失敗しない内部監査計画の立案方法
内部監査計画を立てるにあたって、どの様な事に気を付ければ良いのか悩むことがあります。いくつかのポイントについて解説していきます。
➀内部監査計画の作成前に行うこと
内部監査は、経営者が懸念事項や関心事、及び経営運営の実態を把握するために内部監査人に委託した業務です。内部監査人は、チェックリストや手順書通りの単なる文書作成作業にならないよう、下記のような観点を念頭において監査の実効性を担保する必要があります。
- 経営理念
- 経営者が懸念しているビジネスリスクはどのようなものがあるか
- 業界の中の立ち位置
- 自社の成長フェーズ
- 新規サービスや、システム変更、業務オペレーションの大幅な変更
内部監査を行うにあたっては、年間を通じてPDCAサイクルを回す必要があります。まずはPの部分、年間内部監査計画を作成します。
年間内部監査計画の作成前に以下の3つの確認します。
①ー1リスク評価の確認
一般社団法人日本内部監査協会が監修する内部監査基準には、リスクアプローチについては明言されていませんが、近年ではリスクの高い領域に対して重点的に監査を行う手法が主流となっています。
内部監査部門として、企業が抱えるリスクを評価するにあたっては、経営計画や事業計画におけるリスクについて経営陣がどのように考えているかの意見を聞き、日常の業務を通じて出来る限り広範囲にわたって情報を収集しておく必要があります。
①-2 各部署の繁忙期の確認
被監査部門の繁忙期も内部監査時期から外すよう考慮します。監査を受ける側も監査前には相当な時間を準備に費やしますし、監査対応にも人員を割かなければなりません。内部監査を計画する際には、繁忙期を避けた方がお互いがきっちりと向き合うことが出来、良い監査を行える事になるでしょう。
内部監査計画の立案にあたって、他の監査(外部監査、監査役監査など)が行われる時期も考慮します。もしも監査手続を同時に行うこと監査対象部門の負担が減らせる場合は同時に行うことを検討します。
①-3 内部監査の重点項目の確認
内部監査は経営目的を達成させる為に行われるものです。自社の現在の状況、取り巻く環境を踏まえた上で「監査テーマ」を決定することが重要です。業務全般に渡って細部まで監査を行うのは不可能なので、監査テーマ(重点項目)を選定して監査計画を立てることになります。前年度の振り返りに加え、経営陣の意図、問題意識さらには監査法人や監査役の指摘事項等を考慮し、監査テーマを決定しましょう。
この監査テーマによって、監査対象や監査時期が決定されて行くことになります。
②スケジュールの作成
内部監査準備の一つとして、個別の監査スケジュールを作成します。
スケジュールには、「監査日時」「担当監査員」「監査方法」「依頼事項」などを盛り込み、被監査部門に通知することで監査対応の承諾を得ます。
内部監査を実施する側として考慮すべき点は、上場企業は金融商品取引法により「内部統制報告書」の提出が毎年必要で、その為に、内部統制評価を行う必要があります。内部監査実施部門が内部統制評価も担当している場合は、期限のある内部統制評価とのバランスを考慮しましょう。
被内監査部門の立場に立ってスケジュールを作成することも必要です。先にも述べたように、被監査部門の繁忙期は避けなければなりません。また、ある部門ばかり連続して監査を受けると言ったことが無いよう、年間を通して全ての部門が監査を受けられる様にスケジュールを作成します。
③業務の理解
内部監査を実施するに当たり、被監査部門の業務についてどこまで理解している必要があるでしょうか。内部監査は法令や規定に則って業務が行われているかを確認する適合性監査であるため、業務について一定の知識や理解は必要ですが、必ずしも精通している必要は無いと言えます。その部門に必要な規定や手順書があるか、その通りに業務が行われているかをチェックする行為に対して、専門的な知識や業務内容の熟知は必要ありません。
④依頼資料の整理
内部監査実施の1~2カ月前に行う予備調査の際、被監査部門対し、必要な資料の提出を求めます。
どの様な資料、情報を提出してもらうのかを事前に整理しておきます。
一般的には以下の様な資料、情報を提出してもらいます。
- 当該年度の事業計画
- 組織図、他部門との関連図
- 規定、業務マニュアル
- 過去の監査結果
上記のように準備を行って、チェックリストに頼らない実効性の高い監査を目指していきましょう。
当社では、内部監査計画の立案や改善業務を承っております。お気軽にお問い合わせください。