「クラウド会計を導入したいけれど、結局いくらかかるのか分かりにくい」「freeeとマネーフォワードと弥生、どれがいちばん安いのか比較したい」——開業や法人化を控えた方、あるいは今の手作業の経理に限界を感じている方から、こうしたご相談を本当によくいただきます。
クラウド会計ソフトは、従来のインストール型ソフトのような「一度買えば終わり」の買い切りではなく、月額または年額の利用料を払い続けるサブスクリプション型が主流です。そのため、目先の月額だけでなく「年間でいくらになるか」「自分の事業規模だとどのプランが適切か」「料金に含まれない追加費用はないか」まで見ないと、本当のコスト比較にはなりません。
この記事では、税理士として数多くの事業者のクラウド会計導入を支援してきた立場から、料金体系の見方・各社の比較ポイント・2026年時点で必ず確認すべき制度対応・見落としがちな隠れコストまでを、できるだけ実務的に整理します。
本記事の料金・プラン名は記事公開・改稿時点で一般に公表されている体系をもとにしています。クラウド会計の料金やプラン構成は各社が頻繁に改定するため、契約前には必ず各社公式サイトで最新の金額・プラン内容をご確認ください。
クラウド会計の費用は「月額だけ」で比べてはいけない
クラウド会計の料金を比較するとき、多くの方が月額表示の金額だけを見て「A社が安い」と判断してしまいます。しかし実際のコストは、次の要素の組み合わせで決まります。
1. プランのグレード(機能の範囲)
各社とも、確定申告(申告書作成)だけができる下位プランから、請求書発行・経費精算・部門別会計・固定資産管理などを含む上位プランまで、複数のグレードを用意しています。安いプランを選んでも、必要な機能が使えなければ意味がありません。逆に、使わない機能のために上位プランを契約していれば払い過ぎです。
2. 月払いか年払いか
ほとんどのソフトで、年払い(年額一括)にすると月払いより割安になります。長く使う前提なら年払いが基本的に有利ですが、まず試したい・事業の継続が不確実な段階では月払いで様子を見る、という選択も合理的です。
3. 個人事業主向けか、法人向けか
個人事業主向けプランと法人向けプランは料金体系が大きく異なります。一般に法人向けのほうが高額で、決算書の様式・消費税申告・部門管理などの機能が手厚くなっています。「個人で安いプランを見ていたら、法人化した途端に費用が跳ね上がって驚いた」というのはよくある話です。今後の法人化を視野に入れているなら、最初から法人化後の料金感も把握しておくと安心です。
4. サポートの範囲
メール・チャットのみのサポートか、電話サポートまで含むかで価格が変わる設計が一般的です。初めてクラウド会計を使う方や、繁忙期に操作で詰まりたくない方は、電話サポート付きプランの価値が相対的に高くなります。
これらを踏まえずに月額だけを並べても、本当の意味での「費用 比較」にはなりません。まずは「自分に必要な機能・規模・サポート」を決め、そのうえで各社の同等プランを年間総額で比べるのが正しい順序です。
主要クラウド会計3社の費用と特徴を比較
ここでは、国内で広く利用されている freee会計・マネーフォワード クラウド会計(クラウド確定申告)・弥生(弥生会計 オンライン/やよいの白色・青色申告 オンライン)の3社について、料金体系の考え方と向き不向きを整理します。具体的な金額は改定が頻繁なため、本記事では金額そのものではなく「比較の着眼点」を中心にお伝えします。最新の料金は各社公式サイトでご確認ください。
freee会計
簿記の知識が少ない方でも、銀行口座やクレジットカードの明細を取り込み、画面の案内に沿って仕訳を進められる設計が特徴です。個人事業主向けと法人向けでそれぞれ複数のグレードがあり、上位プランほど請求・経費精算・申告サポートなどの機能が広がります。
- 向いている人: 経理・簿記の経験が浅く、できるだけ自動化・ガイドに頼りたい個人事業主や小規模法人
- 着眼点: どのプランから消費税申告に対応するか、電話などのサポートがどのプランから付くか
