフトは、いずれもインボイス制度に対応しており、
- 登録番号を記載した適格請求書の発行
- 受け取った請求書の適格・不適格の区分管理
- 税率(10%・軽減8%)ごとの消費税集計
といった機能を備えています。請求書発行から会計帳簿への反映までを一気通貫で行えるかどうかは、ソフト選びで必ずチェックしたいポイントです。
なお、免税事業者だった方がインボイスを機に課税事業者になった場合、当面は納税額を売上税額の2割に抑えられる**「2割特例」**などの負担軽減措置が設けられています(適用には期間や対象の条件があります)。こうした特例の適用可否や有利・不利の判断は、消費税の制度を理解していないと誤りやすい部分です。最新の適用条件は国税庁のサイトで確認するか、税理士にご相談ください。
【最重要】電子帳簿保存法への対応で選ぶ
もう一つの大きな選定軸が、**電子帳簿保存法(電帳法)**への対応です。
電子取引データの電子保存義務は2022年1月に施行され、2023年12月末までの宥恕措置を経て、2024年1月から本格的に適用されています。メールやインターネット上でやり取りした請求書・領収書などの電子取引データは、電子データのまま保存することが原則となっています(「相当の理由」が認められ、税務調査の際にデータのダウンロードの求めや書面の提示等に応じられる場合の猶予措置はあるものの、紙に印刷して保存すれば済むという扱いではなくなっています)。
電子データを保存する際には、
- 改ざん防止の措置(タイムスタンプの付与、または訂正・削除の履歴が残るシステムの利用など)
- 日付・金額・取引先で検索できる状態にしておくこと
といった保存要件を満たす必要があります。
主要なクラウド会計ソフトは、これらの電帳法の要件に対応した保存機能(電子取引データの取り込み・検索・タイムスタンプ対応、スキャナ保存への対応など)を備えています。手元の領収書や請求書をどのように電子保存していくかは、日々の経理フローに直結するため、導入前に各ソフトの対応状況を確認しておくことをおすすめします。
電帳法の要件は細かく、自社のやり方が要件を満たしているか判断に迷うケースが少なくありません。制度の詳細や自社の保存方法の妥当性については、国税庁の公表資料を確認するか、税理士に相談すると安心です。
税理士が教える「あなたに合うソフト」の選び方
ここまでを踏まえ、読者のタイプ別に選び方の考え方を整理します。あくまで一般的な目安であり、最終的にはご自身の事業内容に合わせて判断してください。
- 簿記の知識がほとんどない個人事業主・フリーランス → 日常の言葉で入力できる freee会計のような直感的なソフトが負担を減らしやすいです。
- 経費精算・請求・給与などバックオフィス全体を効率化したい法人 → 周辺サービスが揃ったマネーフォワード クラウドが連携しやすいです。
- 手厚いサポートや実績の安心感を重視する方・会計に不慣れな方 → サポート体制が充実した弥生が向いています。
- すでに顧問税理士がいる、または依頼を検討している方 → 税理士が普段使っているソフトに合わせるのが最も効率的です。
最後の点は意外と見落とされがちですが、実務上とても重要です。会計事務所ごとに対応しやすいソフトがあり、税理士と同じソフトを使えば、データの共有・確認がスムーズになり、決算や申告のやり取りの手間が大きく減ります。逆に、税理士が対応していないソフトを選んでしまうと、データの受け渡しに余計な労力がかかることがあります。
ソフト選びに迷ったら、契約予定の税理士に「どのソフトが連携しやすいか」を先に聞いておくことを強くおすすめします。
まとめ
クラウド会計ソフトは freee・マネーフォワード・弥生の主要3社が市場をけん引していますが、シェアの大きさで選ぶのではなく、自分の事業に合うかどうかで選ぶことが何より大切です。
2026年現在、ソフト選定で外せないのは次の2点です。
- インボイス制度への対応(適格請求書の発行・受領処理、税率別集計、2割特例など負担軽減措置の理解)
- 電子帳簿保存法への対応(電子取引データの電子保存、改ざん防止と検索要件、スキャナ保存)
そのうえで、簿記の習熟度・事業規模・バックオフィスの効率化ニーズ・サポートの手厚さ、そして顧問税理士との連携のしやすさを総合して選ぶのが、後悔しない選び方です。なお、税率・特例の適用条件・各種期限などの制度面は改正されることがあるため、判断の際は国税庁の最新情報をご確認ください。
クラウド会計の導入・乗り換えはIroae税理士事務所へ
Iroae税理士事務所(旧 カスタマーグロース合同会社)では、クラウド会計ソフトの選定から導入支援、インボイス制度・電子帳簿保存法への対応、日々の記帳や確定申告・消費税申告まで、事業者の皆さまを実務面でしっかりサポートしています。
「自分の事業にはどのソフトが合うのか」「インボイスや電帳法に正しく対応できているか不安」——そうしたお悩みがありましたら、ぜひ一度ご相談ください。事業の規模や業種、これからの展望を伺ったうえで、最適なソフトと運用方法をご提案します。
クラウド会計に関する無料相談を実施しております。オンラインでのご相談も可能ですので、お気軽にお問い合わせください。