マネーフォワード クラウド
会計だけでなく、請求書・経費・給与・勤怠などのバックオフィス機能をシリーズで揃えやすいのが強みです。個人向けプランと、法人向けの「マネーフォワード クラウド会計」が分かれており、事業の成長に合わせて機能を足していきやすい構成になっています。
- 向いている人: 会計以外(請求・給与・経費精算など)もまとめてクラウド化したい個人事業主・中小法人
- 着眼点: 必要なバックオフィス機能をどこまで含めると年間総額がいくらになるか
弥生(弥生会計 オンライン/やよいの白色・青色申告 オンライン)
会計ソフトの老舗で、個人事業主向けに白色申告用・青色申告用のオンラインサービスを提供しています。初年度の費用を抑えやすいキャンペーンが用意されていることが多く、まず低コストで始めたい方に検討されやすい選択肢です。法人向けには弥生会計 オンラインがあります。
- 向いている人: コストを抑えて確定申告に対応したい個人事業主、馴染みのある操作感を重視する方
- 着眼点: 初年度割引が終わった後(2年目以降)の通常料金、サポートの有無による価格差
いずれも料金やプラン名は改定が頻繁です。例えば過去には「スターター」「パーソナルライト」といったプラン名や、特定の月額・年額が使われていましたが、現在は体系が変わっている可能性が高いため、必ず最新の公式情報で確認してください。
費用比較の前に必ず確認すべき2つの制度対応
2026年現在、クラウド会計を「料金だけ」で選ぶのは危険です。次の2つの制度への対応が、料金以上に重要な比較軸になっています。これらに対応していないソフトを選ぶと、安く導入できても結局あとで困ることになります。
インボイス制度(適格請求書等保存方式)への対応
2023年10月にインボイス制度が始まり、適格請求書(インボイス)の発行・受領・保存が事業者にとって日常業務になりました。クラウド会計を選ぶ際は、
- 適格請求書発行事業者の登録番号を記載した請求書を発行できるか
- 受け取った請求書がインボイス(適格請求書)か否かを区分して管理・記帳できるか
- 消費税申告(とくに2割特例や簡易課税など)に対応しているか
を必ず確認しましょう。主要なクラウド会計はいずれもインボイス対応を進めていますが、対応の範囲や使い勝手はプランやソフトによって差があります。消費税の課税事業者(インボイス登録事業者)の方ほど、この点を料金より優先して比較すべきです。
電子帳簿保存法(電帳法)への対応
電子帳簿保存法の改正により、「電子取引データ」の電子保存義務は2022年1月に施行され、2023年末までの宥恕措置を経て、2024年1月から本格的に適用されています。メールやインターネットでやり取りした請求書・領収書などのデータは、原則として紙に印刷した書面の保存だけで済ませるのではなく、一定の要件を満たした形で電子データのまま保存することが求められます。ただし、相当の理由があると認められ、税務調査の際にデータのダウンロードの求めや出力書面の提示に応じられる場合などには、検索要件等を満たさなくても電子データを保存できる猶予措置も設けられています(最新の取り扱いは国税庁の公式情報でご確認ください)。
クラウド会計を選ぶ際は、
- 電子取引データを要件に沿って保存・検索できる機能があるか
- 領収書などをスキャナ保存(スマホ撮影含む)する機能があるか
- タイムスタンプ付与など、改ざん防止の要件に対応しているか
を確認してください。電帳法対応は、単なる便利機能ではなく法令上の要請です。料金が多少高くても、自社の取引形態に合った電子保存ができるソフトを選ぶほうが、結果的に手間とリスクを大きく減らせます。
見落としやすい「隠れコスト」に注意
表示されている月額・年額だけを見て契約すると、後から想定外の出費に気づくことがあります。費用比較の際は、次のような追加コストも含めて考えましょう。
- 決済・口座連携に伴う手数料: ソフト経由でクレジットカード決済や口座振替を利用する場合、別途の決済手数料がかかることがあります。
- オプション機能・人数追加の費用: 給与計算・経費精算・請求書発行などをオプションで追加したり、利用人数を増やしたりすると、基本料金に上乗せされます。
- アップグレード時の差額: 事業が成長して上位プランや法人プランに移ると、料金が段階的に上がります。
- データ保存・電子帳簿保存に関する付随費用: ストレージや一部機能が上位プラン限定の場合があります。
「いちばん安いプラン」が、必要な機能を足していくと結局は中位プラン並みになる、ということは珍しくありません。最初から「必要な機能をすべて含めた状態での年間総額」で比べるのが、失敗しないコツです。
税理士視点|事業規模・状況別のプランの選び方
最後に、私たちが実務で導入支援をする際にお伝えしている、選び方の考え方をまとめます。
開業したばかりの個人事業主・小規模事業者
取引量がまだ少なく、まずは確定申告に確実に対応したい段階では、申告に対応した下位〜中位プランから始めるのが現実的です。初年度割引や無料お試し期間を活用し、操作感が自分に合うかを実際に確かめてから本契約するのがおすすめです。多くのソフトに1か月程度の無料体験があるため、料金表だけで決めず、必ず一度触れてみてください。
取引量が多い・消費税の課税事業者
インボイス制度・消費税申告への対応が必須になるため、料金より「消費税まわりの機能が自分の課税方式(本則課税・簡易課税・2割特例など)に合っているか」を優先して選びます。記帳の自動化精度やサポート体制も、ミスや手戻りを減らす観点で重要です。
法人・これから法人化する方
法人は決算書の様式・消費税申告・部門別管理などで個人より要件が増えるため、最初から法人向けプランで比較します。今後法人化を予定している個人事業主の方は、法人化後の料金も含めて検討しておくと、移行時のコスト増に慌てずに済みます。
顧問税理士と連携する場合
私たちのような顧問税理士がつく場合、税理士側と同じクラウド会計を使うと、データの共有・確認がスムーズになり、結果として記帳代行や決算対応の手間・費用を抑えられることがあります。「自分だけで全部入力する前提のプラン」より、税理士と分担する前提でプランを選んだほうが、トータルコストが下がるケースは少なくありません。どのプランが自社に最適かは、顧問契約を検討中の税理士に相談してから決めるのが安全です。
まとめ
クラウド会計の費用を比較するうえで大切なのは、次のポイントです。
- 月額だけでなく「年間総額」「必要な機能を含めた実費」で比べる
- 個人事業主向けか法人向けかでプラン体系が大きく変わる
- インボイス制度・電子帳簿保存法への対応は、料金以上に重要な比較軸
- 決済手数料・オプション費・アップグレード差額などの隠れコストも考慮する
- 無料お試し期間を使い、料金表だけで決めずに実際の使い勝手を確認する
料金やプランの構成は各社が頻繁に見直しているため、最終的な金額は必ず各社公式サイトの最新情報でご確認ください。そのうえで、「自社の規模・取引・将来計画に合った一本」を選ぶことが、長く使えてムダのないクラウド会計選びにつながります。
クラウド会計の導入は Iroae税理士事務所にご相談ください
Iroae税理士事務所(旧 カスタマーグロース合同会社)では、クラウド会計の選定・初期設定・運用、インボイス制度や電子帳簿保存法への対応まで含めて、事業の規模やご状況に合わせたサポートを行っています。「どのソフトのどのプランが自分に合うのか分からない」「導入したものの使いこなせていない」といったお悩みも、お気軽にご相談ください。
オンラインでの無料相談を承っております。まずはお問い合わせフォームよりお気軽にご予約ください。
監修・執筆: Iroae税理士事務所 最終更新: 2026年5月
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断・契約判断を保証するものではありません。料金・プラン・制度の詳細は、各社公式サイトおよび国税庁等の公的機関の最新情報をご確認のうえ、必要に応じて税理士にご相談ください。